仕事の帰り。アルフレッド君とマシュー君に入学祝を渡すために待ち合わせをした。
「おいしいコーヒーが飲みたいんだぞ!」と言うアルフレッド君の為に、待ち合わせ場所はエリザの働くお店にした。
あそこのコーヒーならアルフレッド君も満足してくれるんじゃないかな


「二人とも相変わらず元気そうだねー」

「俺はいつだって元気さ!」

「僕も元気だよ!」


同じ顔なのにアルフレッド君は無邪気に、マシュー君は柔らかく笑う。
似ているようで似ていない兄弟だよなぁ、この二人は。


「はいこれ。入学祝いだよー。昨日入学式だったんだよね?」

「えぇー!!本当に用意してくれてたのかい!?」

「たいした物じゃないけどね。良かったら貰って」

「うわ〜!!ありがとうございます!こんな事までしてくださって」

「私がしたいから勝手にやってるだけだよ!二人にはいつも元気貰ってるからね」

「嬉しいよ名前!!ありがとう!!」


目を輝かせて喜ぶ二人の顔を見ていると、なんだかこっちまで嬉しくなってきた。
本当の弟みたいで可愛いなぁ


「おまたせしました。コーヒーになります」

「ありがとうーエリザ」

「どういたしまして。名前ったら今日は素敵なお友達と一緒なのね」

「うん!いいでしょー」

「ふふふ。羨ましいわ」


いつものように上品に笑ったエリザは「それじゃあまた後でね」と言ってカウンターの中へ戻って行った


「名前あの店員と知り合いだったのかい?」

「うん。友達だよ」

「うわ〜。すっごい美人だったなぁ…」

「マシュー君はエリザみたいな人がタイプなのかなー?」

「え!?ちっ違うってば!!僕は別に…その…」

「俺は名前みたいなキュートな方がタイプだぞ!!」

「キャーアルフレッド君かっこいいー!!アーサーに似ず素直ないい子だわー!」

「も〜!あんなのと一緒にしないでっていつも言ってるだろ!!」

「アーサーさんに失礼だってば、アル!」


その後入学式での事やアーサーの入学祝いがおっさん臭いだとか、楽しいおしゃべりを続けた。
この店のコーヒーを気に入ったアルフレッド君が何度もおかわりをしていたので、流石にいけないと思い通算5杯目のコーヒーの所でストップをかけた。
夜中にトイレに行きたくなっちゃうぞ、と注意すると、「ヒィイイ!!それは嫌なんだぞ!!今日これからホラー映画のDVDを見る予定なのに!!」とギャーギャー騒いでいた。
ちくしょー!アルフレッド君可愛いなぁ…!!



―――



「ただいまー」

「おぉ」

「お邪魔してるぞ」

「あれ、アーサーじゃん」


ギルと二人で居たんだよね?
喧嘩してないみたいだけど…珍しいな。
明日雨降らないといいけど。


「今日アルフレッド君とマシュー君にお祝い渡しに行ってきたよ」

「へぇ。あいつら何だって?」

「すっごく喜んでくれてた。ありがとうー!!って」

「マジかよ…俺の時、マシューはともかくアルフレッドはすげー冷めてたぞ。貰える物は貰っておくよとか勝手なこと言いやがって!!」

「きっと照れ隠しだって」

「お前弟に嫌われてんだな!ケセセセ」

「うっせぇ黙れプー太郎」

「そういえばもう一人弟が居るって言ってたよね?まだ小さいんでしょ?」

「確か今12歳だ。ピーターって言って生意気な奴なんだよな」


12歳かぁ〜。可愛い盛りじゃないですか
弟がいっぱい居て本当に羨ましいぞ、アーサー!


「今度写真見せてよ!持ってるんでしょ?アーサーブラコンだし」

「なっ、ブラコンじゃねえ!!持ってる事は持ってるけど…」

「ほーらブラコンだ。アーサーの部屋にアルフレッド君とマシュー君の小さいときの写真が写真立てに入れてあったの見ちゃったもんねー」

「おま…勝手に見るなよばかぁ!!」


あの二人の小さな頃はそれはもう天使のようで…。まぁアーサーが可愛がる気持ちも分かるよねぇ、本当に


「いいなぁ兄弟。私も兄弟が欲しかったよ」

「結婚すれば義理の兄弟ができるじゃねーか」

「おっ、ギル頭いい。そうかー結婚かぁ〜。その手があったか」

「ま、その歳で彼氏も居ないようじゃ結婚なんてまだまだ先だろーよ」

「うっせぇテメェも同じ歳だろーが」

「お前はお見合いの話とか来ないのか?」

「無いよ。え、何?アーサーはあるの?」

「え、いや…まぁ少しは」

「ぶふっ!!マジかよ!!じゃあさっさと結婚して身を固めた方がいいんじゃねーの〜?」

「もーからかっちゃダメだよギル〜!ププッ!!」

「お前ら何笑ってんだよ!!しょうがないだろ上司や親から見合い勧められんだから!!」

「いやいや何も悪いなんて言ってないじゃないですか〜。ねぇギルベルトさん?」

「そうだそうだ!今度見合いが来たら是非見合い写真見せてくれよな。ぶふっ!!」

「何だよお前らそのテンション…」


ギルと二人で悪乗りしすぎたのか、ふて腐れたアーサーは部屋の隅っこの方で膝を抱えて沈んでいた。
ちょっとやりすぎたかな…
ってゆーか、ふて腐れたら普通自分の部屋戻るだろ。なんで私のとこでいじけるかなぁ〜あの眉毛は


「まぁまぁアーサー。お見合いだって悪くないじゃん。いい相手が見つかるかもしれないしね」

「ばっ馬鹿ぁあああ!!」

「ええぇえ!?なんで!?私励ましただけだよね!?なんで馬鹿呼ばわり!?」

「ギャハハハハ!!!馬鹿だろお前ら!!」

「てんめぇビール飲みながら笑うなこのプー太郎!!吊るすぞ!!って、アーサーも何いじけてんのぉお!!めんどくせーなぁお前!!」

「めんどくさっ…!?うっ…お前なんか、お前なんか…!!」


涙を浮かべたアーサーがぎゅっと手の平で拳を握る。


「お前なんか…!!」

「お前なんか、なんですか」

「嫌いだ馬鹿野郎ぉおおお!!」


まるでドラマのように涙をこぼして捨て台詞をはいたアーサーはものすごい勢いで走り去ってしまった。


「……」

「あれ、放っておいてもいいのか?」

「うん。よくある事だから」

「あるのかよ!?めんどくせー奴だな」

「でしょ。でもまぁあんな所もアーサーらしくて面白いんだけどね。さぁーさっさとご飯作って食べましょう〜。今日はオムライスですよー」

「俺が卵やってやるからお前チキンライスやれよ!」

「ちょっ、いいとこ取り!!しょうがないなー」




その夜。トイレに行きたくなって部屋を出たら、ベランダの方から誰かのすすり泣く声が聞こえてきた。
怖くなってギルを起こそうかと思ったけど、恐る恐るベランダに近づいてみると、お隣のベランダから聞こえる声だった。
言わずもがな、奴のすすり泣く声はそれからしばらく部屋の中まで響いてきた。
なんというホラーだ。

はぁー…。腑に落ちないけど、明日の朝謝っておこう。


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