「こんばんわートニーさん」 「名前ちゃん!この間はごめんなぁ〜俺酔っ払ってもて記憶ないんやけどなんかやらかした?」 「ハハハ…。もう大丈夫だから」 先日私の家でギルとフランシスさんと共に酔って大暴れしていたトニーさん。まぁ反省してくれてるみたいだし酔っ払っての事だから仕方が無い。 「怒ってない〜!?ほんまに!?ほんまに怒ってないん〜!?」と何度も私の顔を覗くトニーさん。くそっ、可愛いな… 「怒ってないってば。もう気にしないで?」 「良かった〜!!ほんま名前ちゃんに嫌われてしもたらどうしよか思ったわぁ〜」 「あはは。そうだ、今晩一緒に夕飯どうです?」 「ええん!?実は今日夜のバイト入ってないさかい名前ちゃんとこ行こかなー思っててん!」 「よかった!それじゃあここのバイトが終わったら私の家来てね!美味しいご飯作って待ってるから!」 「よっしゃぁ〜!はよ終わらせて行くさかいなー!!!名前ちゃんの料理が待っとると思ったらめっちゃ頑張れるわ〜」 「えへへ。そんな凄い物は作れないけど頑張るね!それじゃあまた後で」 「ほんまありがとなぁ〜!!!楽しみにしてるわー!」 ふふふ。本当にトニーさんの笑顔って癒されるよなぁ。 今日はいつもより気合入れて料理しなきゃね!!! ――― 「ただいまー」 「遅かったじゃねーか」 「ごめんごめん。買い物して帰ってきたら。すぐに用意するねー」 部屋着に着替えて料理の準備をする。 「あ、今日夕飯にトニーさんお誘いしたからね」 「マジかよ!」 「マジだよ。今日はこの間みたいに酔っ払わないでね」 やる気のない返事をしたギルは本日の晩酌用ビールに手をつけた。 よし、ちゃちゃっと作っちゃうぞ! 「あ、そうだギル。明後日の準備ちゃんとすませておいてね?」 「はぁ?明後日ってなんだよ」 「前から言っておいただろーが。ゴールデンウィークの前半は実家に帰るって。ちゃんと着替えとか準備しておいてよね」 「あぁーそんな事言ってたな…。って、実家ってお前の…?」 「私のじゃなかったらどこの実家っての」 「え…?俺も行くの…?」 「うん。挨拶とかした方がいいでしょ?」 「挨拶って…」 一瞬肩をビクッと震わせて固まるギル。 不審に思い頬をつついてみるも何も反応が返ってこない 「大丈夫だよ。事情を説明すれば分かってくれるしね。私が拾ったって言えば祖父母も信頼してくれると思うし」 「へ!?あ、そうだよな!!はは、ハハハハハハハ、ゲホッ」 なんなのこの子… まぁいいや。放っておこう。 手際よく夕飯の準備をしテーブルに料理を並べる。 ―ピンポーン 「あ、トニーさんだ!!はいはい今行きますよ〜!!ギル、お箸並べといて!」 「はいはい」 駆け足で玄関に向かい扉を開く。 しかしそこには予想していた人物とは違った人が居まして…ぶっちゃけすっごくタイミングが悪いと思います。 「アーサー…」 「よぉ。夕食一緒にどうかと思ってだな…。べ、別にお前と一緒に食べたいとかそういうのじゃなくて…」 片手にワインを持ったアーサーが頬を染めてもじもじと体を揺らす。 ちょっと待て…。もし今の状況でトニーさんが来たっちゃたら… 「名前ちゃ〜ん!仕事終わったでー!!親分お腹ぺこぺこやわ〜」 「なっ…カリエド…!!!!」 「あぁ?カークランド…お前名前ちゃんの部屋の前で何してんねん」 「テメェこそ何やってんだよ。貧乏人は家で内職でもやってろ」 「お前こそこんなとこにおらんと家でママの料理でも食っとけや。ええとこの坊ちゃんがナマ言っとるんちゃうぞ?」 タイミング悪ぅううう!!!! ちょ、なんとかしないと…!! 「えと、アーサーもトニーさんもそんなに睨みあわないでさ、夕飯食べようよ」 「「こんな奴と一緒に食べたくない」」 「いい年して我が侭言うなよ…!!!」 あぁもうなんでこうなるかな…!!! 「おや、こんな所で何をしているんです?」 「本田さん!!」 「こんばんわ名前さん。久しぶりに名前さんの手料理をいただきに参上した本田ですよ!」 「誰やの、名前ちゃん」 「えーっと…」 またややこしい事になってきた… とにかく全員中に入れてから話そう。 頼むから近所迷惑だけはやめてほしい 「死ね」 「お前が死ねや」 「いやお前が死ねよ」 「いやいや死ぬのはお前やん」 「カリエド死ね」 「カークランド死ね」 「二人とも追い出しますよ?」 「「ごめんなさい」」 食卓を挟んで睨みあう二人に一喝を入れて大きくため息をつく。 本田さんが「なるほど、関西弁キャラはやはりストーリー上欠かせませんよね。これはあず○んが大王の大阪氏のような…」とブツブツ言っているけど気にしない。 「トニーさん。こちら私の近所に住んでいる本田さん。ここに引っ越した時から色々とお世話になってる人なの」 「初めまして本田菊です。名前さんの事は娘のように、時に妹のように可愛がってもらわせています。ってゆーか妹萌えです」 「本田さん。自重自重」 「妹はええよなぁ〜」 「トニーさんんん!?」 「気が合いそうですね、アントーニョさん」 「トニーでええよ〜!