「それじゃあ二人とも、今度はお盆に帰ってくるからね」

「えぇ。また野菜とお米送るからね。プーちゃんの為にじゃが芋もいーっぱい送るよ〜」

「よっしゃ!!楽しみにしてるぜ!」

「達者でのう名前、ポチ」

「糞ジジイ昨日は名前で呼んでたじゃねーか…!!わざとかコラ」

「ワシ年寄りだからわかんない」

「こんな時だけ年寄りぶりやがって…!!」

「まぁまぁ。二人とも元気で仲良くやるんだよ。次に帰ってくる時はもうちょっと二人の仲も進展してるといいんだけどねぇ〜」

「進展ってなに、ペットから奴隷へ進展?」

「んな進展するか!!お前が言うと冗談に聞こえねーんだよ」

「やだなぁギル。誰が冗談なんて言った?」

「へ…?」

「それじゃあ二人とも、またね!」


家の前まで迎えに来てくれたタクシーに乗り込んで、小さく手を振ると二人とも優しく微笑んでくれた。


「楽しかったね。ギルはどうだった?」

「まぁ、悪くないぜ」

「まぁー素直じゃない」


自分だって楽しんでたくせになぁ。
でもあの二人にギルの事を理解してもらえたのは本当に良かった。

タクシーのおじさんに来た時の運賃も上乗せし、しっかり代金を払い駅で降ろしてもらった。
電車を乗り継ぎ、家につく頃にはまだお昼過ぎだったので外で昼食を取る事にした。


「ギルは何にするー?」

「オムライス」

「かわっ…!!」

「な、なんだよ!?」

「なんでもないよ〜。可愛いなぁと思ってね。あ、すみませーん。オムライスとこの”シェフの気まぐれハンバーグ”お願いしまーす」

「かしこまりました」


いつも思うんだけどこの”シェフの気まぐれ”って普通のとどう違うんだろ…。
なんてどうでもいい事を考えていると、左の肩をポンポンと叩かれた。
あ、今ギルがすっごく嫌な顔した。


「よ、よぉ」

「アーサー!偶然だねー!」

「あぁ。お前ら昨日帰ってくるとか言ってなかったか?」

「やっぱり実家は楽しくてねー。もう一泊してきちゃった!」

「そうか。お爺さんやお婆さん、元気だったか?」

「元気だったよ。元気すぎて相変わらず。ギルなんてお爺ちゃんと飲み比べばっかしてて大変だったよ」

「こいつの爺さんすげー酒つえーんだよ。この俺が酔わされたぜ」

「何やってんだよお前…」


はぁ〜と呆れた様子で大きくため息をついたアーサーに「うっせぇ」と不機嫌そうにギルが返事を返した。
それにしてもアーサーもここでお昼なのかな。休みの日にはあんまり外に出たがらないのに…


「ねぇ、アーサー。今一人なの?アーサーが用もないのに昼間っから外に居るなんて珍しい」

「あぁ、今あいつと「何やってるですかアーサぁああ!!シーくんお腹すいたですよ!!さっさとお子様ランチ注文しやがれですよーっ!!!」なっ…!!!馬鹿!!大人しく席に座ってろって言っただろ!?」

「アーサーの命令なんてきいてやるものかですよー!!」


え?なななな、なんだこの少年はぁああああ!!


「ちっさい!!小さいアーサーだ!!」

「すげっ!!小型化成功かよお前!?」

「誰が小型化だ!!こいつは俺の弟だよ。一番下の」

「あ…眉毛の呪いの…」

「これはまた…可哀想だな」

「んだと…!!!」

「お姉ちゃんは誰ですか?」

「んー?私はアーサーのお隣に住んでいるアーサーのお友達で、名前って言うんだよ。君の名前は?」

「シー君はピーターって言いますよ!」


ん?なんで名前はピーターなのに自分の事シー君って呼んでるんだろう…
まぁこの年頃の子は大人には理解できないような事をよくするもんだよなぁ。深く気にする事でもないか。


