「それじゃあギルベルトさん。おやすみなさい」

「あぁ」

「…まだあすた」


名前を部屋まで運び、布団で寝かせると二人は小さい声で挨拶をして帰って行った。
ったく、世話の焼ける奴だぜ…


「俺はまだ飲み足りねーけど…」


ちらりと名前を見ると、気持ち良さそうに眠っている。
視線は自然と横にぴったえりとくっついている俺用の布団に移った。
って、馬鹿か俺は…!
今更そんなの気にする必要ねーっての!毎日同じ家に暮らしてんのに…。
出かける前に何度もしつこくアーサーの奴が「変な気起こすんじゃねーぞ」と睨みをきかせて言っていたのを思い出す。
ったく、ほんと鬱陶しいぜあのヘタレ。


「俺も寝るか…」


これじゃあテレビもろくに見れねーしな。
さっさと寝れば明日の朝も辛くないだろうし。

電気を消し布団に潜り込むと、隣で「ん…」と小さく声をあげた名前が寝返りを打った。
ちょうど向かい合うようになって、なんだか変な気分になった…。


「平常心、平常心…!!」


月明かりに照らされた名前の寝顔がやけに目につく。
次第に心臓が激しく脈を打った。
いや、落ち着けよ俺…!!慣れてるだろ!!何度もこんな事はあったじゃねーか俺!!
何を今更…たかが名前だぜ?
貧乳で口が悪いいつもの名前で…

ダメだ、心臓の音がでかくなる一方じゃねーか…!
深呼吸だ深呼吸!ヒッヒッフー…


「んー…」

「うお…!?」


またもや寝返りを打った名前は、足を布団から放り出し俺の方へと近づいた。
浴衣で乱れてしまった裾からは白くスラリとした足が丸見えになり、胸元なんかも肌蹴て…って、うおぉおおおおお!!!
何反応してんだよ俺ぇええ!!これは名前なんだぜ!?勘違いすんなよ俺!!
べべべべ、別にこいつの短い足とペッチャンコの胸元ぐらい…!!



すみません、目が離せません…。
あぁ、俺も末期だよな…
欲求不満か?確かにこいつのとこに来てからそういった事はやってねーけど…って言うかそんな気すら起こらなかった。
以前の俺なら考えられねーよな。
ほんと、生温くなったもんだぜ。俺も。


「くそっ…」


届きそうで届かない距離…。
手を伸ばせば触れる事だって出来るのに触れられない。
ダメだ。あの眉毛にボコられてーのか?まぁ負ける気はしねーけどな!
だけど、手を出しちまったら後には戻れない。その前にぶん殴られて追い出されるか?
どっちにしろまだ頭の整理ができちゃいないんだ。抑えろ、俺。やればできる子だってこいつもよく言ってるじゃねーか…!

腹の底から湧き上がって来る何かを必死に抑えて名前に布団を掛けなおした。
よし、これでだいじょう…


「んー…あつい」

「っておおおおおい!!!」


こいつさっきより足出して…!!って、見えてる見えてる!!前はだけすぎなんだよお前ぇええええ!!


その後も何度も何度も布団を掛けなおすが、「熱い」と布団を蹴飛ばし足を放りだす名前。
布団を頭から被って何度も眠りにつこうと試みたが、隣にある暖かい体温がどんどん近づいてきているのが気になって眠れやしねぇ…


え…、俺また徹夜決定?






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