「ルート君!」 「ん…?あぁ、名前か」 仕事帰りに本屋さんに寄って料理のレシピコーナーで立ち読みをしていると、同じく料理の本を手に持ったルート君に遭遇した。 「ルート君も料理の本かぁ。ん…?”バレンタインのお菓子レシピ”…?」 「う、うあああ!これはその…!!こ、これは俺じゃなくてフェリシアーノが、だな…」 「あれあれ〜。もしかしてルート君バレンタイン誰かにチョコプレゼントするのかなぁ〜?うふふ、若いっていいねえ…」 「お前と俺、そんなに歳変わらないだろう…」 「4歳の差は大きいと思うよ…」 慌てふためくルート君の顔をニヨニヨと眺めると、頬を赤く染めた。 ルート君も可愛いとこあるんだなぁ…手作りだなんて。 相手がすごく気になるところだけど…。 「誰にあげるのかなぁー。女の子?」 「えっと…ま、まぁな…」 「へぇー。ふーん。ルート君にそんな子がねぇ…」 実の弟のように可愛がっているルート君。 そのルート君に女の子が…。なんだか嫉妬しちゃうなぁ…。 「相手はどんな子なの?」 「そうだな…。大人なのに子供っぽくて…そのくせたまに年上だと意識させられるような時がある不思議な奴だ」 「ほぉ…」 「それでその…お前はどんなチョコレートが好きなんだ…?」 「私?私はどんなものでも好きだけど…」 「そうか……」 あれ、ちょっと待て。 もしかして、もしかすると… 「ねえルート君」 「なんだ」 「チョコ渡す相手って、もしかして…」 「…美味いのを作ってやるから期待していろ」 ニヤリ。ドS顔で荘微笑んだルート君が私の頭をポンポンと撫でた。 あらまぁ…。それじゃあ私もルート君に負けないぐらい美味しいチョコレート作ってお返ししないとね。 「14日が楽しみだねー」 「あぁ。そうだな」 楽しそうに笑うルート君。 二人で一緒にアンダンテに向かい、すっかり話し込んでしまって家に帰るのがいつもよりずっと遅くなってしまった。 「おせーんだよ」 「ごめんってば…。ルート君に会って話し込んじゃってね」 「ったくお前は俺の弟に…」 「なぁにギルベルト君、やきもちですか?」 「…だったらどーすんだよ」 「どっちにやきもちやいてるのか聞いてみようかねえ」 「ほざけ」 帰りが遅いアーサー抜きの夕食を終え、いつものようにソファーでまったりとした時間をすごす。 なんだかんだ言って、この時間が毎日の安らぎの時間になってるんだよね… 「ルート君がね、バレンタインにとびっきり美味しいチョコレートくれるんだって」 「はぁ!?お、お前にかよ!?」 「うん。だから私も美味しいの作ってプレゼントしなきゃなぁ…」 「14日か…」 「そ。14日」 2月14日。 一年前のその日、私はギルに出会ったんだ。 もう一年…たったんだなぁ…。 「14日はね、私にとって特別な日なんだ」 「そうか…」 「14日は二人で何かお祝いでもしようか。ギルがプー太郎生活一周年を記念して」 「んな記念すんじゃねぇえええ!!」 「おめでたいじゃないのー。一年だよ一年。私なら三日で挫折するわ」 「遠まわしに嫌味言ってんだろ…」 「さぁ?」 からかうように笑うと、ギルの腕が伸びて私の両頬を摘んだ。 抵抗するようにギルの頬を掴み返すと、少し強く摘みすぎたのか「なにしゅんらよ!」と少し涙目になっていた。 本当に、一年たつっていうのに相変わらずだなぁ…ギルは。 「あ…そういえば…」 「あいててて…なんだよ」 「11日って本田さんの誕生日だったような」 「マジで!?あ…そういえば12日ってトニーの誕生日じゃなかったか?」 「うわあああ!ほんとだ!すっかり忘れてたよ!!そうかぁ、二人とも連続で誕生日なんだねー。何かお祝いしなきゃなぁ」 「トニーはともかく本田には世話になってるしな」 「何か考えておかないとね…。そうだ、週末どこか買い物にでもでかけようか。プレゼント買いにね」 「おう!」 こうやって色んな人のお祝いができるって、楽しいなぁ。 ギルに出会うまで、こんなに沢山の大切な人たちが居なかったから…今こうやって皆で笑いあえることが本当に幸せだって思うんだ。 ギルと出会って一年。 そう、あの日にギルに出会った事から全ては始まったんだ。 チョコレートもちゃんと用意して、ギルともお祝いしなきゃね! なんだか来週はお祝いムードが絶えない日が続きそうだなぁ…。 . ←|→ |