今日は日曜日!天気は良好、絶好のデート日和!
そんなわけで、朝からぎゃんぎゃんと喧嘩をするアーサーとギルなんて放っておいてエリザとの待ち合わせ場所に来た私なのですが…


「エリザ遅いな〜」


待ち合わせ場所である駅前をきょろきょろと見回してみるものの、エリザの姿は見当たらない。
寝坊でもしちゃってるのかな?
携帯を確認してみると、新着メールの表示が出ていた。案の定その相手はエリザで、寝坊して三十分ほど遅れるとの事。

エリザもお仕事で疲れてるし寝坊しちゃうのは当たり前だよね〜。

仕方ない、アイスでも買って待つかー
近くにあるアイスの路上販売の列に並び、順番を待つ。
すると、なにやら若い男性が私の方を見て口を開いた


「おいお前!結構可愛い顔してんじゃねーか!今日一日俺に付き合えコノヤロー!」


なんだろうこの軽そうな外国人は…
誰に言っているのかと辺りをきょろきょろ見たが該当する人物は私しかいなく、仕方がなく返事を返した。


「えっと…私?」

「お前以外に誰が居るんだよ!お前今暇だろ?俺と楽しい時間を過ごさないか?」


手を握られ顔を寄せられる。
ん?ままま、まさかこれは俗にナンパというものですか…!?
いや、まさか私に限ってそんな事ないない…
ともかくエリザを待たなきゃいけないんだし丁重にお断りしよう


「あーすみません。友達と待ち合わせをしてるんで」

「なっ…!お、俺と一緒に居たくないって言うのかよ…」

「いや、そういうわけじゃなくて…」

「アイス食うのか?奢ってやるぜ」

「うわー話聞いてないよこの人ー」

「俺はバニラにするからお前チョコにしろよな」

「あ、うん…」


なんなんだろうこの人…
見た目からすると欧州の人っぽいけど。
ってゆーか頭に生えてるその毛、すっごく気になるんですが。


「ん?あれ…?」

「どうしたんですか?」

「いや、財布がなくて…」


ポケットや体をぽんぽんと触るが見つからないらしく、サーっと表情が青ざめていった。


「い、家に忘れてきた…」


へ、ヘタレだぁあああ!!
なんかすっごいヘタレだよこの子!!
うわ、ちょっと涙目になってるし…!!
なんかこう、母性本能くすぐられるなぁ〜


「ぷっ…」

「わ、笑うなちくしょぉおお!!」

「ごめっ…あはは!!お、おかしい〜!」

「わわわ笑うなって言ってんだろこのやろぉー!!」


顔をトマトみたいに真っ赤にして更に涙を浮かべた青年。
しょうがない、ここは私が奢っておいてあげようかな。その可愛い姿に免じてね


「すみません、バニラとチョコ一つずつ」

「ありがとうございまーす」


まだエリザが来るまで時間あるだろうし大丈夫だよね。


「はいどうぞ」

「う…いらねーぞちくしょー…」

「好意はありがたく受け取った方がいいよ」

「うっ…」


Grazie。発音のいいそのお礼の言葉に彼の国籍が判明した。
どうやら彼はイタリア人らしい。


「おいしいねー」

「お、おう…」

「君はまだ学生?」

「大学生だぞこのやろー…」

「へ〜。いいなぁ大学生。遊べるうちに沢山遊んでおいた方がいいよ〜働くと何かと忙しくてそんな暇もないからね」

「お前は社会人か?そうは見えねーけど」

「童顔だって言いたいんだよね。分かってるさよく言われるからねーあっはっは」

「お前…変な女だな」


アイスを持った反対の手で私の髪を撫でる青年。
うわ、タラシだ…


「さてと!私はそろそろ友達と待ち合わせがあるので」

「そっか…」

「いい時間潰しになったよ。またどこかで会えるといいね」

「また会えるのかよ?」

「うーん…」


個人的にはもっと彼のヘタレ可愛い所見ていたいんだけど…


「まぁそのうち会えるんじゃないかな。もしかしたら近いうちにね」

「マジかよ…?本当だな!?」

「えぇー!?そう言われちゃうとなぁ…」

「や、約束やぶったらお前ん家にトマト投げてやるんだからなちくしょー!」

「何そのイジメ!!」


ほんと、面白い子だなぁ…。
立ち上がり、お尻の汚れををぽんぽんと払う。そろそろ三十分たったしエリザも来る頃だろう。


「じゃあ行くねー。またどこかで」

「…おい!」

「なんですかー…って、うお!?」


ちゅっ

音をたて、頬に落とされた唇。

って、えぇえええーー!?


「また会おうな!チャオ!」


嬉しそうに子供のような笑顔で笑った青年は駆け足で街の中へと消えてしまった


「ふふふふ、不意打ちだ…!!」


きっと今の私顔真っ赤なんだろうなー…
ああもう日本人はキスなんて挨拶に慣れてないの知らないわけじゃないだろ!!清く正しく握手にしようよ握手!!!
うっ…この顔見られたらエリザになんて言われるかな…


「お待たせ名前!!ほんっとうにごめんなさいね?目覚ましかけておいたのに寝過ごしちゃって…」

「あ、アハハー…大丈夫大丈夫」

「あら?どうしたの名前。なんだか顔が赤いわよ?」

「え!?いや、ちょっと熱いかなーなんて!ほら、今日いいお天気で日差しも強いし!?」

「そう?それじゃあどこかのお店にでも入って冷たい物でも飲みましょうか」

「う、うん!」


その後は何事もなかったのようにエリザと買い物や食事をして楽しんだけど…
あの青年君、名前とか聞いておけば良かったなぁ〜…
まぁそのうちどこかでバッタリ会えるかもしれないし、その時にでも聞けばいいか
それにしてもエリザとのデート、すっごく楽しかったなぁ〜!!エリザも楽しんでくれたみたいだし良かった!

美味しいケーキのお土産を持って家に帰ると、リビングから笑い声と鼻につく酒臭さが漂ってきた。
嫌な予感を隠し切れず、恐る恐るリビングを覗いてみると、ギルとトニーさんとフランシスさんが三人がお酒を浴びながら机の上で踊っていた。しかも全員半裸で、フランシスさんにいたっては身に着けているものは何もない。
一人ずつ縄で縛って裸のままベランダに放り出し、鍵を掛けてカーテンを閉めて外の世界をシャットダウンする。
三十分もすれば酔いが冷めたのか、ベランダのガラスを叩く音と「寒いんだよ開けろ!!」「名前ちゃんごめんなぁー!」「お兄さん全裸なんですけど!何か隠すものちょうだい!せめて薔薇とか!」と三人の叫び声が聞こえたが聞こえなかったことにする。
ケーキは早く食べないと美味しくなくなってしまうので、アーサーに紅茶を淹れてもらって美味しくいただいた。
外から聞こえる声にアーサーも聞こえないふりをして「今日はカラスがうるせーよな!」なんて爽やかな笑顔で笑っていた。


ま、ケーキを食べ終わったら中に入れてあげようかな


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