「姉さん、ここが分からないんだが…」
「んー?あぁー…どうやるんだったっけこの数式…。アーサー分かる?」
「ん?あぁ、これはこうやってだな…」
「あぁ、なるほど…」
「流石アーサーだよね。我が家の秀才!!」
「元ヤンだけどな」
「んだとこのプー太郎…勉強できねーくせに口出しすんじゃねーよ」
「俺様はできないんじゃなくてしないんだよ。本気出せばお前よりいい点とるぜ?」
「喧嘩しないの二人とも。晩ご飯無しにするようにお母さんにいいつけるよ」
「ったく女はすぐ告げ口するから嫌だぜ」
「あぁん…?お姉さまに生意気言ってるとこの間体育の時間の前にエリザの着替え覗いてたことばらすよ」
「兄さん…」
「お前なぁ…」
「ばらしてんじゃねーかコラァア!!」
私の部屋の真ん中にある丸いテーブルを囲んで弟達との勉強会。 学年が上がったばかりとは言えこれでも一応受験生だからね…。
「なんだお前ら、勉強か?関心関心」
「フラお兄ちゃん。今日は早いんだね」
「お前今日デートとか言ってながったか?」
「急に可愛い妹の顔が見たくなったのさ!」
「すっぽかされたな」
「すっぽかされたんだな」
「女に捨てられたからって妹に手ぇ出すんじゃねーよヒゲ!!」
「…お兄さん泣きそう」
「「「「泣けよ」」」」
「何この三つ子、なんでこういうときだけシンクロ…?…グスッ」
「こらこら皆さん、お兄さんを苛めるんじゃありません。誰かピーター君を迎えに行ってきてくださいませんか?もう暗くなるのに帰ってきていないようですので…」
不安そうに窓の外を見たお母さん。 確かにいつもより遅いなぁ…。
「ロヴィーノにでも行かせろよ。今勉強中だぜ?」
「お前はしてねーだろ!!」
「私が行ってくるよ。きっと近くで遊んでるんだろうし」
「お願いしますね、名さん」
「はーい」
腰を上げてリズミカルに階段を降りていく。 近くにいるといいけどなぁ…。
「あいつ一人で行かせて大丈夫か…。やっぱり俺も、」
「心配しすぎなんだよシスコン眉毛」
「そうそう。可愛い子には旅をさせろってね」
「意味がちがうだろーが!!つかシスコンってなんだよテメェには言われたくねーんだよ」
「こわっ!!さすが元ヤン」
「あぁん…?上等だ、名もいないことだしここいらで決着つけるか…?」
「これ。喧嘩両成敗ですよ。決着はゲームでつけなさい!!さぁレッツマリオカート!」
「なんでマリオカート?」
――――
「ピータ〜!ったくどこ行ったんだろ…」
「名−っ!!」
「アルフレッド。お帰りー」
「ただいま名姉さん!!こんな所で何してるんだい?」
「ピーターの帰りが遅いから探しに来たんだよ。どこかで見なかった?」
「俺は見てないんだぞ。友達の家にでも行ってるんじゃないのかい?」
「だといいんだけど。遅いからお母さんが心配しちゃってさ」
「ふぅん。やっぱり末っ子は大事にされてるよなぁ」
「アルだって小さい頃はそれはもう大事にされてたんだよー?手のかかる子だったからさぁ」
「まぁ俺は名が俺を一番に思ってくれればそれでいいよ」
ぎゅっと私のてを握って笑うアル。 やっぱりまだまだ甘えん坊だなぁ…。
「おーい!名〜!」
「トニーお兄ちゃん…?」
「隣に居るのピータじゃないのかい?」
道を挟んだ向こう側で手を振っているトニーお兄ちゃんに手を繋がれているピーター。 良かった、見つかって。
「どないしてん二人してこないな場所で」
「こっちの台詞だよ。なんでお兄ちゃんとピーターが一緒に?」
「俺がバイトから帰りよったら道端でピーターが転んで泣いてたから連れて帰ってきたんや〜」
「な、泣いてなんかないのですよ!!」
「うわ、膝怪我してるじゃないか!!」
「痛くなんかないのですよ…」
ぎゅっと服の裾を掴んで我慢をしているピーターにお兄ちゃんとアルフレッドが「お腹すいたなぁ〜」「夕食はハンバーガーがいいんだぞ!」と話した。 この空気読めない兄弟一発殴ってやろうかな。
ぽんぽんとピーターの頭を撫でてあげると涙をいっぱいに溜めて私のお腹に抱きついてきた。
「家に帰って消毒しようね」
ぎゅっと抱き締め返してあげるとコクコクと首を縦に振った。
「子供はええなぁ〜。俺も名にぎゅってされたいわぁ」
「俺は何度もしてもらった事あるんだぞ!」
「それやったら俺は名のオシメ取り替えたり一緒にお風呂入れたりしたで!」
「俺も最近まで名と一緒に風呂はいってたんだぞ!」
「ハハハ。お前いっぺんシメたろか」
「やーなこった」
「なんでこんなむかつくやつになってもたんやろ。昔は天使みたいに可愛かったのに…」
「今だってキュートでナイスガイじゃないか!」
「ピーター、こんな二人は放っておいて帰ろうか」
「はいですよ」
「NO!!酷いよ名!!俺を置いていくなんて!!」
「兄ちゃんも置いて行かんといたって〜!!」
四人揃って歩いて帰ると、家の前で心配そうにきょろきょろとしているお母さんの姿があった。 心配したんですよ抱きつくピーターを頭を撫でる姿にアルフレッドが拗ねた表情を見せる。 やっぱり甘えん坊だな。
「よっしゃー1位!!」
「ばっ、きたねーぞお前!!雷は無しだろ!?」
「お兄さん2位〜!!アーサー坊ちゃんはびりかな?」
「ヴぇ〜次俺に代わってルート!」
「待て!負けたままで居るなど許されない!!」
「皆して何やってんの…」
「お帰りー姉ちゃん!!今ねー皆でマリオカートしてたんだよ」
「なんでマリオカート?」
「で、ピーター見つかったのかよ?」
「うん、トニーお兄ちゃんが連れて帰ってきてくれた。それより勉強はどうなったの君達」
「あ…」」
「ったくこの子達は…」
「俺もマリオカートしたいんだぞ!!!」
「んじゃ次の優勝者にはお兄さんが商品出しちゃおっかな〜」
「どうせろくなもんじゃないだろ」
「ふふーん。名の下着+下着姿の生写真でどうだ」
「はぁあああ!?」
「やる!!絶対優勝するんだぞ!!」
「お前何考えてんだよ!?あ、安心しろよ名…俺が勝って奪い取ってやるから」
「お前そのまま懐に入れるつもりだろ!!!」
「お前こそ夜のおかずにしたりすんだろバカ!!」
「何が悲しくてこんなやつの下着で!!興奮すんのお前らだけだろシスコン!!」
「なんやてぇえええ!?けしからん!!俺も仲間に入れぇや!!」
「ヴぇ〜俺も参加したいよー!」
「……」
「姉さん」
「ルッツ…」
「協力するぞ」
ボキボキと指を鳴らしたルートに「ありがとうと呟いて一番近くに居たギルの脳天に踵を振り下ろした。
「…なんでぇおめぇら。まだ裸になるにゃはえーぜ…?」
「ふぁっくしょん!」
その夜、アドナン家の食卓には少人数での暖かい団らんと玄関の外には上半身裸の兄弟達が正座をさせられていたそうな。
そんなアドナン家の、日常風景。
2009.11.12
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