「後の目つきの悪い奴は誰ですか?」

「誰が目つき悪いだとクソガキ!!」

「ギル…?こんな可愛い子供にそんな口きいていいの?」

「だ、だってそいつが…!!」

「ごめんねーピーター君。あの目つき悪いお兄ちゃんはギルベルトって言って私の家に住んでる居候だよ」

「へぇー。まぁどうだっていいですよそんな事!」

「んだとこのガキ…!!!」


席を立ち上がろうとするギルの脳天に拳を下ろし、ピーター君に笑顔を向ける。
「お前…怖いな」と小さく呟いたアーサーを無視して隣の席にピーター君を座らせた。


「アーサーもこっち座りなよ。相席しよ?」

「あぁ」

「ピーター君はお子様ランチでいいの?」

「はいですよ!あとクリームソーダです!」

「うん、分かった。アーサーは何にする?」

「俺はクラブハウスサンド」

「軽いね。了解ー」


近くにいた店員さんに二人の分も注文し、隣に座ったピーター君と楽しくお喋りを続ける。
本当に小さい子供って可愛いよねぇ〜
いいなぁアーサーは。こんな可愛い弟が居て


「名前はとってもいい奴ですよ!!シー君名前が大好きですよ!!!」

「ななな、何言ってんだよピーター…!!!」

「ありがとー!私もピーター君大好きだよ」

「ちょっ、ばばば馬鹿!!歳の差を考えろよ!!!」

「何本気にしてんのアーサー。嫌だよね〜こんな大人って」

「そんなだからいつまでたっても彼女ができないんですよ」

「俺はできないんじゃなくて…!!いや、もういい。なんとでも言えよ馬鹿!!」

「そうムキにならないの」


机に突っ伏して動かないギルの肩を揺らして起こし、運ばれてきた料理に舌鼓を打つ。
うん、美味しい〜!!
ピーター君に少しわけてあげると、「お返しですよー!」と自分の分のカレーを食べさせてくれた。
いい子だなぁ〜



「じゃあ俺はこいつ送って帰ってくる」

「えぇー!!シー君まだ名前と遊びたいですよ!!」

「馬鹿。昼食べたら家に帰るって約束したろ?今度俺のマンションに遊びに来ればいいじゃねーか」

「シー君なるべくアーサーとは顔を合わせたくないですよ。まぁ仕方ないですからまた今度行ってやるですよ!!でもアーサーじゃなくて名前に会いに行くんですよ!!勘違いするんじゃねーですよアーサー!!」

「テメェ〜!!!」

「こらこらアーサー。ピーター君、いつでも遊びに来てね!あとお兄さんに優しくしてあげてねーこれでもガラスのハートだから」

「そこがうざいんですよ。まぁ名前の頼みとあらば仕方ないですね!少しは優しくしてやってもいいですよ!」

「何様だお前は!!ほら、帰るぞ!!」

「あ、名前!」

「ん?」


両手を伸ばされたのでしゃがんでピーター君と目線を同じ位置にあわせると、頬にチュっと音をたててキスをされてしまった。


「なっ…お前ぇえええ!!」

「うぎゃぁああー!!何するですかギルベルトー!!」

「ガキがませた事してんじゃねぇええ!!」

「ただの挨拶ですよ!!これだからモテない男は嫌なんですよ〜まったく」

「んだと!?俺はモッテモテだぜ!!」

「嘘はダメだよギルー…」

「嘘じゃねーっての!!」

「ほら、帰るぞピーター!」

「名前、バイバイですよー!」

「またねー!」


アーサーに手を引かれ大きくてを振るピーター君に手を振り返す。
本当に可愛いなぁ〜!!


「お前顔緩みきってんぞ」

「え、うそ!?」

「ショタコ「何か言った?」いえ何も」


家に帰り二人してソファーに腰掛け旅の疲れを癒した。
ふざけてギルの肩にポンと頭を置くと、ぎこちなく髪を撫でられた。
うお、なんだこれ。不覚にも可愛いと思ってしまった…
オムライスを頬張るギルも可愛かったなぁ〜…
なんだろ、この親心みたいなの。その内うちの子一番とか思っちゃったりするのかなー…
いやいや、仮にもこいつは大人で私と同じ歳だからね!
ふと目線を上げてギルの顔そ覗いてみると、耳まで顔を真っ赤にしてそっぽを向いていた。

やべ、なんか今キュンときた…!!!

なんだかいたたまれない気分になって、ギルの髪をわしゃわしゃに撫でると「何すんだよ!!」とやり返された。

その後、預けていた鍵を返しに来た本田さんが私達を見て「何をやっているんですか!?イチャコラですか!?その経緯を詳しく且つ的確にお教えください!!」とノートとペンを持って迫ってきたのは言うまでもない


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