「ギル!!次あっちのお店ね〜」

「って、ちょっと待てコラァ!!これ以上俺に荷物持たせる気か!?死ぬ!重みに耐えられなくて沈む!!」

「軟弱者ぉ!!男ならこれぐらいでへこたれるな!」

「こんなに沢山買うんだったら宅配便で送ってもらえよ!?」

「お金かかるじゃん。それに今日はもう一人の荷物持ちが用があって来られなかったんだし」

「それって眉毛かよ…荷物持ちって…」


憐れむような表情をするギルの腕にぶら下げられた荷物の山。
色々と買いたいものが沢山あったからな〜。
最近暑くなってきたし、薄地のパジャマとかギルの服とか。
インテリアも見ておきたいしなぁ。
ギルのマンガや私のDVDを収納できる棚もほしい所だ。


「あ、この雑貨屋さん可愛い。ちょっと見ていこうよ」

「俺荷物あるから入れねーんだけど…」

「じゃあ大人しく外で待ってろ。逃げたりしたらもう何も買ってあげないからね」

「うげ…」


朝から「ゲームの攻略本が欲しい!」って騒いでいたからなぁ。
ちゃんと荷物持ちできたら買ってあげる約束だもんね。


「うひゃー。このマグカップ可愛いなぁ〜」


よし、ギルとおそろいで買っちゃおう!!
ギルは何色がいいかなぁ…。まぁ、ピンクでいいか。
マグカップを二つ籠に入れ、他にもコースターやら可愛い置きものなんかを籠の中に入れていく。
うーん、こうやって買い物してる時ってなんだか幸せだよねー


「あれ…?あっ、名前さん!」

「え?…うわっ、トーリス君!!」

「お久しぶりです!こんな場所で会うなんて偶然ですね」

「ほんとにね〜。まさかトーリス君がこんな可愛い雑貨屋に居るとも思わなかったよ」

「いや、これには事情が…!!」

「トーリスー。このフリフリエプロンマジ俺に似合うと思わん?」

「フェリクスゥウ!?なんでそんなの選んでくるの!!もぉ〜!!」

「トーリスもおそろい買わん?」

「買わないっ!!」


ん?トーリス君のお友達かなぁ…
男の子、だよね?トーリス君のそうだけど、中性的な顔してるから一瞬分かんなかったよ


「あ、フェリクス。こちらは名前さん…って、もう知ってるよね?一度名前さんを車でお送りした時に…」

「あ!!あの時の〜!その節はお世話になりました」

「別に仕事だし!お礼とかいらんしー!!」


わっと喋ったかと思うと、あたあたとトーリス君の背中に隠れてしまった。


「す、すみません…フェリクスは人見知りでして」

「そうなんだ。フェリクス君もイヴァンの所で働いてるんだよね?まだ若いのに偉いね〜」

「俺達幼馴染なんです。小さい頃からいつも一緒で…。って言ってもいつも振り回されてばかりなんですけどね」

「あはは。仲いいんだね」


なんだか嬉しそうに「えへへ」と笑ったトーリス君を見てると、こっちまで嬉しくなった。
彼の背中に隠れているフェリクス君に「よろしくねー」と声をかけると、おずおずと顔をだして「よろしくだしー」と返事を返してくれた。


「名前さんもお買い物なんですか?」

「うん。可愛い雑貨屋さんだからつい沢山籠の中に入れちゃってね〜」

「あ!それー!そのマグカップ俺も同じの持ってるしー!!」

「え、そうなの?可愛いから一目で気に入っちゃってね〜。他にもコースターとか色々可愛いのがあってさぁ」

「あ、それめっちゃいいしー!どこにあったん?」

「あっちにあったよー。色違いでピンクとか黄色もあるみたいだよ」

「俺もそれマジで欲しいしー!」


わぁ、可愛いもの好きなんだなぁフェリクス君は。
見た目も可愛いし、きっとあのフリフリエプロンも似合うんだろうな〜
しばらく一緒に店内を見て回り、なんだか趣味が合うよねーなんて話しているうちに打ち解けてしまった。
なんだかトーリス君が複雑な顔をしていた気がするけど…
「今度一緒に買い物行こうなー!」と約束をして、二人と別れた。

やばっ、時間を忘れて買い物しちゃってたよー!!ギル怒ってるだろうなぁ…
まぁアイスでも買ってあげれば機嫌も直るだろう。単純だしね


「お待たせーギル」

「遅い!!」

「ごめんごめん、トーリス君達にばったり会っちゃってさー」

「いいからさっさと本屋行くぜ!!約束だからだ!!」

「はいはい」


私の手から先程雑貨屋で買った商品の紙袋を奪い取ったギルはズカズカと早足で歩いて行く。


「ちょっ、歩くの早いって!」

「あぁ、俺様はお前と違って脚が長いから歩幅が「なんか言った?」何でもありません」


早足で向かった本屋に入るなりギルは攻略本とやらを探しに行ってしまった。
まぁいいや。私は雑誌でも立ち読みしておこかな…
料理本でも読んで今晩のおかずを決めちゃいましょうか

