「好きよ、アルフレッド…」
鼻を強く刺激する香水の香り
広く胸元の空いたドレスから伸びる長い腕が俺に回され、先ほどより香水の香りがきつくなった。 媚びた視線で俺を見上げる女を軽くあしらえば頬を強く叩かれる。
ああ、今日は最悪の日だ。
「お帰りアルフレッド。えらく男前になって帰って来たじゃない」
「………最悪だよ」
疲れた体を引きずって家に帰ればソファーに寝ころびながらゲームをしている名の姿があった。 堅苦しい服を脱ぎ捨て裸のまま彼女の隣に勢いよく座ると、チラリと視線を向けられた。
「今日はどのお姉さんにやられたの?」
「いつもやってるみたいな言い方しないでくれないかい?偶然だよ。あっちが言い寄ってきただけさ」
「それを誠実なアルフレッド君は丁重にお断りした結果、頬に一発もらっちゃったわけね」
テレビ画面から視線を外さない名の上から覆いかぶさるように抱きつけば「暑苦しい」と肘で攻撃される。
「なんだよ!俺が疲れて帰ってきてるって言うのに君は一人楽しくゲームかい!?構ってくれたっていいじゃないか!!」
「今いいとこなの!あーもうこいつ倒せないな〜。明日菊電話して倒し方聞いてみよっと」
こういう時、俺はなんでこんな子と付き合ってるんだろうってつくづく思う時がある。 誘惑してくる女達はいつも美女ばかりで背も高い、おまけにスレンダー。 それに比べて名は背は低いし(日本人だから仕方ないけど)寸胴だしぺチャパイだし。 今の格好だって、俺のTシャツを着て下は短いショートパンツでとても女の子だとは思えないような格好でくつろいでいる。
「なんで俺は君を選んだんだろうな」
「散々アーサーに趣味悪いって馬鹿にされたもんね〜」
「まあね。からかってたかと思えばしつこく本当にあいつでいいのかって聞いてくるし」
「あんまりしつこいもんだからアルフレッドも自棄になっただけなんじゃない?アーサーがそこまで言うなら絶対別れないぞって」
「俺は……ちゃんと君の事が好きだよ」
「ふーん」
ゲームのコントローラーをテーブルに置き、立ちあがってゲーム機本体の電源を切る名の姿ソファーに寝転びながらをゆっくりと見つめた。
本当は好きじゃないのは俺じゃなくて君の方なんじゃないのかい?
その言葉に彼女は動かそうとしていた足を止め、顔はこちらに向けないまま俯いた。
「どうして私がアルの事好きじゃないって思うわけ?」
「だってそうじゃないか!さっきだって俺よりゲームに夢中になるし、夜は一緒に寝てくれないし外で手も繋いでくれないし!!俺はずっと君に触れていたいのに…いつも逃げてばかりじゃないか、名は…」
「私は、」
ごくり、と息を呑む音が静かなリビングに響く。
「アルフレッドが他の女に言い寄られてるのを知っててもなんともないふりをして気を引こうと必死になれるほどアルフレッドを愛してるよ」
君のそういうとこが
「好きでたまらないのさ」
「Thank you」
2010.11.5
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