「たまにはアーサーの淹れてくれた紅茶でモーニングティーってのも悪くないよね〜」

「紅茶だけは美味いもんな、紅茶だけは」

「テメェはコーヒー派だろ。飲むな馬鹿」


本日は土曜で休日!
こうやってサンドウィッチを食べながらアーサーの淹れてくれた紅茶を飲むのっていいよね〜
ちょっと英国気分!


「そういやアーサーはゴールデンウィークどうするの?」

「特に予定もないな。休みが多すぎて時間を持て余しそうだよな…」

「あ。アーサーのとこも2日から10日まで休みなの?九日間も休みだとやることないよねー。実家に帰ったら?」

「久しぶりに実家に帰ろうとしたら弟に嫌な顔された。本国に帰るのも気が乗らないしな…」

「弟って…あぁ、小さい方の」

「お前に眉毛の呪いかけられた方か」

「そうそう眉毛の呪い。かわいそうだよね〜その弟君」

「お前らは失礼って言葉しらねーのか!?オブラートもしくは八つ橋に包んで話せばかぁ!」


アーサーが机を叩いたから、カップの中の紅茶が少しソーサーの中にこぼれてしまった。
ったく、乱暴なんだからこの元ヤンは…


―ピンポーン


「ん?客だぞ」

「はいはーい」


誰だろう?まぁだいたいは予想ついてるんだけどねー…


「おはようございます、名前さん」

「おはようございまーす本田さん」

「ギルベルトさんいらっしゃいますよね?」

「勿論居ますよー。まぁ入ってください」

「はいお邪魔します」


両手に紙袋を持った本田さん。
中身は言うまでもないだろう


「おはようございますギルベルトさん、アーサーさん」

「はよーす。あれ持って来てくれたのかよ本田!」

「えぇ、持って来ましたよギルベルトさん!!」

「ほ、本田…!!」

「ギルベルトさん…!!」


お互いの拳と拳をくっつけ、にやりと笑うギルと本田さん。
お前ら小学生か?


「持ってきたって…。エロゲはもうやめてくださいよ?ルルちゃんだかララちゃんだか知りませんけどあの甲高い喘ぎ声耳に残るから嫌なんですよ」

「あ、喘ぎ声って…!!なに言ってんだよばかぁ!」

「なんでアーサーが怒るの!?」


お前は中二か!?
顔赤くしてこっち見てるし…!!なんか気持ち悪いよアーサー!!


「今回はエロゲーではありません。勿論泣きゲーでもないですよ。ちなみに乙女ゲーでもありません」

「焦らさないでくださいよー!何なんですか?」

「育成ゲームです」

「…」


本田さんの笑顔が三割り増し輝いているのは気のせいではないだろう。


「主人公はお兄ちゃんになって妹を育てる育成ゲームですよ。一緒に寝たり一緒にお風呂に入ったり、時と場合には妹にいたずらもできちゃいます!」

「できちゃいますじゃねーよこのロリコン!!」

「ちなみにこのゲームのキャラデザインは私が担当しています」

「凄い!凄いけどなんか嫌な予感がする!」

「このジャケに載っているナナたんと言うキャラクターのモデルは名前s「帰れぇえええええ!!!!」

「落ち着け!!落ち着け名前!!」


本田さんにつかみ掛かろうとする私を羽交い絞めにするアーサー。
なんで本田さんはいつもいつも私をモデルにするの!!何か恨みでもあんのかこのクソジジイィイイ!!!


「名前さん…」

「何ですかもう!!」

「是非、”お兄たん”と呼んでみてくださらないでしょうか?」

「よーし大人しくしててください。今すぐベランダに吊るしてあげますから」

「SMプレイですか…!?しかしどちらかと言うと私はSなのですが…仕方ありません、名前さんの為とあらばこの本田菊…ドMになりきりますよ!さぁ、どんと来ーい!!!」

「くたばれ変態ジジイ!!」


ゾクゾクと身震いする本田さん。
もうやめた!いちいち相手するからいけないんだよなぁ…!
妹だかなんだか知らないけど勝手にやってるがいいさ。
こんなの相手にしてられないし、アーサーと買い物でも行こうかな…


