いかがお過ごしでしょうか。こちらは相変わらずの日々が続いております。 こちらは五月に入り、花弁の散ってしまった桜の木々が目立ちます。 今年は花見をする間もなく散ってしまいましたね。 来年こそはと願っております。 貴方様もどうかお体にお気をつけてお過ごしください
敬具
「相変わらず畏まった手紙を書く奴だな、あいつは」
我が国イギリスでは今日も相変わらずの空模様で、雨が降ったり止んだりの繰り返しだ。 日本は今どんな天気だろう。 この季節の日本はとても過ごしやすいと聞くからな。 きっと野原には美しい花々が咲いているに違いない。
もう何ヶ月も会っていないが、きっと元気にやっているはずだろう。 菊が一緒なら安心だ。
不慣れな横文字を並べられた手紙を光に翳すと、数箇所にわずかな染み。
(涙…)
この手紙を書きながら、俺の事を思って泣いてくれたのだろうか。 瞳に涙を溜め、それでも俺に気づかせないように手紙にはいつもと変わらない様子を伝えて。
ああ、今すぐ駆け寄ってこの手に抱きしめたい
「待ってろよ…。すぐに会いに行くから」
喜ぶ彼女の姿を思い浮かべ、思わず頬が緩んだ。 タイミングを見計らったように机の上に積まれている書類の一枚がヒラリと俺の足元に降りてくる。
なんだよ、仕事が先って?そんなの後からいくらでもできるんだよ 今はあいつに会いたくて仕方が無いんだ
駆け寄って、抱きしめて。狂おしいほど愛しい彼女の耳元で「愛してる」と呟こう。
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