昨日はアーサーとギルベルトの三人でカレーを食べた。
アーサーはカレーに凝っているらしく「こくが足りない」だの文句を言っていたが、おわかりまでしていた
ギルベルトはタバスコ入りカレーを食べて必死に水を要求していたが無視した。
アーサーが憐れむような目で見ていたが気にすることではないだろう


「それじゃあギルベルト。行ってくるね。昼ごはんは昨日の残りのカレー温めて食べてね」

「もう変なもの入ってないだろうな…」

「入ってないって。火には注意するんだよ」

「ガキじゃねーんだから分かってるっつーの」

「減らず口が絶えないとこがガキっぽいんだっつーの。そんじゃあいってきまーす」

「…おぉ」


朝見送ってくれる人がいるのっていいもんだよなぁ〜
鼻歌混じりでエレベーターに向かうと、ゴミ袋を片手に持っているアーサーが居た


「おはよー。あれ、今日燃えるゴミの日だっけ?」

「おはよう。お前ゴミの日ぐらい覚えとけよな」

「うっかりしてただけだよ。しょうがない、後でギルベルトに電話して頼んでおこう」

「あの…昨日はあの後何もされなかったか?」

「は?」

「俺が帰った後だよ!!あいつに変な事されてねーだろうな!?」

「ないよ。しつこいなぁアーサーも」

「ばっ馬鹿!!お前の事心配してやってんだろ!!お前のん気だしいい加減だから心配なんだよ」

「大丈夫。なんともないから」

「はぁ…」


ため息をついてうな垂れるアーサー


「朝からそんなにため息ついてると余計に眉毛が太くなるよ」

「眉毛関係ないだろ!!?」



―――


プルルル


「ん?電話か…。ったくめんどくせぇ…」

『あ、もしもしギルベルトさん?』

「お前かよ」

『悪いけどキッチンにあるゴミ袋出しとてくれる?今日ゴミの日なの忘れてた』

「はぁ…?ったく、しょうがねーな」

『ゴミ置き場はマンションの下の自転車置き場の近くだからね〜。それじゃあ頼んだよ』

「その代わりあれだからな。帰りに美味いビール買って来やがれ」

『うわ、何その偉そうな態度。あんまり調子にのってると寝てる間に耳にお前の大好きなビール入れるぞ』

「ちょっお前それは酷すぎるだろ!?まぁ別にお前なんかが怒ったって怖くないけどな!!ガハハハ!!」

『はいはい。高笑いは程々にしてゴミちゃんと出しておいてよ?出してなかったら本気で寝耳にビールを…』

「分かったって言ってるだろうが。しつこい女は嫌われるぜ?」

『うわ。帰ったら覚えてろよお前。それじゃあ頼んだよ〜』

「あぁ」


ツーツーツー


「はぁ…」


ゴミ出しなんてかっこいい俺様のやる事じゃないぜ!
しかしここまま放っておくとあいつが帰ってきたとき何されるか…

いや、別に怖くなんかねーぞ!?
耳にビールぐらい別にこここここ、怖くなんかないぜー!!


「…。ゴミ袋どこだ…?」



―――



「すみません。お先に上がらせてもらいますね」

「はい!お疲れ様です名前さん。名前さん最近お帰りが早いみたいですけど用でもあるんですか?」

「あー。ちょっと生き物拾っちゃってさ。お腹空かせて待ってるだろうからね」

「へぇー。犬か何かですか?そういえば僕もこの間帰り道で可愛い子犬を拾ったんですよ〜。飼い主も居ないようなので僕とスーさんでお世話してるんです。ほら、僕とスーさん同じマンションだから」

「ティノ君動物好きだもんねー。名前は?もう決めてあるの?」

「はい!花たまごって名前なんですけど、
本当は突撃爆弾野郎や血まみれ花たまごにしたかったんです。でもどうしてもスーさん反対するので短くして花たまごになりました」

「…」


ほわほわとした笑顔で嬉しそうに話すティノ君
その凄まじいネーミングセンスに驚いて動けないで居る私の肩をポンポンとスーさんが叩いた


「スーさん…。かなり…いや、ものすごく譲歩したんだね…」

「ん。でもティノが喜んでっから…」

「あれ。どうしたんですか二人とも?」

「いや、なんでもないよーアハハ…。さて。それじゃあお先に失礼するね」

「はい!お疲れ様です」

「気ぃつけて帰ぇれ」

「お疲れ様ー」


さーて帰ってご飯作らなきゃ。ギルベルトお腹すかせてるだろうし


「あ…。そういえばコーヒーきらしてるんだった」


しょうがない。買って帰るかー
そういえば友達がこの辺りにピアノの生演奏が聞ける、穴場のカフェがあるとか言ってたなぁ

よし、行ってみよう


カランカラン


外れた道の一角にある穏やかな雰囲気のカフェ
夕方でお客さんも少ないのか、中からはピアノの綺麗な音色が響いていた


「わー。いい雰囲気のカフェ」


なんだかいい場所に巡り会っちゃったかも


「あの、すみません。コーヒー豆って売ってますか?」


入り口近くに居たエプロンをつけた女性に声をかける


「…」

「…あのー」

「えっ!?あ、申し訳ありません!!ちょっと余所見してて…」


う、わぁ〜〜!!すっごい美人だこの店員さん!!
欧州の人だろうか、肌は白くて足はスラリと伸びてる
オマケにこの胸のでがさと言ったら…!!


「いえ。大丈夫ですよ。このお店コーヒー豆って置いてますか?」

「ええ、ありますよ。こちらへどうぞ」


美人な店員さんは店の奥まで案内をしてくれた

店内の中心に置いてある白いグランドピアノ。
眼鏡をかけた、これまた顔の整った気品がある外国人の男の人が演奏をしていた


「うわ〜。凄く上手ですね、あの方」

「えぇ。このお店の専属ピアニスト、と言いますか…。まだ駆け出しの方らしくて、ここで毎日のように演奏してくださってるんです」

「へぇー。いいお店ですね」

「ありがとうございます。コーヒー豆、どれになさいますか?」

「うーんと…じゃあジャーマンブレンドで」

「こちらで挽いたものでいいですか?」

「はーい」

「少々お待ちくださいね」


にっこり笑って店員さんはコーヒー豆を挽いた
気が利くし美人だし言葉遣いも丁寧だし…完璧じゃないですか…!!
こんな人本当に居るんなんて思いもしなかったよ
帰ったらギルベルトに絶世の美人と会ったって自慢してやろう!!


「お待たせいたしました」

「ありがとうございます」

「またのご来店お待ちしていますね」

「はい!今度はゆっくり演奏を聴ける時にでも」

「是非」


クスクス笑って美人さんは軽く会釈した


コーヒーも買えたし早く帰ってご飯作らないとね〜


カフェから出て、なんとなく窓から店の中を見た
さっきの美人な店員さんが頬を染めてピアニストの人と話をしている

ほぁ〜…なるほどねぇ…!!

またこのお店に来るのが楽しみになってきたねぇ、うふふふー


家に帰って早速ギルベルトに美人の店員の話をすると、無愛想な言い方をしながらも「胸は?どんだけあんだ?」など興味深そうに聞いてきた
どうやらギルベルトは巨乳好きらしい…

私の胸辺りをじっと見て「はぁ…お前がもっと胸があればなぁ」なんて呟いたので、今夜寝耳にビールの刑を決行する事を心に決めた


.






補足です。名前さんは大手家具メーカーの企業で働いています。
北欧家具のデザインなどを担当していて、スーさんやティノ君は同期の同僚です。
けっこうがっぽり稼いでます。








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