「おい名前、アルフレッドとマシュー見なかったか?」 「アーサー。おぉ、ずいぶん短時間で上手くなったね」 「まぁ俺運動神経いいしな」 「アルフレッド君とマシュー君なら少し前に会ったっきり見かけてないよ。居ないの?」 「あぁ…。ったく、せっかくだから写真を何枚か撮ってやろうと思ってたのに…」 「あー…またアーサーの部屋のベッドの下に隠してある弟アルバムに貼るんだね」 「何でそれ知ってんだよバカアァ!!」 「私とアーサーの仲でしょうがー」 「お、俺とお前の…仲…?ば、馬鹿…人前でそんな恥ずかしい事言うなよ…」 何発か殴ってもいいかな、この眉毛。 「さーて、私もちょっと上の方から滑ってこようかな。スーさんとティノ君も一緒にどう?」 「僕はちょっと休憩してからにします」 「んだな」 「シー君ココア飲みたいですよ眉毛」 「あ、ピーター君は僕達がちゃんと見てますからアーサーさんは滑ってきてください」 「いや、ずっと面倒見てもらうのは悪いし…」 「大丈夫ですよ。僕もスーさんもピーター君大好きですから」 「悪いな」 「それじゃあ滑りに行こっか」 嬉しそうなアーサーと一緒にリフトに乗り込む。 リフトから遠くの方でエリザとアイス君が楽しそうに話をしているのが見えた。 うーん、アイス君め…年上のお姉さんキラーだな…。 「うおっ!?」 「おっと、大丈夫?」 「わ、悪い…」 リフトからの着地にバランスを崩したアーサーの腕を掴み体を支える。 やっぱりまだちょっと慣れないよね。 「そういえばお前は普通に滑れるみたいだけどよくやってたのか?スキー」 「うーん、っていうか私の実家も田舎だから雪降るしね。少し足を伸ばせばスキー場もあったし」 「なるほどな…」 「そんじゃ適当に滑ろうか」 勢いをつけて傾斜を滑り降りれば、冷たい風が頬に当たって気持ちよかった。 うーん、久しぶりだなぁこの感じ。 「あー!!おったおった!!名前ちゃーん!!」 「トニーさん?わっ、ちょっと待ってそこどいて!!こんな場所じゃ急には止まれないから!!」 「え、何?なんて言ったん?って、ゲファァアッ!!!」 「アホだろお前…」 「あいたたた…」 いきなり横から飛び出してきたトニーさんに、スピードは緩めた物の正面からぶつり下敷きにしてしまった。 あー…またやってしまった… 「ご、ごめんトニーさん!!」 「いや、今のはこいつが悪いぞ。アホだな」 「…ロヴィーノ君…」 「名前ちゃんが、俺の上に…!!」 「しかもなんか変な世界入ってやがるぞこいつ!!」 「あぁごめん、今退くね」 「あかんっ!!どうかそのままに!!どいたらいかんよ名前ちゃん!!」 「ほらよ」 「ありがとうロヴィーノ君」 「アホォオオオ!!何すんねんロヴィィイイ!!」 ひょいっとロヴィーノ君に立ち上がらせてもらった。 なにやらトニーさんは一人で「うあああアホォオオ」と叫びながら膝をついて雪の敷き詰められている地面を叩いている。 「おい名前、大丈夫か!?」 「あぁごめんアーサー。大丈夫だよ」 「なんでこいつはこんな事になってんだ?」 「トニーさん?」 「無視しようぜ無視。それより名前、俺と一緒にあっちで熱いコーヒーでも飲まねーか?奢ってやるよ」 「いや、まだ滑ってる途中だしね」 「いいだろ別に。滑ってばっかでつまんねーぞちくしょー…」 「ナンパでもすれば?」 「さっき失敗した」 「あ、失敗したんだ」 しょうがないなぁ…。 まぁ結構長時間外に居たしそろそろ休憩してもいいか。 「それじゃあ休憩しよっか。アーサーはどうする?」 「俺はアルフレッド達探してくるよ。おいお前、名前に変な事したら後でどうなるか分かってんだろうなぁ…」 「ヒィッ!!」 「何かしてみろ、明日は来ないと思えよ。それじゃあまた後でな」 「なんだろうねあのヤンキーは」 「こえーぞちくしょー…グスッ」 半べそをかくロヴィーノ君と雪の上を転がるトニーさんを連れて施設の中に入ると、暖房の前で甘ったるい匂いをったココアを飲んでいるアルフレッド君の姿があった。 「あれ、こんなとこに居たのアルフレッド君!?」 「あぁ!汗が引いたら少し冷えちゃったから温まりに来たのさ。それより名前、いつになったら俺と一緒に滑ってくれるんだい?君に俺のかっこいいスキーテクニックを見せたいのに!!」 「それじゃあコーヒー飲んだ後にね」 「俺が買ってきてやるから座ってろよ」 「ありがとロヴィーノ君」 「俺の分も頼むでーロヴィ!」 アルフレッド君達の傍に腰を下ろして一息をつく。 アーサーにアルフレッド君達がここに居る事伝えてあげないとなぁー…うーん、まぁ後でもいいか。 「やっほー名前ちゃん。楽しんでるみたいだね」 「なんやお前こんなとこにおったんかいな」 「そういえばフランシスさんの姿見当たりませんでしたね」 「お兄さんは暖かい場所で可愛い女の子たちと素敵な時間をさ。うふふ」 「気持ち悪いわぁこのオッサン」 「こんな場所に来てまでよくやりますよね」 「君ちょっと旅館の部屋で寝てきたらどうだい?明日帰る時には起こしてあげるんだぞ」 「なんでお前ら俺にだけそんな冷たいの!?」 「フランシスさん、落ち着いて…」 「あれ、マシュー…お前いつから居たの?」 「ずっと居ますよぉお〜!!」 うん、居たよね。アルフレッド君の傍に居たよね。 ロヴィーノ君が買って着てくれたコーヒーを飲んでホッと溜め息をつく。 そういえばギルはまだ目ぇ冷まさないのかな。 ルート君大変だよねぇ…。 「名前」 「あれ、ルート君?ギルはもう大丈夫なの?」 「あぁ、目を覚ましてまた元気に外に出たぞ」 「どんだけアホなのあいつ」 「プーちゃんやもん、しゃあないわー」 「本田と一緒に何かをすると言っていたが…」 「そういえば本田さんの姿も見当たらないよね。あの二人何企んでんだろ…」 あの二人の事だ、どうせろくでもない事してるに違いない。 「んー?なんや外が騒がしいなぁ」 「そういえば…。何だろう。何かパフォーマンスでもやってるのかな」 「何でって!!見に行こう名前 !!」 「えー、まだコーヒー飲んでる途中なんだけど…」 「俺はもう飲み終わったんだぞ!!レッツゴー!!」 「どんだけゴーイングマイウェイなのこの子!!」 飲みかけのコーヒーをテーブルに置いたままアルフレッド君に手を手引かれて再び外へ。 なにやらあっちの方に人だかりができてるけど…。なんだろう。 「誰かがすごいテクニックを見せてるみたいじゃないか」 「へー…いったい誰…って、スーさんとノルさんとアイス君!?」 「おぉ!!君の同僚達か!!なかなかやるじゃないか!!」 「まぁ北の人たちだからねー…。スーさんボードも上手だなぁ…」 途中にある障害物などを難なくかわして軽くジャンプをきめるスーさん。 かっこいいなぁ…。 アイス君もノルさんもスキー上手だし。 「名前さーん!」 「あ、ティノ君。ピーター君も」 「スーさんたち凄いですよねー!やっぱりスーさん達も雪国の血が騒ぐんだなぁ…」 「そ、そうなの?」 「名前、俺も行ってくるよ!!俺のかっこいいテクニックを見ててくれ!!」 「あーはいはい。ここで見てるからねー」 「シー君も行きますよ!!」 マイボードを持って楽しそうに走って行く二人。 子供は元気だねぇ…。 「すげーなぁあいつら」 「流石ですねぇ、皆さん」 「ギル!!どこ行ってたのー。本田さんも」 「二人で雪のガン●ムを作ろうと頑張っていたのですが…デンさんがぶつかって壊れてしまったんです」 「ハハハ!!