重い…まるで大きな石が乗っているかのように、重い…


「んー…」

「やぁ名前!!もう昼だぞ☆」

「へ…?アルフレッド君?」

「名前、なんなんだいあのリビングの有様は。散らかりすぎて足の踏み場がないよ」


ちょっとまて、落ち着け。
何でアルフレッド君が居るんだっけ?
そうだ、今日来るって約束してたもんね。
じゃあなんでアルフレッド君が私の上に乗ってるの?あとリビングが散らかってるって…


「あー…ともかく下りてくださいアルフレッド君」

「やーなこった」

「こいつ…!!あ、そうだ!!ホットサンド作るんでしょ!?このままじゃ作ってあげられないよ」

「えーそれも困るけど名前の上乗り心地いいしもう少しこのままでいいじゃないか」

「よくねーよ」


睨みをきかせてみるものの「その顔ぶさいくだぞー!!」とゲラゲラ笑った。
ほんとに空気読めないなこの子は…!!
力を込めてアルフレッド君の胸板を押すけどなかなか引いてはくれない


「名前って女の子なのに力強いな。女ボディービルダーになれるんじゃないかい?」

「ならないって!いいからそこどけ!股間蹴り上げるよ!?」


サーっと蒼ざめたアルフレッド君は瞬時に私の上から降りた。


「名前って怒ると怖いな…」

「これがギルかアーサーだったら迷わず蹴り上げてるよ」


それにしてもよく寝たなぁ…
もう昼過ぎか
あれ?そういえば私昨日はリビングで寝ちゃってた気がするんだけど…。
アーサーが運んでくれたのかな。ギルなら放っておくだろうし。
う…旅行で食べ過ぎて体重増えてたんだよね…重くなかったかなぁ…


「あれ?マシュー君は?」

「リビングの片づけしてると思うんだぞ」

「へ…?」

「だから言ったじゃないか!リビング凄い有様だぞ!!」


も、もしかして…!!


「てんめぇらぁああああ!!!」

「あっ!!名前さんおはようございます!!勝手にお邪魔してごめんなさい…!」

「あ、マシュー君おはよ〜!全然構わないよー!…って、なんじゃこりゃぁあああ!!!」


ビールの缶とワインのビン。オマケにスルメやピーナッツ類のおつまみが床に散らばった室内。ソファーは引っくり返ってるし置物も倒れてるしクッションは破れてるし観葉植物が引っくり返ってるし…!!
ふと目線を下げるパンツ一枚しか身に纏っていない野郎二人が転がっていた。


「あの、すみません名前さん…。散らばってるお菓子だけでも片付けようと思ってたんだけど…」

「いいんだよマシュー君。ありがとね」

「でも…」

「あとはやるから」


眠っているギルとアーサーのわき腹をおもいっきり蹴り上げる。数回転して転がった二人は呻き声をあげながら目を覚ました。


「いったぁあ〜…痛すぎるぜー…」

「んだよ今の…襲撃か…?」

「何が襲撃だこの元ヤン」


体を起こしたアーサーの背中に蹴りを入れる。ぐふっと前のめりになったアーサーはそのまま床とキスをする羽目になった。


「起きろ。そして三秒以内にこの部屋を元に戻せ」

「はぁ〜?何言ってんだよお前」

「おいプー太郎。お前居候の分際でなにご主人様の家荒らしてくれてんの?いっぺんヤキ入れないと分かんないみたいだなお前は。それとも何?M?Mなの?だったらこれもお望みだろーがよ!!!」

