「プリヴェット!今日は名前にギルベルト君!!えーっと、それからー…」

「始めまして。私は本田菊と言って、この近所に住んで居る者です。名前さん達と仲良くさせていただいております」

「俺はアーサー・カークランド。この隣の部屋に住んでる」

「俺はアントーニョ・フェルナンデス・カリエドって言うんや〜!トニーでええよ」

「始めまして!ボクはイヴァンだよ。いきなり遊びにきちゃってゴメンねー名前」

「ううん、構わないよ!!どうせ暇人が集まってうだうだ喋ってただけだし」

「名前さん!!私は純粋に仕事の一環として来ているんですよ!!さぁ、実家でどんな素敵な事があったのか私に詳しく教えてください!!」

「本田さん、自重」


休日の昼間から暇を持て余したメンバーが私の家に揃った。ちなみに後でフランシスさんもおいしいワインを持ってく来るとの事…
みんな暇なんだなぁ…


「そういえば名前は実家に帰ってたんだよね?どうだった?久しぶりの実家は」

「楽しかったよ!皆でバーベキューしたりお父さんのお墓参りに行ったり」

「え、名前ちゃんのお父さんって亡くなられてるん!?」

「そうだよー。まぁ私が赤ちゃんの時だったんだけどね」

「そっかぁ…。いつかお義父さんにも挨拶したかったんやけど残念やなぁ」

「僕も会ってみたかったなぁ〜名前のお父さん」

「お盆になったら帰ってくるよ」

「怖い事言うなよ!?洒落になんねーって!!」

「やだなぁギル、怖いの?」

「べべべべ別に怖くにぇーぜ!?」

「噛んでるし…!!!」

「流石ギルベルトさん!!!ナイスです!!」

「何なんだよこのカオスは…」


大きくため息をついたアーサーのカップに紅茶を足すと「悪いな」と笑顔を返された。


「あんまりため息ばっかついてると禿げるよ。眉毛が」

「って眉毛かよ!!禿げねーよ!!」

「いやでもその眉毛いっぺんそり落としてみた方がええんとちゃう?眉無しのが似あってんでー」

「んだと貧乏トマト野郎…!!テメェは田舎で農家でもやってろ馬鹿」

「農家かぁ。野菜育てながらのんびり田舎生活ってのも悪くないもんだよ?私も行く行くは田舎に帰って農家でもしようかしら」

「だったら俺とトマト育てようや名前ちゃん!!親分に任せとったら苦労せんよ〜」

「そ、それだったら俺と紅茶畑でも…」

「なんやねん紅茶畑って。土いじりもした事ないような坊ちゃんが何ぬかしてんの」

「うふふ。名前が欲しいって言うなら農家ごと買い占めてあげようか?」

「イヴァンンンン!?お前どんだけ金と権力あんだよ!!」

「成る程、イヴァンさんはそういったキャラの方なのですね…。いやはや、本当に名前さんのご友人はとても素晴しい方々ばかりですね!!」


うん、なんかカオスになってきたよね。
相変わらずアーサーとトニーさんは仲悪いし…。嫌いなら構わなければいいのに


―ピンポーン


「名前ーお客さんだよ〜。僕が出てこようか?」

「大丈夫、イヴァンは座ってて〜。それからギル、イヴァンに紅茶とお菓子用意してあげてね」

「俺かよ!?」

「お前以外に誰がいんだよ」


蔑むような目でギルを見下ろすとアーサーと本田さんがゾクゾクと体を震わせ頬を赤く染めた。
ほんと、何なんだこいつら


「はいはーい、どなた…って…アイス君!?」

「遊びに…来た」

「うわぁー!!久しぶり!!元気そうだね〜!!」


相変わらず無表情のアイス君は私にビニール袋を差し出した。
受け取り何が入っているのかと中を覗いてみると、近くのコンビニで買ったらしいお菓子が沢山詰められていた。
これってお土産って事かな…。か、可愛いなぁ〜…!!


