「で、どういう事なんですか」

「菊は我の弟あるよ。この辺に住んでいる事と名前の家に入り浸っている情報は掴んでたある」

「弟じゃないです」

「何年も姿をくらませて…健在を確認できるのはお前の描いている連載が続いている事のみ!!こんな弟で情けないあるよ!!」

「弟じゃないです」

「菊、我のとこに帰るある。皆で一緒に暮らすあるよ!!」

「だーかーらー!!勝手な事を言わないでください!!」


トン、と小さく机を叩いた本田さんに体をピクリと反応させる耀さん。
いや、本当に何がなんだか…
つまり本田さんは耀さんの弟だったって事?でも本田さんは否定してるし…。
本田さんに向かってキャンキャンと吠えるヨンス君を香君と一緒にギルがアーサーの家へ連れ出した。
私も向こうに行きたかったよ…


「まぁまぁ落ち着いてくださいお二人とも。まず事情を教えてください。お二人はどんな関係なんですか?」

「…昔、一緒に暮らしていた…兄弟のようなものあるよ。皆で仲良く暮らしてたのにある日いきなり菊は家を出て行ったある。漫画家をしていたのは知ってたあるが行方が分からないくて…。名前に初めて会った時菊の描いている漫画の主人公に似ていると色々と睨んでいたあるよ。菊は昔から自分の身の回りからキャラ設定とネタ集めをする傾向があったあるからね」

「名前さんを利用して探りを入れたと言うのですか…?」

「ちげーある。名前からは一切お前個人の情報を聞き出した事はねーあるよ。全て我の情報網でお前の居場所を調べたある」

確かに私は耀さんと本田さんが顔見知りだなんで知らなかったし、耀さんに本田さんの事を聞かれた事もない。
だけど本田さんの描いている漫画の主人公と似ているなんて理由で…
そういえば初めて耀さんに会った時「似てる」だとか呟かれたようか…。

耀さんは、ずっと本田さんの事が心配で探してたんだろうな…。


「結果的に名前さんとの出会いをきっかけに彼女の身の回りを探っていたと言う事ではないですか!!そんな事をするような方と共に暮らすなど私にはできません」

「いや、本田さん…私の事はいいですから…。穏便に話し合って…」

「名前さんは黙って私達の話を聞いて居れば良いのですよ!!」

「そーあるよ!!」

「あの、できれば私もアーサーのとこ行ってきていいですか」

「「却下」」


いい加減にしてくれないかなこの人たち…。というか何故私の部屋じゃなくて他の場所に行けばいいのに…。


「ともかく私はもう貴方の小さな弟でもありませんし、立派な職にもついています。耀さんの元へ戻る気はありませんからね」

「家族が一緒に暮らすのは当たり前あるよ。湾が聞いたら泣くある」

「それは…」

「いいから、もどってくるある。今の仕事だってお前の好きなようにやらせてやるし三食食わせてやるあるよ」

「耀さん…」

「何年も空いていた隙間を埋めるのは難しいかもしれねーあるが、少しずつ昔の関係に戻りたいあるよ、菊…」


あれ…仲直りムードなのかな…。
そっか、本田さんは耀さんの所に戻るんだね…。
だけどこの二人が兄弟だっただなんてビックリだなぁ…。


「さぁ菊、そうと決まったら早速荷物を纏めるあるよ!!」

「…」

「本田さん、新しい生活で頑張ってください。家は遠くなるけど遊びに行きますから」

「やっぱりやめます」

「はぁああああああ!?」

「いや、だって私今の家好きですし。それに名前さんのマンションに近い場所にあるという理由でおいしい展開に直面する事が多いというのに…離れてしまっては意味がありません!!美味しいネタを、美味しいネタを逃すなんてこの私にできるはずないじゃないですかぁあああああ!!!」

「結局それですかぁあああ!!!」

「これが私の人生です!!何か問題でも!?」

「いやいや大ありですから!!」

「何言ってあるか!!我と一緒に暮らすある!」

「名前さん無しなど…ネタ無しの人生など無意味です」

「お前…そこまでして名前が…漫画がが書きたいあるか…!!」

「これが私の生きる道です」

「くっ…。もうしらねーある、お前なんてどうにでもなればいいあるよぉおおおお!!」


叫んだ耀さんはちゃっかりお菓子をいくつポケットにつっこんで玄関に走った。


「おーい、話合いおわったかy「ヨンス!!香!!帰るあるよ!!」

「ラジャー」

「分かったんだぜ!!」

「菊、今度あった時は容赦しねーあるからな!!」


…あ、行っちゃった…。


「なんだったんだろう、あの人…」

「さぁ…」

「何がどうなってんですか本田さん」

「家族の問題ですよ。さぁ、しばらくここで匿まわさせてくださいね。原稿におわれていますので…」


本田さん、貴方って人は…。
まぁ私は全然良いんですけどね。
耀さんも可哀想だなぁ…。

夜かかってきた電話は耀さんからで、役3時間近くも本田さんの小さい頃の話や愚痴を聞かされる羽目になってしまった。
私の身の回りって兄弟仲悪い人達が多いなぁ…。

あの二人、この先なんとかなればいいんだけど…。




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テーマ「人外ファンタジー」
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