「ねぇアーサー。どこか出かけない?」

「ん。いいな。どこ行くんだ?」

「この間公開した新しい映画が気になるんだよね。全米が泣いた純愛ストーリー!とかCMで言ってるやつ」

「あぁ…ハリウッド映画か」

「いや?」

「べ、別にそんな事言ってねーだろ!!まっまぁお前がどうしても行きたいって言うなら行ってやらないこともないぜ…」

「ナイスツンデレ!!」

「ちょっと本田さん黙っててください」

「てめっ!!今日は家でゆっくりするとか言ってたじゃねーか!!」

「ゆっくりしたくても傍で萌え萌えなゲームされちゃあゆっくりできないでしょーが」

「じゃあやめりゃいいんだろやめりゃ!!映画なんて行く暇あったら家の掃除しろよバーカ!!」

「ああん…?テメェ誰に口利いてんだよゴルァ」


コントローラーを握るギルの背中を踏んずけてやると「テメェ重いんだよ!!デブ!!」と返されたので、ゲームのコードで手足を縛ってやった。


「縛りプレイですか…!?流石は名前さん。やりますね」

「…もういい。今日は一日部屋に篭って本でも読んでます。明日はデートだし疲れが残るのも嫌ですしね」


”エリザと”を付け忘れたな。なんて頭の隅の方で思っていると、部屋がしんと静まり返った。
何事かと何度か瞬きをしていると、わなわなと震えたアーサーが先陣を切って口を開いた


「い、今なんて…」

「部屋に篭って本でも読んでます」

「違う!その後だよ馬鹿!!」

「デート?」

「あぁ、それだよそれ…って、デートォオオオ!?おまっ、なっ…あっ」

「落ち着いてから話そうねアーサー君!」

「名前さん、私ちょっと家にもどって刀取ってきますね」

「あんたは何しようとしてんのぉおおお!?銃刀法違反で捕まりますよ!?」

「大丈夫です近所に武器マニアの方が居てしょっちゅうぶっ放していますが捕まった経歴はないですから」

「どんなご近所さん!?てかたまに聞こえるあの音銃声だったのかよぉおお!!」

「名前…」


私の肩を優しく叩いたアーサー。
え、なんかすっごい笑顔なんですけど…


「その相手の名前と住所と年齢、職業を教えてくれ」

「あんたは何しようとしてんのぉおお!?」

「奇しゅ…げふんげふん。ちょっと挨拶するだけだから勘違いするなよ!」

「今言いかけたよね?今奇襲って言いかけたよね?」

「そ、そんなんじゃねーよ…ばかぁ…」

「顔赤くしないでよなんか気持ち悪いんだよお前」


ってゆーか、何このカオス?
それにしてもギルがやけに静かだなぁ…
って、あれ?


「ぎ、ギルー?」

「どうかなされましたか?」

「な、なんかギルが動かないんですけど…」


目を開いてこっちを見ているものの、その目は虚ろでピクリとも動かない


「ギルー!?」

「おやおや…固まっちゃってますね、ギルベルトさん」

「ちょおお!!どうしたギル!!何フリーズしちゃってんのぉおおお!?」


肩をがくがく揺らしても返事をしないギル。
手足を縛っていたコードを解いてみるものの、やはりピクリとも動かない。
え?何、何が起こったの!?


「とりあえずリセットボタンを探しましょうか」

「そんなものありませんよ!!」

「それともカセットを一度抜いてフーッとやった方がいいですかね?」

「いっそこのままゴミ捨て場に捨ててきてやるよ」

「だめですよアーサーさん。今日は燃えないゴミの日ですからね」

「明日は粗大ゴミの日だったよな。よし!」

「よしじゃねーよ!!なにうちの子粗大ゴミに出そうとしてんだテメェ!!」

「む、胸倉つかむなよ…ばか」

「だからなんで顔赤くすんのぉおおお!?」



誰かこの状況をどうにかしてください…


収拾がつかなくなったこの空間を断ち切ったのは嵐のように現れたアルフレッド君だった。
「名前と一緒に映画のDVDを見ようと思って来たんだぞ!」と明るい笑顔で笑う彼にどれだけ心が救われた事か…!!
しかし、意気投合してしまったアルフレッド君と菊さんによりまたもやリビングに熱いオタクトークが炸裂した。
どうやらアルフレッド君もアニメやヒーローが大好きらしい。
盛り上がりを見せる二人を他所に、アーサーは誰も構ってくれないのが寂しいのか私の後をヒヨコのようにちょこちょことついて回った。
そして、部屋の隅っこに追いやられたギルは相変わらず固まったままだった。


はぁ…なんかすっごく疲れた…


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