「ありがとう!あ、そうだ…今中に変なお兄さんが沢山居るんだけど大丈夫?ダメなら追い出すよ」

「平気。慣れてる」

「…親戚がデンさんだもんね…」


そりゃあ免疫も付くか。
アイス君をリビングに招いて私の隣に座ってもらった。
ギル以外の皆の視線が痛いので、とりあえず軽く紹介をする事にする


「この子はアイス君って言って、私の上司の親戚の子なんだ〜!社員旅行で一緒になって仲良くなったんだよねー?」

「うん」


コクリと頷くアイス君が可愛くて思わず抱きしめそうになった。


「わー!宜しくねー。僕はイヴァンだよ」

「俺はアーサー・カークランド。隣に住んでる」

「俺はアントーニョ。仲良くしたってな〜!」

「私は本田菊と申します。成る程、無口年下キャラとは素晴しい」

「あの人の発言は無視していいからね、アイス君」


本田さんを指差してにっこり笑うと「うん」と短く返事を返された。


「でも本当に遊びに来てくれるなんてねぇ。こんな年上の私なんかより友達と遊んでた方が良かったんじゃないの?」

「ううん。楽しいし…」


抱きしめてもいいですか、これ。
うずうずと体を揺らしているとアーサーとギルに睨まれた。ちくしょう、分かってるよ。若い子に手を出すなってんだろ、いいじゃんちょっとぐらい…!!


「アイス君がお菓子持って来てくれたんだよ〜!!」

「お!んまい棒あんじゃねーか!!ポタージュ味よこせ!」

「えぇー。僕はカニちゃんこ味が一番美味しいと思うなぁ〜」

「そんなのあんのかよ!?」

「あぁ、昔ありましたねぇそんなの。人気がなかったのか現在は販売していませんが…」

「紅茶味ってないのか?」

「そんなん気持ち悪いやろ。トマト味ってないん?」


え、何?うまい棒ってそんなに種類あるの?
小さい頃よく買ってたよなぁ…チョコ味は小さいのに高いから高価なものだと思ってたよー


「チョコ味ちょうだーい。高級菓子だよね〜」

「そやんなぁ。俺もチョコ味にはなかなか手ぇ出せんかったわ〜」

「だよね〜。トニーさんも小さい頃食べてたの?」

「んー?そやなぁ、子供の頃祖国と日本やいろんな国を転々としてたんやけど日本におる時はよう買って食べてたわ」

「へぇーそうなんだ。なんで日本に住む事になったの?」

「ま、色々あってな」


世界を転々としてたかぁ…
凄いなぁ、トニーさん。
アイス君に貰ったうまい棒を皆でむさぼり食べていると、ワインを片手に持って現れたフランシスさんに「お前ら何やってんのー!?ってゆーか何このメンバー!!」とつっこまれた。
そりゃあ異色メンバーだけどさ。


「ワイン開けちゃう?」

「昼間から飲む気かよお前」

「ウォッカがあるといいなぁ〜。ねぇフランシス君、ひとっ走りして買ってきてよ」

「ヒィイイ!!イヴァン怖い!!名前ちゃん助けて!!」

「アイス君、こんなオッサン達は放っておいて私の部屋でDVDでも見ない?」

「うん」

「ひどっ!!オッサンじゃないよ!!」

「まぁまぁ。私がひとっ走りして買出しに行ってきます。アイスさんはジュースでよろしいですか?」

「うん」

「ちょっと、未成年の前で昼間から飲むつもりですか…。ほんとロクでもないですね」

「まぁたまにはええやん名前ちゃーん!!ちゃんと片づけするからな?」

「良いけど酔って暴れたりしたら明日の早朝全裸で街の中に立ってもらいますからね」

「ひでぇなお前!!せめてパンツははかせろよ!!」

「じゃあラップ一枚まとわせてやるよ」

「ふふふ。意味ないよね、それ」


その後、案の定悪酔いした奴らは私の部屋を暴れまわった。
フランシスさんは全裸でベランダから外の通行人の女性に話かけるし、アーサーはベタベタとくっついて来て性質が悪い。
挙句の果てには殴りあいを始めるアーサーさんとトニーさんがクロスカウンターで相打ちをし、その場に倒れた。
二人の実況をしていたギルはアーサーの下敷きになった。
それを他所に、相変わらず酔う気配を見せないイヴァンと本田さんは「若いっていいですねぇ〜」「まだ飲み足りないよね〜」とほのぼのとしていた。


