「やっほーギル。お兄さんが遊びにきt「帰れ」


バタン


「ちょっとぉおおお!!なんで閉めるの!?なんで閉めるの!?遊びに来たって言ったよな俺!?」

「今それどころじゃねーんだよ髭!!帰れ!!塩まくぞ塩!!」

「何この子反抗期!?いつのまにそんな年頃になっちゃったのお前!!」

「いいから出て行け!!俺は今テメェなんかに付き合ってる暇はねーんだよ!!」

「いいじゃん名前ちゃん仕事で居なくて暇なんだろ!?俺の相手してよお願い!!」

「チッ…めんどくせー奴がきやがったな、まったく」

「お前なんかキャラ変わった?」


時刻は午後1時を回ったところだ。
今日は本田と一緒にゲームをする約束をしてたから、もう三時間近くゲームを続けている。
名前の奴は仕事だし誰にも邪魔されないでゲームを堪能できると思ったのに…!!
よりによってフランシスの野郎が来るなんてついてないぜ、俺!!


「あれ〜?見かけない顔だね〜」

「始めまして。私は本田菊と申します」

「ホンダキク?どっかで聞いたことあるような名前だなぁー…。俺はフランシス。ギルベルトの大親友でーす」

「適当な事いってんじゃねーよ髭!俺はゲームしてんだから邪魔すんなよ」

「うっわー懐かしい。このゲーム機64じゃん。マリオカート」


テレビの中とゲーム機を交互に見て目を輝かせたフランシスは本田の横に腰を下ろした。


「フランシスさんはゲームをやられるのですか?」

「昔はけっこうやってたなぁ。ギルともやってたし」

「格闘系な。まぁ格ゲーで俺の右腕に出る奴はいないぜー!」

「実際は一番弱いのにな〜」

「んだとコラァ!!俺が本気でお前殴ったらお前10メートルは吹っ飛ぶぞ!?」

「そんなの甘い甘い。お兄さんがお前殴ったら20メートルは吹っ飛ぶって」

「じゃあ俺は30メートルだ。30メートルぶっとばしてやる!」

「そんな漫画の中でしかありえない設定には無茶がありますよお二人とも。フランシスさんも参加されますか?」

「いや、俺は見物することにするよ」


俺はクッパを、本田はピーチを選らんでレーシングゲームが始まる。


「やりましたロケットスタートォオ!!!」

「ぬわっ!!お前それどうやったらできんだよ!?」

「タイミングですよタイミング!!さぁピーチ嬢今回も素晴らしい走りを見せてくださいね!!」

「ちくしょー女のくせに生意気だぜ!!」

「おいおいギルベルト。レディーファーストって言葉あるだろー?だからお前はモテないんだよなぁ〜」

「黙れ髭!!!」


結局何度やっても本田には勝てねぇ…!!
こいつ近道とか熟知してやがるからなぁ…今度俺も攻略本を読んで勉強するしかねーな


「腹減ったぜー」

「お前昼食べてないの?」

「そういやまだだな。キッチンに昨日の残りがあると思う」

「お前…ちょっとは自分でやろうって気は…ないよな。お前料理ダメだし…」

「最近はできるようになってるっつーの。卵われるんだぜ卵!」

「あらーそれは凄い」

「嘗めてんなテメェ…!!ったく…本田も食うか?」

「いえ。私は毎度のことながらおにぎりを持参してまいりましたので結構ですよ」

「お兄さんは食べてきたからいいよー」

「お前に聞いてねーよ!!」


ったくめんどくせぇ野郎だぜ…
えーっと、確か冷蔵庫にサラダと鍋にスープがあるとか言ってたよな。
あとはうどんでも作って食うか


「フランシスさん。つかぬ事をお聞きしますが…」

「んー?なになに?何でも応えちゃうよ」

「フランシスさんはギルベルトさんと大親友だということは分かったのですが、名前さんとはいつお知り合いになられたので?」

「あぁ…話せば長くなるんだけどなぁ…」


夜道で名前を追いかけまわした事件からはじまり今に至るまでの経緯を本田に話すフランシス。
終始何も言わずひたすら聞いていた本田だったが、フランシスの話が終わるとゆっくりと立ち上がった。


「フランシスさん」

「な…なに…?」

「私はこの二年ほど…名前さんを実の妹のように思ってまいりました。私を慕ってくださる名前さんの可愛さと言ったらなんとも言えないものなのです。正直ギルベルトさんがここに来られた時も少々不安はありましたが彼はヘタレなので間違いはないだろうと今も踏んでいます。むしろ素敵なネタを美味しくいただいております。彼なら名前さんを任せても大丈夫だと信頼しているんですよ。しかし名前さんを軽々しく追い掛け回しあろう事かベタベタと触るとは不届き千万!!この本田菊が今ここで成敗してくれましょうぞぉおおおお!!!!」

