「暑い…」

「あぢぃー…」

「何なんだろね、この暑さは…。まだ5月だよ!?夏本番になったらどんだけ熱くなるんだろうね…」

「さぁな…。つかエアコンつけよぜ、冷房で」

「ダメ」

「なんでだよ!?」

「まだ5月だってのに冷房なんてつけてたら夏になったらどうすんの。省エネだ省エネ」

「エコかよ!?」

「どっちかってーと節約。ギルが朝から晩までゲームだのDVDだのってテレビを使うから電気代大変な事になってるんだからね。これ以上高くなると払わせてやるから」

「どーやってだよ」

「そりゃあ勿論」

「も、勿論…?」

「体d「うぎゃぁあああああ!!!お、お前何いいいい、言って…!!」

「もっと労働してもらおうと思っただけだけど」

「ふぇ…?」

「何顔真っ赤にしてんの」

「ぶぶぶぶぶぇつになんでもにぇーよ!!」

「どんだけ台詞噛んでんの!?」


真っ赤な顔をしてそっぽを向くギルの頬を突いてやると「プップクプー」とわけの分からない事を言っていた。
なんだよプップクプーって…


「そんなに暑いなら団扇で扇げば?キッチンの棚の中にこの間ビール買ったらついてきた奴があるよー」

「お前が扇ぐんだったら使ってやってもいいぜ」

「自分で扇げ。むしろ仕事で疲れた私に少しでも心地よく休んでもらいたいって気があるなら私を扇ぎたまえ」

「俺だってゲームで疲れてんだよ!!」

「そうか。じっとしててねー鼻にビール入れてあげるから」

「ふぎゃぁああ!!ちょ、やめっ!!分かった!扇ぎます扇ぎます!!だからそこだけはやめてぇえええ!!!」


胸倉を掴んで馬乗りになると涙目になって許しを乞われた。
ちくしょう、余計に暑くなってしまった…
半袖に着替えてこよう…


「ちょっと着替えてくるねー」

「なんでだよ」

「暑いからTシャツに替える」

「俺にもなんかよこせよ。あちーんだよ!」

「あれ、ギル半袖のTシャツ持ってなかったっけ?そろそろ暑くなるし衣替えだもんなー…今度夏物の服も買いに行かなきゃいけないね」

「あぁ。てゆーか本田はよく着物着てるけど、あれって暑くねーのか?」

「暑いでしょー確実に。だけど本田さんって年中着物なんだよねぇ…。すごいよなぁ」

「マジ舟さんだぜ」

「なんで舟さん?」


また分けのわからん事を…。母さん全くついていけません。
部屋で軽めのTシャツに着替え、随分前に買った大き目のTシャツを引き出しの中から引っ張り出す。


「ギルー大き目のTシャツあったよ〜」

「おぉーラッキ、ってうおぉおおおお!?それピンクじゃねーか!!しかもドピンクでクマさんプリント!!」

「なーんか欲しくなって買ったのはいいけどサイズが大きくてなかなか使う機会がなくてさー。二〜三回しか使ってないしギルにあげるね」

「いらねーよピンク!!しかも熊!!」

「かわいいじゃん熊!!それに家の中だけなんだからいいでしょ!!」

「うえ…マジかよ…」


服の裾を捲くり団扇で風を送るギルは、ピンクの熊さんTシャツをじっと眺めた。
しかし暑さには敵わなかったのか、着ていた長袖の服を脱ぎ捨てて大人しくピンクの熊を身につけた


「可愛い…!!」


なにこれ、キュンときたぁああ!!
意外に似合ってるじゃんギル…
うわー、ギルってフードに耳付きのパジャマとかも似合いそうだよね。今度買って着させてみよう。
子供を着せ替え人形みたいにしちゃう親の気持ちがわからんでもないな…


「うん、似合ってる似合ってる」

「馬鹿にしてんのか」

「してないですよー。さぁさぁ、扇いでちょうだーい」

「お姫様気取りか」

「どっちかってーと女王様」

「余計性質悪いんだよ」


団扇の角で軽く叩かれた。
地味に痛いんですけど…


―ピンポーン


「ギルー誰か来た」

「そうですねー」

「なにそのいいともみたいなノリ。出てこいって言ってんの」

「ったくめんどくせぇ」

「鼻にビー「行ってきます女王様」わかればよろしくってよ〜」


オホホと冗談混じりに笑うと「うぜー」と返された。何、反抗期?


「誰だよったく…」

「よぉ」

「んだよ眉毛かよ」

「誰が眉毛だ呪うぞテメェ…!!」

「何の用だよ」

「今日会社の上司にハワイ土産のチョコ貰ったからどうかと思ってだな…」

「じゃあそれだけ置いてさっさと帰れ」

「あぁん…?って、お前…」

「んだよ」

「その服…プッ!!ぎゃははは!!なんだよそのピンクと熊さんは!!」

「って、うぎゃぁあああ!!!見るな!!見るなちくしょぉおお!!」

「なーにはしゃいでんの二人とも…」

「お前がこんな服着せるから悪いんだろ馬鹿!!」

「はぁ?」

「ダッセー今時ドピンクに熊さんのプリントTシャツかよ!?小学生でも着たがらないぜそんなダセェ服!!」


腹を抱えるアーサーと涙目になって蹲るギル。
苛めっ子と苛められっ子だな、これ…
それにしてもアーサー、今この服ダサいとか聞き捨てなら無い事言ったよね…


「お前の服のセンスを疑うぜ!!ぷぷっ」

「ごめんね、アーサー。これ私の服なんだ」

「ギャハハ…はは…」

「大丈夫だよ、ギル。可愛いし似合ってるから」

「うっ…名前…」

「よしよし、いい子いい子」


膝を抱えるギルの頭を撫でてやると、くすぐったいのか目を伏せていた。
なんだこの動物…


「えっと…あの…名前…」

「アーサー?」

「ごめんなさいねぇダサくて今時小学生でも着たがらない服で!!これでも気に入って買ったんだよ!!」

「いや、よく見たらいいデザインだよな!!この色と熊のデザインのバランスがなんとも…」

「おせーよ馬鹿。チョコだけ置いてさっさと帰れ眉毛」

「チョコは食うのかよ!?」

「チョコに罪はないじゃない」


その後「俺が悪かった!」と必死になるアーサーを追い出し、ギルと二人でチョコを美味しくいただいた。
玄関の方からすすり泣く声が聞こえ、不気味だったので様子を見に行ってみると、アーサーが膝を抱えて蹲っていた。
大の大人が何小学生みたいな事しちゃってんの!?
「べ、べつに泣いてなんかないんだからな馬鹿ぁ!」と涙を服の袖を拭うアーサーが不憫になってきて、頭をポンポンと叩いてやると、腰に抱きつかれ腹に顔を埋められた。

ギルと言いアーサーと言い、なんでこんなに小動物のような仕草をするんだろうか…。

まぁ可愛いからいいんだけどね


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