「いでっ!!やめっ…!!ぎゃぁああ!!!」


逃げようとするギルの肩を掴んで膝で股間を蹴り上げる


「おいそこの眉毛…」

「ヒッ…!!」

「私がシャワー浴びてくるまでにここを綺麗に掃除しろ。勿論お前ら二人でな。アルフレッド君とマシュー君を手伝わせてみろ。次は本気で潰すから」

「はい…」


ギルを床の上に放り投げてリビングを後にする。


「マシュー…」

「なに、アル…」

「俺、名前だけは怒らさないようにする事を誓うよ」

「僕も…同感」



―――


はぁーサッパリしたー!!
リビングは綺麗になってるかなぁ
さっきから15分しかたってないか…
はぁ〜…


「シャワーあがったよー」


髪をタオルで乾かしながらリビングに出ると、ビクッと体を振るわせたアーサー。
だいたいは片付いてるけどまだお菓子が散らばっている。
ギルはさっき放り投げた場所で倒れたままだった。


「あのっ…一人でやったんだけど!!あの、その…ごめんなさい」

「はあぁぁー…」


涙目で震えるアーサーを見ていたら怒りのメーターがぐんと下がっていくのが分かった。


「ったく…私も手伝うから早く片付けちゃおう?お腹もすいたし」

「あ…あぁ!!」


嬉しそうな顔しちゃって…
仕方ない、私も手伝うしかないよね。ギルは相変わらず死んでるみたいだし。


「アルフレッド君とマシュー君は私の部屋でくつろいでて?すぐに片付けてホットサンド作るからね」

「「了解でありますボス!!!」」

「ボス…?」


それからべたついた床を綺麗に磨き、リビングはピカピカになった。
後の片付けはアーサーに任せて私はキッチンでホットサンドを作る。
お腹すいたな〜


「お待たせー!ホットサンドできたよー!」

「本当かい!?お腹ペコペコで背中とくっついちゃいそうなんだぞー!!」

「アルのお腹ぽよぽよだからくっつかないよ〜」

「こっちも掃除終わった」

「おつかれ。そこに転がってる奴起こしておいてくれる?」

「…分かった」


戸棚からアーサーお気に入りの値の張る紅茶を出して紅茶を作る。
アルフレッド君はコーヒーがいいよね。


「はいどうぞー」

「「いただきまーす!」」

「悪いな、その…」

「いいから。ギルは?」

「あぁ、起こしても反応しなかったからそのままにしておいた」

「ふーん…。それにしてもなんだったのあの散らかりようは。私が寝た後から正確に説明しろ」

「えっと…お前が寝た後、お前をベッドまで運ぼうとしたらあのプー太郎がつっかかってきやがって…ひとまずお前を運んでからリビングに戻ったら何故か飲み比べになったんだよなぁ。それからの記憶はねぇ…」

「あぁそう言う事ですか。だいたい予想はついた」

「あの、その…悪い…」

「ほんとに君は酒癖が悪いなぁ。こんな大人にだけはなりたくないんだぞ」

「アルフレッド君とマシュー君は大丈夫だよ。アーサーとは違って元ヤンでも酒癖悪くもないしね」

「うっ…」

「こんなのが元、兄だっただなんて信じたくない事実だよ」

「今”元”を強調したね。まぁ切っても切れない縁ってのはあるから仕方が無いよ。仮にも”元”お兄ちゃんだしね」

「お…お前らなぁ…!!!」

「何?酔っ払って人の部屋めちゃくちゃにしたアーサー・カークランドさん」

「…なんでもないです」


その後何事もなかったのようにのんびりと会話を楽しんだ私達。
夕方になり、アーサーは二人を家まで送って行くと言ってアルフレッド君とマシュー君と一緒に部屋を後にした。
夕飯の支度中、「う…俺の、俺の大事な…」とうめき声をあげながらむくりと起き上がったギルは私を見て小さく悲鳴をあげて部屋の隅っこで縮こまってしまった。
ちょっとかわいそうになってきたので、優しく「おいでー」と声をかけると恐る恐るキッチンまでやって来て、何をするでもなくただ近くで立っていた。

犬みたいでかわいいなぁ。
ぽふぽふと頭を撫でて「もう怒ってないよ」と伝えると「そ、そうだよな!!別におれ悪いことしてねーし!?つかお前もあれぐらいでキレるなんて短気すぎんだよなーケセセ!!」と調子に乗ったので頭を叩いた。

…なんだか今日はゆっくり休めなかったなぁ


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