「はぁ…結局こうなるんだよねぇ…。本田さん、私そろそろアイス君を近くまで送ってくるんであの馬鹿共なんとかしておいてください」

「なんとか、と申しましても…」

「僕に任せて。それと家まで送ってあげるんだったら僕が車を呼んであげるよ〜」

「え、車?タクシーとか?」

「ううん。僕の部下なんだ〜」


あぁ、あの人たちか…


「ちょっと待っててねー今呼ぶから」

「え、いいよそんな悪いし…」

「もしもし?あ、姉さん?僕だよ。ちょっと車用意してくれる?トーリスは今日お休みだったよね?彼を呼んでよ。うん、うん。え…?姉さん、胸の音で聞き辛いよ」


むむむ、胸の音で聞き辛い!?
私と同時に本田さんが過剰反応した。


「じゃああと三分で来てね。じゃないとコルコルしちゃうよって伝えておいて」

「い、イヴァン…?」

「大丈夫だよ。すぐに迎えが来るからね」

アイス君が少し不安そうに一歩下がって「ありがとう」と呟いた。どうしたんだろ…


―ピンポーン


「あ、はーい」

「す、すみませんイヴァンさんはおられますか!?」

「トーリスゥ〜!!早かったね!流石は僕の部下」

「い、いえ…イヴァンさんの為ならどこまでも…」


突然現れた青年は胃のあたりを擦っていた。


「えと、大丈夫ですか?胃薬ありますけど…」

「あ、ありがとうございます。頂いてもいいですか?」

「はい。用意するのでちょっと待っててくださいね」


色々と苦労してるんだなぁ…。
見た感じまだ若そうだけど…イヴァンの部下なんて凄いなぁ


「どうぞ」

「あ、ありがとうございます名前さん」

「どういたしまして。えーっと…」

「俺の名前はトーr「彼の名前はトーリスだよ。僕の下で働いてくれてるんだけど、とっても仕事のできる凄い子なんだぁ」

「へぇ〜。よろしくね、トーリス君」

「あ、はい!!よろしくお願いします!」

「それじゃあトーリス、この子を家まで送っていってあげてくれる?」

「分かりました」

「あ、私も一緒に」

「はい。表に車を置いてあるのでどうぞ乗ってください」


酔っ払っている連中を二人に任せ、トーリス君の運転する車でアイス君を自宅まで送っていった。
「またいつでも遊びに来てね」と言うと、キラキラとした眼差しを返された。
本当に可愛いなぁもう!!!
ギルとアーサーが居ないのをいい事に感情を抑えることなくアイス君をギュッと抱きしめると、優しく抱きしめ返してくれた。
…本当にこの子デンさんの血縁者なの?
本当に可愛すぎる…!!!

帰りの車の中で、トーリス君と仲良くお喋りをして帰った。すっごくいい子だよ、トーリス君って…!!
どうやら同じ会社の中に幼馴染や昔なじみの友達も一緒に働いているらしい。あと好きな子も居るとかで、その女の子の事を話しているトーリス君はとっても可愛かった。
若いっていいなぁ〜

家に戻り、玄関に手を掛けようとすると中から悲鳴が聞こえてきた。
慌てて扉を開こうとすると、私の手を上から掴み「えっと…あの、もう少し外でお話しましょうか…」と青白い顔をしたトーリス君が涙目になっていた。
何十分後に部屋に戻ってみると、リビングの隅っこに集まってブルブルと震えている5人と「あ、名前お帰りー」と爽やかに出迎えてくれたイヴァンの姿があった。

み、皆イヴァンに何されたの…?
聞くに聞けない空気だったので、ひとまずイヴァンに注がれたウォッカを一気に飲み干した。

その後の事は、よく覚えていない。





「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -