今日は日曜。
いい天気だし久しぶりに映画でも見に行こうかなぁ
アーサーを誘ってドライブなんてのも悪くない。どうせあいつも暇だろうし
友達居ないもんね…


「どうせならドライブ行って映画も悪くないな」

「なんの話だよ」

「べっつにー。プーは大人しくアンパンマンでも見てな」


こいつは私の家に住んでからというもの、ずっとテレビを見ている。
ソファに寝転がってテレビを見て、たまにテレビに向かって「こいつ足太いな」だの「ぶふっ!!こいつぜってーヅラだぜ」だの返ってはこない言葉をテレビに投げかけるのだ

これじゃあ日曜のお父さん状態じゃないか


「なんだよそのプーってのは」

「ギルベルトの呼び方」

「どっかたらくんだよプーって!?」

「いいじゃん別に。可愛いよプー」

「止めろ。殺すぞ」

「…寝耳にビー「謝るからそれだけは止めてくれぇえええ!!!」


耳を必死に塞いで小さくなるギルベルト


「よし、アーサーでもお誘いに行ってこよう。ギルも行く?」

「何しに行くんだよ」

「ドライブと映画行きたくてさ」

「俺はいい」

「なんで」

「そんなデートコースお前と歩きたくねーよ。もっと胸があって美人で足も長い女じゃねーと俺は嫌だぜ」

「さり気なく私の全てを否定しやがったなこのプー太郎」

「あと性格も悪いしな」

「学習しない奴だなー。ビール持ってくるよ?」


目をそらしたギルベルトはアンパンマンに視線を移した。


『アンパンマーン新しい顔よー!!そーれ!』

「頑張れアンパン野郎ー」

「お前は一生そうやってろ芋野郎」


なんか、今更コイツを拾った事を後悔し始めた

マジでこいつむかつくなぁ…


「チッ。アーサーに愚痴聞いてもらうか」


ピンポーン


『はい』

「おっすアーサー。今暇?」

『え?ちょ、ちょっと待て!!うわ、馬鹿お前は出るな!!』

「はぁ?」

『ばっ、やめろアルフレッド!!』

「あるふれっど…?」


どどどど、と走ってくる音が聞こえたと思うと勢いよく扉が開かれた


「ナイスチューミートゥー!!やぁ君がアーサーの彼女かい!?へぇ〜可愛いじゃないか!!おいおい君こんな眉毛のどこが良いって言うんだい?ツンデレだし眉毛だしエロだし良い所なんて全然ないんだぞ!!今からでも遅くないからこんな奴とは別れたほうが良いぞ!!じゃないとどんどん眉毛が太くなる呪いにかかちゃうぞ〜!!!!」


DDDD

いきなり現れたのはアーサーではなく金髪の、眼鏡をかけた奴だった。
マシンガントークで話す男に私は一言も口を挟めない

っていうか誰ですか、あなた…


「アルフレッド!!お前俺ん家の客を勝手に出迎えるなよばかぁ!!」

「なんだよアーサー。彼女は自分自身で迎え入れたかったのかい?気持ち悪い奴だなぁ」

「違う!!!かかかか、彼女なんかじゃないって言ってるだろ馬鹿ぁああああ!!!」

「あの…。ちょっと状況が掴めないので説明していただけませんか…?」


真っ赤な顔をして喚くアーサーに視線を送れば、申し訳無さそうに「悪い」と呟いた


「こいつは俺の…あー、義理の弟なんだ」

「義理の…?」

「ちょっとアーサ〜。俺はもう君の事を兄だなんて思ってないんだぞ」

「えっと…なんか聞いちゃまずい事のようで…」

「別にまずいことなんてないさ。俺の父さんとアーサーの母さんが結婚して、連れ子の俺達は兄弟になったんだけど今は離婚して他人になっただけの話だからな!!」

「充分複雑な話だと思うんだけど…」

「悪い…こいつ全く空気読めない奴で…」

「それにしても君、見た目は若く見えるけど歳はいくつなんだい?アーサーはロリコンだから気をつけたほうがいいよ」

「誰がロリコンだメタボリック野郎!!」

「アーサーと同じ24だよ。あ、アーサーはまだ23才か」

「24んんんんん!?それって俺より年上じゃないか!!てっきり俺より年下かと思ってたんだぞ!!」

「ちなみにアルフレッド君は…」

「18歳で今度近くの大学に通い始める予定さ☆」

「うん、なんか自信なくしちゃった。私そんなに童顔かなぁー…あっはは」

「え、いや…まぁ悪くないと思うぞ俺は…」

「ほーら。ロリコンじゃないか」

「黙れ!!」


突然のアーサー弟の登場に頭がついていかない。
と、言いますか結構複雑なご家庭なんだなー、アーサーも


「そういえば何か用があって来たんじゃないのか?」

「え、いや…暇だったからドライブでも行かないかって誘いに来たんだけどー…。兄弟水入らずのところを邪魔しちゃ悪いし帰るよ。まぁ仲良く喧嘩でもしてて」

「これが仲良く見えるんだったら眼科に行った方がいいぞ、君。俺の眼鏡使ってみるかい?」

「遠慮しとく」

「ドライブか。たまにはいいかもな」

「よーし俺が運転してやるんだぞ!!名前って言ったっけ?俺のハンドル捌きを見せてやるぞ!!HOOOOO!!!」

「お前免許ないだろーが!!」

「大丈夫さ!!この間から教習所に通い始めたんだぞ!!

「この間って何時だよ」

「昨日」

「アーサー私まだ死にたくない。せめて最後に美味しいものを食べてから死にたい…」

「馬鹿いうな!!アル、お前は助手席だ!!」

「えー!!」


ゲシゲシとアーサーの足を蹴るアルフレッド君
もしかしなくても仲悪いのか、この元義兄弟…


「シートベルトちゃんと締めろよ」


マンションの駐車場に止めてあるアーサーのマイカー
普段乗りもしないのに高級車なんて買っちゃって…

車に乗り込み道路を走り出した所でアーサーが私を振り返った


「おい名前。あいつはどうしたんだ?」

「あいつ?ああギルベルトね。家でアンパンマン見てるよ」

「そのギルベルトって君の甥っ子か何かかい?俺も小さい時はよくアンパンマンを見てたなぁ〜。そして今ではヒーローが大好きになったんだぞ!」

「へぇ〜」

「こいつ結構多趣味なんだよ。UFOとか未確認生命体だとか、あと甘いものとか好きでアイスとかよく食ってるぜ」

「へぇ〜!!私もUFOとかああいう番組好きでよく見てるんだよ。あと甘いもの大好きだから休日はよくバイキングとかスィーツ巡りしたりする」

「本当かい!?じゃあ凄く気が合うじゃないか!!あと俺、映画も好きなんだよ!大学は映像製作サークルに入ろうと思ってるのさ!」

「いいな〜。私も映画大好きだよ。今日も映画見に行こうかと思ってたところだしね。あと大学時代は英会話サークルと掛け持ちで映像研究サークルもやってたなぁ〜」

「ワオ!!凄いじゃないか名前!!」

「まぁ見るほう専門なんだけどね」

「それじゃあこの間公開したハリウッドの映画はもう見た?」

「あぁーあの歴史の奴か。まだ見てないんだよね〜。今日見たかったなぁ」

「じゃあ今度一緒に行かないかい?俺もまだ見てないんだよ!!」

「え、いいの?こんな若い子男の子と映画なんて見に行っても大丈夫かしら」

「HAHAHA!!名前ってユニークなんだな!!それに友達に歳は関係ないんだぞ!!」

「わー。友達になれちゃったよ。嬉しいな」

「名前は何時休みなんだい?」

「土日と祝日は休みだよ。仕事が終わるのは5時から6時の間」

「よーし!!じゃあ今度の日曜は俺と映画を見て沢山甘いものを食べようじゃないか!!」

「オッケー。楽しみだな〜」

「……」


…あ。
話に夢中になっててアーサーの存在を忘れていた


「お前ら…俺のことほったらかしで…」

「あーゴメンゴメン!!すっかり話しに夢中になっちゃって…」

「OH!!居たのかいアーサー!!」

「誰が運転してると思ってんだお前…!!」

「まぁまぁ」

「ったくお前勝手に俺ん家の隣人と仲良くしやがって…」

「いいじゃないか。彼女じゃないんだろ?」

「いや、そりゃあ違うけど…」

「気にしないほうがいいよアルフレッド君。可愛い弟が心配なだけだから」

「え、そうだったのかい?気持ち悪いよキミ…」

「こっちこそお前なんて願い下げだ糞野郎が!!!」

「口が悪いぞ。これだから元ヤンは困るんだよなぁか〜」

「え、そうなの?アーサーってそうなの!?」

「そうなんだよ昔は家庭で色々あったからグレちゃってて大変だったんだぞ」

「てめっ!!あれは違う!!反抗期だっただけだ!!」

「じゃあなに。盗んだバイクで走り出したり、誰にも縛られたくないと逃げ込んだこの夜に自由になれた気がしたの?」

「なんで15の夜なんだよ!?いちいち古臭いよなお前…」

「HAHAHA!!名前って本当に面白い奴だな!!」


楽しそうに笑うアルフレッド君を見ていると、こっちまで笑顔になってしまった

この子には周りを動かす力があるんだろうなぁ〜

さすが、アーサーの義理弟だね



「たっだいまー!!」

「うお!?なっ、なんだよ…やけにテンション高いな…」

「いや〜。、若い子にパワーを貰っちゃってさ。若い子はいいね〜!」

「ババァかお前は」

「何か言ったかねギルベルト君」

「いえ何も…」


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