「明日の準備はオッケーだよね。ゴールデンウィークで混雑しそうだから切符も前もって買っておいたしお土産も買ったし…」


とうとう明日は里帰りだ!
久しぶりにお爺ちゃんとお婆ちゃんに会えるんだもんね〜。
お父さんのお墓参りも久しぶりだよなぁ…


「ギルー。さっさとお風呂入っちゃってって言ってるでしょ〜?」

「んー…これ見てから…」

「ったく…先に入っちゃうよ?出る時にお湯抜いてお風呂掃除しなきゃいけなくなるよ〜」

「めんどくせぇ…」

「だったら早く入って来い居候」


不機嫌そうに腰を上げるギルのケツを叩いてやると「せ、セクハラーッ!!」と身を寄せたので今度はおもいっきりお尻を蹴飛ばしてやった。


「いっでぇええ!!DVだDV!!!」

「だーれが家庭内暴力だコラァ。これはただの躾です」

「しつけって…!!!俺は犬かよ!?」

「犬はもっと従順だよねー」

「それ以下ぁあああ!?」

「悔しかったらやり返してみろバーカ」

「言ったな…」


一瞬ギルの目が変わったと思ったら、ギュッと両手を掴まれて体を壁に打ち付けられた。
ちょっ、動けねー…


「ちくしょう…放せプータロー」

「誰がプータローだ。ギルベルト様と呼べ」

「はぁ?ヒモが生意気言ってんじゃねーぞ。鼻にポッキーぶっ刺すぞ」


一瞬ビクッと体を震わせたギルだったが、掴んでいる私の手を放そうとはしない。
ってゆーか…顔近いんですけど


「はいはい分かりましたから。私の負けね。満足したんだったらさっさとお風呂入っちゃって〜。明日も早いんだから」

「お前なぁ…!!なんでそう鈍感なんだよ馬鹿!!」

「うわー。ギルに言われたくないな〜」

「普通男に壁に押し付けられたら焦るだろ!?」

「前にも言ったけどさぁ…だって相手はギルだし」

「…おいコラ…」


こめかみに青筋をたてて顔をひきつらせるギル。


「ったくふざけてないでお風呂入っちゃって。アーサー呼ぶよ?」

「うげ…それはやめてくれ」

「またフルボッコにされかねないからね。あいつ容赦ないから」


そういえば以前にもアーサーがギルの上に馬乗りになってフルボッコにしてた事あったっけ。あの時のアーサーは恐ろしかった…
流石のギルもその言葉には敵わなかったのか、大人しくお風呂へと向かう。
ったく、まだまだ躾が足らんなぁ…

リビングでテレビを見ていると、リンスがきれていた事を思い出し急いで詰め替え用を持ちお風呂場に行くと、脱衣所で上半身裸のギルが膝を抱えてブツブツと何かを言っている姿がドアの隙間から見えた。

あいつお風呂にも入らないでなにやってんの…。
「なんでいつも俺は…」だとか「眉毛が…」だとか念仏のように唱えている。
…何か悩み事でもあんのかな、あいつ…。
ドアの横にちょこんと詰め替え用リンスを置き物音をたてないようにして立ち去る。


うん、さっきのは見なかったことにしよう。


.


第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -