「……はぁー…」


なんだか最近アルフレッドの溜息の数が多くなった気がする。
テレビを見ながら溜息、ご飯を食べながら溜息。
何か悩み事でもあるのかな…


「ねえアル、何か悩み事でもあるの?」

「へ!?な、ないよそんなの!!全くないさ!!俺はヒーローだからな!」

「ふーん…」


誤魔化すの下手だよね、この子は。
だけどなんで私に相談してくれないだろう…。
そういえば最近一緒に寝てないなぁ。前は事あるごとに抱きついたりぎゅーっと抱き締めてきたのに、なんだか最近は距離を置かれている気がする。
もしかして…私に飽きちゃったのかな。
うーん、だけどアルフレッドに限ってそんな事は…。
私もドライな方だからあんまに気にかけていなかったけど、なんだか不安になってきたなぁ…。

よし、今晩はアルフレッドの大好物を作って奴を喜ばせてあげよう!



「アルフレッドーご飯できたよー」

「あぁ!!今日の夕食はなんだい?」

「アルの大好きなハンバーガーとかステーキとか沢山作ったよ!!いっぱい食べてね」

「うっ…!!ご、ごめん…俺お腹すいてないんだ…夕食は遠慮しておくよ…」


何故か片手で目を覆ったアルフレッドが後ずさりをする。


―ぐーきゅるるる


「何かな、そのお腹の音は」

「あ、えっと…その…」

「お腹空いてるのに私の作った料理は食べられないって言うのかな、アルフレッド君は」

「そ、そうじゃないよ!!そんなんじゃなくて…」


だったら、何?私が嫌になった?
せっかく…頑張ってアルの好物作ったのに。
じわじわと涙が溢れて視界がゆらゆらと揺れた。

私からの返事がない事を不思議に思ったのか、伏せていた目を開いたアルフレッドがギョッとした顔をして私の元へ駆け寄ってきた。


「うあああ泣かないでくれよ!!ごめんよ、本当に俺が悪かった…!!」

「だったら食えよバカァアア!!ステーキだって良い肉買ってきたのに…!!ハンバーガーなんて手作りなのに!!」

「ごめん、そんなつもりじゃなかったんだ…!!ごめんよ!!」


オロオロと慌てた様子で私の涙を指ですくうアルフレッド。
背中をとんとんと叩かれ高ぶってしまった気持ちも落ち着いてきた。
それでも不安そうに私の顔を覗きこむアルフレッドは、きっと普段私は涙を見せることが少ないからどうしたら良いのか分からないんだろう。


「もう大丈夫だよ」

「本当かい?」

「うん…。だけどなんで、ご飯食べないの?それに全然構ってこないし…」

「そ、それは…」


ごにょごにょと口ごもらせるアルフレッド。
言いたい事があるならはっきり言えばいいのに。


「最近ちょっと…太っちゃったから…」

「は?」

「あぁもう!!何度も言わせないでくれよ!!太っちゃってお腹がぷにぷにになっちゃったんだよ!!だから一緒に寝たり抱きついたりするの必死に我慢してダイエットしてたのに!!

「なんで急に…今までも充分メタb「うあああその言葉は禁句なんだぞ!!」


必死に私の口元を抑えながら涙目になるアルフレッドがなんだか可哀想で、頭をぽんぽんと撫でると「うぅ…ずっと我慢してたのに…」と私の胸に顔を埋めてぎゅっと抱きついてきた。



「君の読んでた雑誌に…女の子は皆太ってる男は嫌いだって書いてあるのを見て…」

「それでダイエットしようと思ったの?」

「君に嫌われたくなかったんだよ!!悪いかい!?」


ぐりぐりと頭を擦り付けるアルフレッドがとても愛しく思えた。
バカだなぁ、ほんとに。


「そんな事で嫌いになったりしないよ」

「ほ…本当に…?」

「うん。ぷにぷにのお相撲さんみたいに太ったって、アルフレッドのことが好きだよ」


前髪を掻き分けて額にそっとキスを落とすと、いつもの満面の笑みを見せたアルフレッドは力一杯に私を抱き締めた。


「だけど太りすぎもよく無いしねー。というかアルフレッドはジャンクフードばかりだから太るだよ。もっと野菜食べれば太らないのに」

「えー…でも君が作ってくれるならなんだって食べるぞ!!」

「じゃあ明日からはカロリーの低いものを作ろっか。だけど今日はこれで我慢してね」

「勿論さ!!もう食べたくてうずうずしてたんだよ!!」

「うん。沢山食べてね」

「デザートには君を食べてもいいかい?」

「調子に乗るなエロガキ」

「えー最近ずっと我慢したんだからいいじゃないか〜。それに沢山運動すればその分痩せるじゃないか!!」

「もっと健全な運動をしなさい!!」

「夜が楽しみだなーっ!!」

「話聞けよこのAKYが!!」



そんな、愛しい彼のFATな憂鬱。










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