「はい…はい。すみませんデンさん。それじゃあ」 ピッ 「はぁ…」 「う゛ー…気分悪ぃ〜…水持ってこい」 「ったく…お前のせいでこちとら会社休むはめになったじゃねーか…!!」 昨晩、アーサーの作ったへいk…じゃなくて、スコーンを食べたギル。 ぶっ倒れてしばらく意識を失っていた彼だったが、奇跡的に生還をとげた。なんて悪運の強さ。 しかし腹痛と気持ち悪さに襲われたらしく、ずっと「うー」だとか「あぁー」だとか唸っている。 無理矢理食べさせた私の責任でもあるから放ってはおけないんだよなぁ… 「はい、水」 「起きるのめんどくせぇ。飲ませやがれ」 「はぁ〜!?自分でやれよ」 「俺の口の中にあの兵器突っ込んだのはどこのどいつだったかな〜」 「はーい今ストロー持ってきてあげますからね〜」 ちくしょう…!!今回だけは正論だから何も言い返せない…!! 「あとこの間本田に借りたDVD映せ」 「はいはい分かりましたよ〜我侭王子様ー」 「ケセセセ。もっと褒め称えやがれ!」 「調子にのんなよ不憫野郎」 ギルの顔を掴みアイアンクローを仕掛ける。 「ギブギブ!!ギブアーップ!!!」とのくぐもった声が聞こえたので離してやると、涙目になって私を睨み上げた。 「お前…!!病人にアイアンクローはねーだろ!?」 「ギルちゃんが調子に乗るのが悪いんですぅー」 はぁ〜…こんな奴の為に仕事を休まされるはめになるだなんて…。 今日一日ギルの面倒みなきゃいけないんだよね…。うわ、めんどくさっ! でも仕方が無いか… 「ギル。食べたい物とかないの?」 「食えるかよ。気分悪いっつーの」 「でも何か食べないと食あたりの薬も飲めないんだよね。何か食べてよ」 「んじゃ雑炊。卵入れたやつ!」 「はいはーい。今作るからまっててね」 私も朝ごはんまだだったし食べちゃおう。 食べ終わったら買い物に行って…。 ついでに日用品なんかも買いに行ってこよう。 「はいどうぞー。召し上がれ」 「んー」 寝転がって毛布に包まりDVDを見るギル。 ちくしょう、急いで作ってやったのに…。 「ギル。早く食べないと冷めちゃうよ?」 「冷めてるぐらいが一番いいんだよ」 「でも冷めちゃうとご飯がお汁吸っちゃってぶよぶよになるよー」 「それも嫌だな…」 「ほら、体起こして。食べないとスコーンが消化されないまま胃の中でどろどろする事になるよー」 「ヒィイイ!!!想像しただけて気分悪い!!」 顔色を悪くし、体を起こすギル。 「あ、ちょっと待っててね。冷ましてあげるから」 「ん?」 レンゲに雑炊をすくって、ふーと息を吹きかけ湯気を飛ばす。 小さい頃風邪なんかひいた時はこうやってもらってたよなぁ… 「はい、あーん」 「ふぇ!?」 ギルの頬が赤く染まっているのが見える。 何赤くなってんだろーこの子。 そういえば前にもこんな事あったよなぁ〜。ギルがリンチされて腕が使えなかった時か。 あの時とは違い、今回のギルは少しためらいつつも私の差し出したレンゲをパクリと口の中に入れた。 「おいしい?」 「ふへぇ」 「うめぇか。良かった。一人で食べられる?」 「…」 「冷ましておこうか?そしたら自分で…」 食べれるでしょ、と言葉を続ける前にギルの手が私の手に触れた。 何事だ…!? 「め、めんどくせーからお前がやれよ…」 「やれって?」 「俺様は変なスコーン食わされて体もスゲーだるいんだよ!!お前が冷まして食わせやがれ!!!」 言いたいことは分かったが手を握る必要はあるんだろうか。 まぁいちいちギルの行動を気にしてちゃダメだよね。 それからは一口ずつ冷ましてはギルの口へ放りこんでやる行動を繰り返した。 一人用の土鍋が冷めている頃には全て食べ終わっていて、お腹をポンポンと叩いたギルは「腹いっぱいだぜー!」とオッサンみたいに喜んでいた。 …私の分の雑炊水分無くなってぶよぶよになっちゃってるんですけど…。 はぁー…仕方ない、水を足して火に掛けなおすか。 「ギルの面倒みてるといちいち余計な手間がかかるんだよなぁ〜」 「なんか言ったか〜?」 「バーカ」 「いきなり馬鹿よばわりかよ!?」 「さーて買い物にでも行ってこようかしらー」 「無視すんな!!こら、返事しろよブス!!」 「…ギル…」 「な、なんだよ…」 笑顔で傍によると、肩を振るわせた。 「病人だからって許されるとでも思った?女性にブスは無いよねぇブスは」 「いや!!ちょっ、待てよ!!今のはなんて言うか勢いで…本当にそんな事思ってるわけねーだろ!!!」 「いいんだよギル。そこに横になって?穴という穴にビール流し込んであげるから」 「やめてぇえええええ!!!!」 その後部屋を逃げ回ったギルは、更に症状が悪化しとうとう寝込んでしまった。 ちょっとやりすぎたかなぁ…。 ま、大丈夫だよねーギルだし。 さて!明日はアルフレッド君の大学に行くんだからちゃんと起きられるように早く寝ないとね!! 楽しみだなぁ〜! . ←|→ |