「ほらほら、これが5歳の時でね〜」

「うわっ」

「ほんとこーんな小さくて可愛かった名前がこんなに大きくふてぶてしくなるなんて犯罪よね〜」

「いや、これはマジで恐ろしすぎる成長ぶりだろ…まさかあんな風に成長するなんて神様でも想像つかないぜ」

「んだともういっぺん言ってみろや」


昨日の酒が抜けきらない頭でシャワーを浴び、スッキリ気分で今に戻ると祖母とギルがなにやら仲良さげにアルバムを覗いていた。
って、あれは私の…!!!


「ちょっ、何勝手に見せてんの!」

「いいじゃない。ゆくゆくはギルちゃんもうちの人間になるんだから隠す必要なんてないでしょ〜?」

「いつうちの人間になるって?ペットの間違いじゃないの?」

「ほんと皮肉れてんなお前!」

「あぁ?駅前に吊るしてきてやろうか」

「うっ…!」

「だめよ〜羞恥プレイは。どうせなら自虐プレイにしなさい」

「おい!!」


私が指をバキバキと鳴らしたので、祖母の背中に隠れたギルだったが、その言葉で瞬時に祖母から離れた。


「それにしても時がたつのは早いわね〜。このアルバムもこんなに古くなっちゃって」

「そうだね。このアルバムね、お父さんが私が産まれた時に買ったんだって。すっごく分厚いでしょ?一生成長と共に写真を貼れるようにお父さんがこんなに分厚いの買ってきたんだって」

「へぇ…」

「父さんが生きてたら今のあんた見てなんて言うかね〜。こんな鬼畜な娘になったのは母さんのせいだろ!って怒られちゃうわ〜」

「いや、怒らないでしょ。せめてここまで育ててくれてありがとう母さんとか」

「いや、絶対怒るね。あんたの父さんはそういう人だよ」

「うわーなんかお父さんのイメージぶち壊れたよ」


アルバムの一ページ目を開くと、私を大事そうに抱えている父の姿があった。
その下に、写真をはがされたような痕があるのは、そこにはきっと母の写真があったのだろう。
まじまじと父の顔を見たギルが私の顔と見比べて、「似てねーな」と呟いた。


「この子は母親似だからね〜。そりゃあんんたの母さんも美人だったよ〜」

「でも私を産んで出て行っちゃったんだよね〜」

「あん時はテレビドラマでも見てるんじゃないかと思うぐらいドラマチックだったよ〜」

「おいこら、複雑な過去をすんなり軽々しく話すなよ!?」

「そういう家族なのーうちは」


分厚い辞書のようなアルバムを閉じ、乾ききっていない髪をタオルで拭きながらアルバムを棚の中に戻す。


「さぁ、今日はお父さんのお墓参りに行くよーギル。ちゃんと準備しててね」

「マジかよ…」

「マジだよ。お父さんにギルの事説明しなきゃいけないしね〜」


「シャレになんねぇ」とうな垂れるギル。
準備が整うと、お婆ちゃんから受け取ったお花と蝋燭とお線香をもってギルと二人で家を出た。
家から少し離れた墓地にある先祖の墓に、私の父も眠っている。


「はいギル。お線香に火つけて〜」

「こうか?」

「そうそう。あっ、火を消す時は手で扇ぐんだよ!息吹きかけちゃダメ!」

「なんでだよ?」

「いいから。できたら蝋燭にも付けておいてね」

「まったく人使い荒いぜ…」

「あぁん?テメェも墓の中に入れてやろーか」

「え、いや…俺は土葬派だから」

「笑えねぇ〜」


お墓の前にお父さんの好物だったらしいお饅頭を置いて、そっと手を合わせる。
慌てて私の真似をし、手を合わせるギルを横目で見てそっと目を閉じた。

天国のお父さん、私はギルと仲良くやっています。怠け者だしグータラだしプー太郎だし、ビールばっか飲んでるけど根はいい奴なんです。
見ず知らずの男を拾って世話してやってるだなんて、お父さんは何て言うかな。
きっと私のお父さんなんだから分かってくれるよね。
これからもギルと大勢の大切な人たちと一緒に楽しい毎日をおくります。
時には辛い事があっても、きっとお父さんが見守ってくれているから大丈夫だと確信しています。
これからも宜しくね、お父さん。


そっと目を開けて隣を見ると、ギュッと目を瞑ったギルがなにやらブツブツと呟いていた。


「神社じゃないんだからお願い事しても叶わないよ〜」

「ばか、ちげーっての。お前の親父さんに色々言いたい事があったんだよ俺は!」

「どうせ”あのドSな性格をなんとならないのかー”とかろくでもないこと言ってたんでしょ」

「…まぁ、半分は合ってるな」

「うわ。この恩知らず」


うるせーと頭を小突かれたので緩く頬を抓ってやった。


「ねぇギル」

「んー?」

「やっぱり家族っていいもんだよね。どこに居たってずっと繋がってるって言うか」

「あぁ…。今まで脆いもんだとずっと思ってたけどな」

「そんな事ないよ。ギルだって私の家族だもん」


赤く澄んだ瞳は大きく開き、その瞳に私が映っているのが見えた。
なんだか泣いてしまいそうな顔をするギルの左手を握って「帰ろうか」と微笑むと、強く手を握り返された。


「ねぇギル」

「なんだよ」

「明日帰る予定だったけど、もう一泊して明日の夜は外でバーベキューでもしようか」

「普通バーベキューとかって夏にやるもんじゃねぇ?」

「いいじゃん。近所の人も呼んでさ〜。楽しそうじゃない?」

「まぁな。またお前の爺さんと飲み比べしてやるぜ!」

「ばーか。どうせ酔いつぶれて寝ちゃうに決まってんでしょーが」

「酔ったら性質の悪いお前に言われたくねーよ!!」

「はぁ?別に私悪酔いなんてしないし。眠くなっちゃうけど」

「人の苦労も知らないで…!!!」

「なにそれ。私は酔ったって迷惑かけないよーだ」

「かけてんだよ!!いや、ダメじゃないけど心臓に悪いっつーか…あぁもう!!!」


なにやら悶絶するギルを横目に見ると、なんだかおかしくなって声をあげて笑うと顔を真っ赤にされたギルに「てめぇええ!!」と追いかけられた。
そのまま逃げるように走り、家に帰るとお婆ちゃんが「遅かったねぇ。ご飯できてるよ〜」と優しく招いてくれた。
数分遅れて「お前どんな体力してんだよ!?」と息を切らすギルにヘッドロックをされたので、足の脛あたりをおもいっきり蹴ってやった。

痛いと脛を押さえて転げまわるギルをその場に放置ちていると、やれやれと「だめって言ったでしょ〜放置プレイは」と呟いた祖母がギルの脛に湿布を貼った。







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