雑誌コーナーへ足を運ぼうとすると、なにやら見覚えのある女の子が目に入った


「あれって確か…」


イヴァンの妹さん、だっけ?たしかナターリヤ、ちゃんだっけかなぁ…
彼女も私に気がついたのか、こちらを向いて少し停止した後にズンズンと私の方に向かってきた。
いや、顔が怖いです


「えと、ナターリヤちゃん…?」

「貴方はこの間兄さんを部屋に連れ込んだ…」

「え、違うよ!!あれには色々事情が…」

「兄さんは私のものよ。いずれかは私と結婚する運命にあるの」

「結婚ー!?」


え、兄妹だよね!?血繋がってるんだよね!?
近親相姦なんて本田さんが喜びそうのはダメだって!!


「ナタちゃ〜ん!お姉ちゃんを置いていかないでよ〜!!」


ばいーん
ぼいーん


「あれ?確かこの人イヴァンちゃんの…」

「えーっと…」

「あ、私はイヴァンちゃんのお姉さんなの。ウク姉さんとかライナとか、好きに呼んでね!」


胸が。胸が揺れてますぜお姉さん。
大きすぎて見た目じゃ何カップかも分からないようなお胸を揺らしたお姉さんはニッコリ笑った。
イヴァンのお姉さんかー…
胸…少し分けれくれないかなぁ…


「あ、私は名前と言います。イヴァンさんとは普段から仲良くさせていただいていて…」

「やっぱりそうね!!兄さんを寝取った女狐め!!」

「って違うからね、女狐って何…」

「このメスブタ!!」

「もっと酷いよ!!だから違うってば!!私はただの友達です!」

「ナタちゃん落ち着いて〜!ねぇ、よかったらどこかでゆっくりお茶でもしない?イヴァンちゃんから名前ちゃんの話を聞いててね、前々からお話してみたいなぁーって思ってたの〜!」

「えーっと…」


ナターリヤちゃんが睨んでますよ…。
ダメだ、目で殺されそう。
あのイヴァンが覚える気持ちがよく分かる…
お姉さんとお話したいのは山々だけど、できればナターリヤちゃんの居ない時にしていただきたいなー…


「おい名前ー。漫画も一緒に買っていいか?」

「あ、ギル!すみません、連れがいるのでまた今度ー…」

「そっかぁ、残念だなぁ…」


そんな顔しないでくださいお姉さん…
なんか罪悪感だなぁ〜…
居心地が悪くて助けを求めるようにギルの方を向くと、奴の視線はウクお姉さんの胸へ向けられていた。
いや、まぁ誰でも最初は胸に目がいくか


「それじゃあまた今度、絶対にね!」

「はーい…」

「今度兄さんに近づいたら殺すわよ」

「アハハハー…」


濃い、姉妹だなぁ…
なんだかどっと疲れた。「どこかでで休憩しよっか?」とギルに声をかけると、小さく「胸でけぇ…」とブツブツ呟いていた。
そういえばボイン好きだったっけ…
ちくしょう、悪かったな貧乳で…!!

どさくさ紛れに攻略本に加え漫画を数札レジへ持っていくギルを一発殴ってやろうかと思ったが、まぁ今日は荷物運び頑張ってくれたし大目に見るか…
攻略本と漫画を入手できたギルは大喜びだ。
単純な奴め!

何はともあれ、今日は沢山買い物もできたし大満足だ。
家に帰って晩御飯の準備をしていると、なにやら疲れきった様子のアーサーがやって来てギルが寝転んでいるソファーの上に倒れこんだ。
「ぎゃぁああ!!」と叫ぶギルを無視して、なんとかアーサーを起こして私のベッドに運んでやると、すやすや寝息をたてて眠った。
何があったんだ、アーサー。
ってゆーかなんでわざわざこっちに来るのこの子は!家に帰って寝ればよかったのに…。
まぁアーサーってこういうとこあるからもう慣れっこなんだけどね。
夕食が出来る頃にリビングに戻ってきたアーサーは「えっと、その…悪い」と頭を下げた。
事情を聞いてみると、今日は一日ピーター君に振り回されたとの事らしい。
ご苦労様、と頭を撫でてやると目を細めて笑っていた。猫みたいだなぁ、アーサーは。


本屋での出来事はアレだったけど、なんとも今日は充実した一日だったなぁ。
そうだ、明日はデンさんとノルさんにお礼言っておかないとね…!

なんて考えながらアーサーの頭を撫でていると、「手が滑ったぁあああ!!!」と叫んだギルがアーサーの背中にビールをぶっかけた。

なにやってんだ、こいつ


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