なんや俺も自分とは気ぃ合いそうやわ〜」 ほのぼのとした笑顔を本田さんに向けるトニーさん。なにやら本田さんが「なるほど関西弁天然キャラですかとても素晴らしい」だとかブツブツ言ってるけど気にしない。 「とにかく食べましょう。あとトニーさんとアーサー。喧嘩したらベランダに放り出しますからね?」 「大丈夫やで名前ちゃん。もう大人やさかいここは名前ちゃんに免じて大人しくしとくわ〜」 「あぁ。この部屋を一歩出たらどうなるかわからねーけどな」 「よっしゃカークランド。後で公園行こか。昔みたいにフルボッコにしたるわ」 「それはこっちの台詞だ。また鼻の骨折ってやるよ」 「ギル。なんとかして」 「お前は俺に死ねって言うのかよ!?」 「この根性無し!!!」 ったく本当に仲悪いんだなぁこの二人は…。学生時代から喧嘩ばかりしてたとか言ってたけどどうしてこんなに仲悪いんだだろ… 性格が合わないのかなぁ…。私としては二人とも大事な友達だし仲良くしてほしいんだけど 「ん。そういえばお前の携帯鳴ってたぞ?」 「え?まじでか。メールかな…」 チカチカとランプが光携帯を開くと、新着メールの表示がされていた。 「ロヴィーノ君かぁ」 「ロヴィーノやてぇええ!?」 「え!?な、なにトニーさん!?」 「いいいい、今ロヴィーノって言った?名前ちゃん…」 「い、言ったけど…。って、あ…」 思い出した…!!確かロヴィーノってトニーさんの話によく出てくる…!!! 「ああああ!!もしかしてロヴィーノにナンパされてもたんやな!?ああもうだからあれほどくるんの生えた男には気をつけてって言ったのにぃい〜!!!」 「ご、ごめんトニーさん!すっかり忘れてて…」 「で、何もされてないよな!?キスされたりハグされたり変なとこに連れ込まれて無いか!?あいつへタレやけど手ぇ出すのだけは早いねん!!!」 トニーさんのその言葉に他の三人が箸を落とした。 「なななな、ナンパってお前…!!!まさか昨日の大学か!?あれほど年下ナンパすんなって言っただろ!?」 「私はやってねーよしかも昨日じゃないし!!」 「カリエドてめぇ…。さすがはお前の知り合いだよなぁ…ナンパなんて下品なまねしやがって。あぁ?」 「おんどれ俺の子分馬鹿にしたら本気で殺すぞ…」 「まぁ落ち着いてくださいお二人とも。とりあえず私は帰って刀をもってきますから」 「またかよ本田ぁああ!!やめろ!!頼むからフランシスの時のような事は…!!!」 収拾がつかなくなった部屋に腹の底に響くような音が響く。 言わずもがな、私がおもいっきり机を叩いた音だ。 その音にギャアギャアと騒いでいた四人の動きがピタリと止まる。 「落ち着きましょうか。とりあえず夕食を食べてください」 「食べろって…お前が机を叩いた衝撃でこぼれちゃって…」 「食えつってんだろ」 「「「「かしこまりましたぁああ!!!」」」」 睨みをきかせれば勢いよく敬礼をした四人。 衝撃によりこぼれてしまっているスープなどの残りを無言でお腹の中に詰め込んだ。 「はぁ…それにしてもあのロヴィーノ君がトニーさんの知り合いだったとはねぇ。って事はフェリ君も?」 「そやでー。ロヴィーノとフェリちゃんは小さい頃別々に暮らしててなぁ。まだ小さいロヴィーノをよう面倒みたっとったんや。小さい頃のロヴィーノはそれはもう天使みたいに可愛くて…」 「溺愛してるねー。まぁあの子達ならその気持ちも分かるなぁ」 「ほんまに!?ほんま名前ちゃんは女神さんみたいな子やなぁ〜親分感動で涙出てまうわ〜」 「何が女神だよ。こんなSっ気のある女神なんざゴメンだぜ」 ケラケラと笑うギルの首根っこを掴んで引き摺り玄関の外へ放り出し鍵を閉める。 無言で食卓へ戻ると本田さんが息を荒くして「放置プレイ…!!」と頬を染めていた。 「で、そのナンパがどうとかって…大丈夫なのかよ…?」 「別にアイス奢ってあげたぐらいだし…特に変わったことはなかったよ。てかナンパってのも違う気がするし」 「奢ってやったって、普通逆だろ!?」 「それが奢ってくれるって言ったけど彼財布忘れて来ちゃっててさ〜。可愛いよね」 「素晴らしくヘタレな方ですね」 「俺と一緒でなーんかかっこつかんのやな〜。まぁそんなとこもかわええんやけどな」 「だよね。フェリ君も可愛かったし」 「あぁ〜名前ちゃんとロヴィとフィリちゃんが三人でおるとことか見てもたら俺大変な事になりそうやわ〜。天使さんが三人やで三人!」 「そのまま天国行ってこい」 「アーサー…?」 「ごめんなさい」 「よし、いい子だ」 それからは何事もなく夕食を終えて、しばしばアーサーとトニーさんの口喧嘩もあったが大事にはならず三人とも自分の家へ帰っていった。 入れ替わるように部屋に入ってきたギルにコーヒーを淹れてあげると涙を溜めた瞳で見上げられた。 「ひ、一人たのしすぎるぜー!」と声をあげてコーヒーをごくりと飲んだギル。 そのコーヒーの熱さに「あぢぃいいい!!!」と水を求められたので、ため息をついて水を渡す。 ったく、本当に仕方がない奴だよこの子は… . ←|→ |