「はい、本田君アントーニョ君。僕からのバースデープレゼントだよ!」

「なにこれ、シベリア行き…?旅行券かいな!ありがとなぁイヴァン!」

「喜んでもらえてよかったよ〜!帰りの分は無いけど」

「ええーケチやなぁ!帰りは自分持ちかいな!」

「アントーニョさん、それはそういう意味では…」

「僕空気読めない人嫌いなんだー」

「私もです兄さん…気が合いますね…やはり私達は結ばれる運命にっ!!ああ兄さん!!今すぐここで結婚しましょう!!さあ結婚結婚結婚結婚結婚結婚ンンンンンンンン!!」

「やめてぇええええええ!!!」

「なんや激しい妹やなぁ」

「ですね…」

「本田さん他にも誰か呼んでるんですか?」

「はい…あとお二方いらしてくださると思うのですが…」


あと二人…?


「お兄様、早くいらしてください…」

「しかしリヒテン…吾輩はこのような場所には…」

「あっ!リヒテンちゃん!!」

「名前さん…。こんにちは。お邪魔させていただきました」

「うわぁー!まさか二人も来てくれるなんて思わなかったよ…!」

「今朝出かけるときにお声を掛けさせていただいたのですよ」

「ふん…吾輩はこのような騒がしい場所は好かん」

「そう言いながらも来てくれたんですねー。ツンツンしてますけどバッシュさんって実はいいひt「死にたいか?」……ごめんなさい…」


なにやら銃のようなものを私の顎に突きつけるバッシュさん。
え、ちょっ、それ本物じゃないですよねーハハハハ…


「他にも女の子がいる!」

「湾ちゃん…目を輝かせなくても…」

「初めまして。リヒテンと申します」

「可愛い…!仲良くしてね、リヒちゃん!」

「私はエリザベータよ。いつもここで働いてるからいつでも遊びに来てね!女の子の友達が少ないから来てもらえるとすごく嬉しいわ!」

「あ、ありがとうございます…。私も…お友達が居ないのでとても嬉しいです…」

「ねえねえ、今度また女の子皆で集まってお泊まり会しない!?」

「あ、いいねぇ!私の家でするのはどう?ギル追い出すし」

「それがいいわね!ついでに追い出したまま一生帰って来なくていいと思うわ!」

「んだとコラエリザベータァアア!」

「やだ、聞いてたの?気持ち悪いわねアンタ…」

「いいなぁ女の子ばかりのパジャマパーティー…お兄さんも混ぜてくれないかなぁハァハァハァ…!」

「そのパーティー是非私にも参加させていただきたいです!!女だらけのワクワクパジャマ大会ぃいい!」

「いや、本田さん参加する時点で女だらけじゃなくなりますから」

「なんと…!!!」

「本田…かっこいいわ…!」

「湾ちゃんんんんん!?」

「ええいやかましいぃいいい!静かにするのである貴様らぁあああ!」

「貴方が一番煩いですよお馬鹿!!!」



皆がわいわいと会話を交わして、笑い合う。

飲み物を片手に寄せて並べられた椅子に腰掛け、店内の皆の様子を眺めた。



「名前〜!」

「うわっアーサー酒臭い!」

「なんらよ俺ばっかいじめやがって…ヒック…」

「うん、まず服を着ろ」

「これが紳士の正装だよばかぁ」

「とんだ紳士だな。ほら、風邪ひくよー」


自分の着ていた上着を脱ぎ、アーサーの肩に掛ける。
小さくて違和感を感じるのか、もぞもぞと体を動かした後にギュッと自分自身を抱きしめるようなポーズをとった。



「おれ…名前の匂いに包まれてる…」

「……」



これは明日の朝「死にたい」のパターンだな…。



「なーに酔っ払っちゃってんのこの眉毛様」

「みっともないなぁーめっちゃ笑えるわーアハハハ!!」

「ちょっ、トニーワイン零してる零してる!!」

「俺にひざまずっけぇええ!!」

「うっさいわアホ!!!」

「ゲファッ!」

「右の頬を殴られたら左の頬も殴られろや!!」

「俺、親父にもぶたれた事ないのにっ!!」

「お前アムロだったの?アムロだったの?お兄さんちっとも知らなかったよ!」

「ギルベルトさんがアムロをやるなら私は赤い彗星のシャアを!!」

「赤は三倍早い!」

「赤は三倍早い!」


……どうしてやろうかな、この酔っ払い変態男部。



「ルート君、ちょっとこの踊ってる酔っ払い達裏に放り出して酔い冷ませてきてやってよ…」

「ったくしょうがないな…」


ほらいくぞと四人+アーサーの首根っこを引っ張りずるずると引き摺っていくルート君の背中を見送り、安堵の溜め息をつく。


「まったくもう…」



いつもとお決まりのパターンだなぁ…。

だけど、こうやって集まってくれた皆と一緒に騒いでいられるこの時間が本当に幸せで

ギルと出会って一年間、こんなにも沢山の皆に出会えた事が私の生きてきた中で何よりも嬉しい事で




「ったくルッツのやつ思いっきり放り投げやがって…」

「あれ…もう酔いは冷めた?」

「元からそんなに酔ってねーっつの」

「嘘つけ」


隣に座って「頬が痛いぜー」と両手で頬を包むギルに笑みが零れた。



「何によによしてんだよ…」

「べっつにー。幸せだなぁと思ってね」

「またそれかよ…」

「だってさ。嬉しいなって…。今日この日に皆が集まって同じ時間を過ごせてさ…」

「一年、か…」




そう。
一年前の2月14日


この日から全ては始まったんだ





「なぁ、そろそろ教えてくれてもいいんじゃねーの?」

「なにが?」

「お前の誕生日だよ。前に聞いた時はぐらかしただろ、お前」

「あぁ…」



あの時か…。

そうだね。もう言っても、いいかな。





「私の誕生日はね…」


「誕生日は…?」


「2月14日」


「へー…って…………え……?」


「本田さんしか知らないんだけどね……。ほんと、去年も今年も、ギルには最高の誕生日プレゼントもらちゃったなー…」


「………お前……」


「…きっと、運命だったんだよ。あの日あの場所でギルに出会った事も」


「………」


「ありがとう、ギル。私の出会ってくれて。ギルベルトという最高の誕生日プレゼントをくれて」


「………名前……」


「ありがとう。全部、全部………ありがとう。大好き…ギル……」





肩に頭を置いて、目を閉じて。



もう一度「大好き」と呟くと、頭をすっぽり抱え込まれるように優しく抱きしめられた。





「苦しいよ馬鹿」


「馬鹿はお前だろ」


「いや、ギルにだけは言われたくないんだけど」


「お前…いつから俺の事好きだったんだよ……?」


「そういうギルはどうなの?」


「…………多分、最初から……」


「それじゃあ私も同じという事で」


「なんだよそれ……バカか」


「黙れプー太郎」


「………プー太郎って呼ぶなっての…」


「ねえギル………ずっとずっと、傍に居てね」





私の幸せは全部、貴方だから





「頼まれなくたって……もう絶対に離れてやんねーよ。アホ女」







抱きしめあった私達を指差し「ああああ!!!ギルベルト!!君いったい何やってるんだい!!!俺の名前にぃいいいい!!」と叫んだアルフレッド君の声に、店内に居た全員がギルを袋叩きにしたのは………言うまでもないだろう。





そうして床にうつ伏せになって倒れこむギルを見て、私はいつもと同じ事を思うんだ。





「見てねーで助けろよお前…!!」


「いや、なんか見てるの楽しくって……」


「アホかぁああああああ!!!」





ほら、やっぱりね。





不憫で、俺様で、我侭で、甲斐性無しな




君は私の愛しい、プー太郎。









(END)






2010.3.22


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