「名名〜!見てこのカメめっちゃかわええやろ〜」

「ぶッ!!」


小さなカメの子供を手に持った馬鹿兄貴は「見て見て〜」と私の目の前にカメを突き出した。
てゆーかこれ、どこからもって来きたん…!!


「ちょっとこれどこから持ってきたんよ!?アフォやろアフォオオオ!!」

「アホなんて言葉使ったらあかんて言うてるやろ!兄ちゃん怒んで!プンプンしてまうで!」

「勝手にしとけやアホ兄貴!!それよりそのカメどないしてん!?」

「ロマーノんとこのレストランで飲んでたらくっついてきてん。兄ちゃんカメにまで親分やて慕われてしもたわ〜」

「あ、ずるーいなんで私も誘ってくれんかったんよ〜!ってちゃうわ!なんでレストランにカメがおるねん!?しかもそれロマんとこで保護受けてる種類のカメやないかぁぁあ!!」

「ノリツッコミが冴えてきたなぁ名」

「ほんま?照れるわぁ〜」

「かわええなぁ名〜!お兄ちゃんに”なんでやねん”ってツッコミ入れて〜?」

「ええよ〜!って、なんでやねぇええええん!!!!」

「ブフップ!!」


兄貴の喉下に手の甲を強打させる。
ちゃうって、こんな事したかったんとちゃうんや!
このカメ確かロマーノんとこで保護受けてるウミガメの赤ちゃんやない?
やとしたらこんなとこ連れて帰ってきたらあかんやん…!


「兄貴、このカメちゃんロマーノんとこ返しに行くで」

「なんでや!?めっさかわええのに〜!ハッ…!!も、もしかして名ヤキモチ妬いてるん〜?アホやなぁ、ほんまに愛してんのは名だけやで。兄ちゃんの胸に飛び込む?飛び込みたい?なんやったらそのままベッドまで行ってチョメチョメ?」

「死にさらせやドカスが。テメェのチンコぶった切るぞコラ」

「おひゃぁああ!!あかんてぇええ!!ちょっ、かわええ顔してそんな汚い言葉使ったらあかん!!女の子がチンコとかウンコとか言ったらあかんて何時も言うてるやろ!?」

「このイン[ピーーーーー]野郎が。ペッ」

「…そないな言葉どこで覚えてきたん?」

「腐乱死す」

「なんやねんその当て字。あいつ今度あったら半殺しの刑やな…」


指をボキボキと鳴らす兄の姿はその昔暴れまわっていた頃の姿を思い出させる。
って、そんな場合じゃない。
早くこのカメちゃんロマーノんとこ返しに行こう!


「ちょっと私ロマーノんとこ行ってくるな」

「やめてぇええ!!カメール3号どこにもやらんといてぇええ!!」

「カメール!?名前なんかつけたら情が移るやろ!それにカメールよりカメックスのが似合ってるわ!」

「じゃあゼニガメでええから〜!!」

「名前の問題じゃない!!これロマんとこのカメちゃんやで?こんなとこで飼ってたって仲間もおらんと一人ぼっちで可哀想やんか」

「俺と名がおるやん。二人で我が子のように育てようや?ほら、名にも懐いてんでー」


のろのろと私の体に登ってくるカメックス。
か、かわええなぁー…
って、ちゃうねんちゃうねん!!
こんなとこにおったってこの子は幸せになれへん!


「やっぱりあかん。返しに行こう?」

「でも…」

「もし…。私が知らん男に連れられてどこか遠くに連れてかれてしもたらどうする?」

「名が…浚われるて…」

「兄ちゃんがどんだけ頑張っても届かんような遠い場所に連れてかれてまうねん」

「そんな、俺の名が…知らん男に連れてかれて監禁されて毎晩のように抱かれオモチャのように扱われ性奴隷にされるなんて…!!」


ん?なんか話がズレてるような…


「嫌やぁああああ!!そんな嫌ってもんじゃないわ!!名は俺だけの名やねん!!他の男になんか渡せへん!!」

「ちょっ、苦しいから!!だ、だから…このカメも同じやと思わん?いきなりこんな遠くの場所に連れてこられてしもて…。家族や兄弟もきっと心配してるわ」

「ぐすっ…。そうやな。この子、ロマーノんとこ連れてって海に返してあげな」


私の首に腕を回してギュッと首筋に顔を埋める兄貴の背中をポンポンと撫でる。


「名、チューしてもええ?」

「チンコぶった切るでぇ」

「ゴメン嘘。嘘デース」



その後カメックスは無事ロマーノの家の海に返された。
大きくなるんやでぇ、カメックス…!!
兄貴とロマーノの三人で大きく広がる海を見つめた。


「カメール3号〜!達者でな〜!」

「カメールってなんだよ!?」

「カメックスぅうう!!大きくなるんやでぇええー!!」

「カメックス!?どこのモンスターだよ!わけわかんねーぞちくしょー!!!」


涙を流す私にぐしゃぐしゃになったハンカチを貸してくれたロマーノに抱きつくと「バカヤロー」と抱きしめ返された。
かわええなぁロマーノ…


「名!簡単に男に抱きついたらあかんて言うてるやろ!あぁ、でも名とロマーノが…。かわええなぁ二人とも…親分たぎるわぁ。ハァハァ」

「ロマーノ、今度は姉ちゃんと一緒に飲みに行こかー。ウミガメが出ん店にしてな」

「そんな店探してもねーぞちくしょー。お、俺ん家で飲むか?」

「飲む飲むー!ついでに泊まってってええ?姉ちゃん久しぶりにロマーノと一緒に寝たいわ〜!」

「なっ…!!べ、別にかまわねーぞこのやろー!」

「ロマーノ顔真っ赤やー。トマトみたいでかわええなぁ〜!じゃあ姉ちゃんと手繋いで帰ろかー!」

「おう」

「ちょっ、ちょっと待ってぇな二人とも!親分置いていかんといてぇえええ!!!」


兄貴とカメなお話


―――



はい、実に申し訳ありません。
カメかわいすぎました。カメに慕われる親分かわいすぎました。
そしてまた親分妹さん。すみません、関西弁ヒロインが書きやすいが為なんです

いっそカメになりたい。


2009.6.28





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