止まんねがったっぺー!!」 「せっかくお台場に負けねぇようなやつ作ろうと思ってたのによぉ」 「そんな事してたの二人とも!?普通に無理だからね!!」 やっぱりろくでもないことしてたこの二人…。 普通に遊べないのか普通に。 「それにしてもすげーなあいつら」 「北欧出身だからねー。雪国じゃん」 「雪国といえば…今回イヴァンさんは来られなかったのですね。あの方も雪国大国の方では…」 「それが忙しいらしくて連絡つかなくってさ。一応ここの場所は教えたんだけど…」 「まぁあいつは居ない方がいいんじゃねぇ?なんか怖いし」 「ねぇ、今僕の事呼んだ?」 「いや、呼んでねーぜ」 「……え…」 「呼んだよねー、今」 「だから呼んでなっ………って、イヴァンンンンンンン!!???」 「うわぁあああああ!?」 「ギャァアアアア!!」 「ふふふふっ!呼ばれて飛び出て雪国の僕登場だよ☆」 ギルの真後ろに聳え立つ壁…じゃなかった、イヴァンの姿にその場に居た全員が悲鳴をあげた。 え、いやいや、まさか…。 「え…イヴァン…?」 「そうだよー。今こっちに着いたんだ。夜までに到着できて良かった〜」 「ええええ!?ビックリしたー!!来れるなら連絡してくれたら良かったのに!!」 「仕事のついでに一人でこっちに来たんだー。皆を驚かせたくって」 「充分驚かせていただきました…寿命が100年ほど縮まりましたよ、もう」 「あと何年生きる気なんですか本田さん」 イヴァンが来てくれたなんて、本当にビックリしたなぁ…。 でも来てくれてすっごく嬉しい。 「イヴァンちょっと痩せたんじゃない?」 「そうかなぁ。最近ちょっと忙しくてね。だけど今日を楽しみに頑張ったんだ、僕」 「偉いねー。イヴァンも滑ってくる?あ、スキー板なんかはレンタルできるよ」 「僕はいいよ。ここで皆を見てるから」 「でもせっかく来たんだしさぁ」 「僕雪ってあんまり好きじゃないんだ。僕の国ではずっと降ってるし」 「そっか。それじゃあ私もイヴァンと一緒にここで皆を見ておこうかな」 「名前は滑ってきていいんだよ?」 「ううん、イヴァンとお喋りしたいしね」 「えへへ」 「そんじゃあ俺様が滑ってくるからここで見てろよ!!かっこいいテクニックを見せてやるぜ!!」 「それでは私も行ってきましょうか。爺の本気を見せてさしあげましょう」 「俺ももう一回行くっぺ!」 「本田さん転んで腰痛めないでくださいよー」 「御意!」 「僕も行ってきますね!」 「ティノ君、そりだけには乗らないでね」 皆に手を振り、近くあった椅子に座ってイヴァンと二人でお喋りを始める。 途中で「アルフレッド居たか!?」と息を切らしながらやってきたアーサーに彼の所在位置を教えてあげるとカメラを持って走って行った。 頑張るねぇお兄さん…。 さて、そろそろ日も落ちてきたことだし旅館に戻ろうかなぁ…。 「そういえばイヴァンはどこかに宿泊の予約とってあるの?」 「あ、そういえば何も考えてなかったや…。名前はどこに泊まるの?」 「あそこに見えてる旅館だよ」 「それじゃあ僕も同じにするよ」 「でもあそこ予約でいっぱいみたいだよ?」 「大丈夫だよ〜。なんとかなるって」 イヴァンの言葉とは裏腹に、旅館フロントで確認をとってみるとやはり空いている部屋はないとの事だった。 「ちょっと待っててね」と笑ったイヴァンはしばらくの間姿をくらまし、戻ってくると「ここで一番いい部屋空けてくれたって〜」と笑顔で戻ってきた。 って……何したの、イヴァン…。 何はともあれイヴァンも加わって皆で楽しい夕飯が食べられそうだね。 その前に温泉も入らなくっちゃ! . ←|→ |