「ぎゃぁああああ!!刀!!刀どこから出したのぉおお!?」

「本田ぁぁああ!?落ち着け!!落ち着け本田!!この件に関してはもう眉毛野郎とあともう一人で嫌と言うほどこらしめてるって!!な!?だからここで刀を振り回すんじゃねぇええ!!!!」


どこからか刀を取り出し今にもフランシスに振り下ろそうとする本田を必死で止めなんとか宥めようとするものの、本田の目は血走っている…
ほ、本田ってこんな奴だったか!?
名前の事そんな風に思っていたとはな…
てか俺信頼されてたのか…。断じて認めるわけではないがヘタレだからっ安心、てなんか複雑だぜ…


「どいてくださいギルベルトさん。卍解しますよ?」

「するな!!落ち着け本田!!こんなとこで暴れたら名前のやつがまたぶちギレるぜ!?」

「それも…そうですね」

「それにあいつ自身こいつを充分蔑んでたし!?前まで変態髭野郎とか呼んでたけど今はちゃんと名前で呼んでるしあの事は許したんだ!!だから刀をしまえ本田!」

「あの名前さんが許されておられるのなら…。分かりました。しかし次は無いですよ」

「俺ってなんでいつもこうなんだろ…」

「お前が変態行為をするからだろーが!!」


チッ…フランシスの野郎のせいで無駄な体力使ったぜ…。

その後は何事もなかったかのように時間は流れ、いつの間にか本田とフランシスも打ち解けていた。
まぁフランシスもけっこう漫画好きだったりするし気が合うのかもな。



「ただいまー!」


名前が帰ってきた。
もうそんな時間かよ


「疲れたー…って、本田さんにフランシスさん。来てたんですかー」

「えぇ。今日はギルベルトさんとゲームをする約束をしていましたので上がらせていただきました」

「そうでしたか。フランシスさんは?」

「俺は名前ちゃんに会いに…じゃなくて暇だったからこいつに会いに来たんです、はい」

「何故敬語。まぁいいや。二人とも晩御飯食べていきます?」

「えぇ。ありがとうございます」

「勿論。じゃあお兄さん名前ちゃんを手伝っちゃおうかなー…って、菊ぅうう!!そんな目で見ないでお願い!!」

「何やってんの本田さん…」

「なんでもありませんよ名前さん」


はぁ…なんだか今日は疲れたぜ…。
飯食ってさっさと寝るかー


「あれ…ギルー。お風呂洗っておいてくれた?」

「あ…」

「忘れてたなこの野郎…仕事もしないで一日ゲームとはいいご身分だね?」

「ちがっ!!ちょっと色々あって疲れてたんだよ!!今すぐやりゃあいいんだろやりゃあ!!」

「ちゃんとタイルも磨くんだよ」

「ったく、いちいち細かいんだよ…」

「…何か言った?」

「いえ、何も」


ちくしょー逆らえねぇええ!!
いつか、いつか立場逆転してやるんだからなぁあああ!!
あいつが家の家事ぜーんぶやって、俺は仕事して…って、それじゃあまるで…
いや、いやいやいやありえねーだろ!!
誰があんな奴!!養ってもらっても養ってやる気なんてさらさらないぜー!!
まぁ、もうちょっと控えめな優しい性格になってSなところを直すっつーんなら養ってやらない事もないけど…

「お、お前なんてこっちから願いさげだぜー!!」

「はぁ?何いきなり大声あげてんの。気持ちわるーい」

「きもっ!?てめっ!!誰が毎日掃除してやってると思ってんだ!!」

「なら誰がお前を食わせてやってると思う?いいからさっさと風呂掃除してこいプー太郎」

「んだと…!!ほんっと口わりーなお前!!そんなんだからモテねーし言い寄ってくる男もいないんだよバーカ!!!」

「よーし。久しぶりにやるか」

「え…?ちょっやめっ!!」

「耳にビールぶちこまれるのとベランダから吊るされるの、どっちを選ぶ?」


まさにデッド・オア・アライブ。


「りょ、両方嫌です」

「わかった。両方ね」

「ちがっ!!やめろ!!ごめんなさい謝るからやめぇええええ!!!」


薄れ行く意識の淵で興奮交じりに一眼レフカメラのシャッターをきる本田と、やらしい顔でによによと笑っているフランシスの顔が見えた

ちくしょう、いつか…いつかこいつに立ち向かえるようになってやる…!!
今日は無駄な体力を使って疲れてるだけなんだ!!次は、次はぜってーやり返してやるからなぁあああ!!!


「今さっきの言葉、反省したら助けてあげるからね。それまでそこで頭冷やしてろ」

「ほんとお前はレディーの扱い方が分かってないよなー」

「いえいえ、とってもナイスです。ギルベルトさん!」


何がナイスだ。

冷たい夜風の中逆さ釣りにされた俺。
月の光がまぶしすぎるぜー…
隣のベランダに出てきた眉毛野郎に気づかれて鼻で笑われた。

なんか、いっそ死にたい。






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