「え、もう本田さん家の修理終わるの?」 「あぁ。ちょっと直すだけだったからすぐ終わるらしいぜ。今日が最終」 「へー。じゃあ帰りに見に行ってみようかなー」 「俺も今日本田んとこの仕事場見せてもらいに行ってくるぜ」 「そっか。ちゃんと鍵かけて行ってねー」 「おー」 ギルとこんな会話をしたのが今朝の話。 現在夕方で、私はスーパーで本田さんの好きなとろけるプリンを三つ買って本田家に向かっていた。 持って行ってあげればきっと喜ぶだろう。 そういえばこの間もこうやって本田さんの家に向かってる途中であの仮面の人に会ったんだよなぁ また会えちゃったりして…。って、そんな都合のいい事あるわけないない。 「本田さーん」 「おや名前さん。お仕事お疲れさまです」 「はい!本田さんも修理が終わったみたいで良かったですね。あ、これ差し入れというかプレゼントです」 「うわぁ〜!!とろけるプリンですね!ありがとうございます。実は原稿が上手くいってなくてイライラしていたところなんですよ。やはり甘いものが一番ですよね」 無邪気に笑う本田さんの笑顔はやっぱり素敵だ。 あれ、そういえばギルが居ないなぁ… 「ギルはどこ行ったんです?」 「あぁ。ギルベルトさんなら漫画部屋でいちご100%を見てますよ」 「どの100%でもいいですからもうギルに漫画みせるの止めてくださいよ。オタクになったらどーしてくれるんですか」 「何を言ってるんですか名前さん!!いちご100%嘗めてんじゃないですよ!!苺柄パンツ最高ぉおお!!ちなみに私は名前さんはどんな下着を使われているのかとっても気になr「いい加減にしないと警察呼びますよ」 そろそろきつく言っておかないとエスカレートしていくからな、この人は…!! 「名前さんも本格的にSキャラになりましたねぇ…」とどこか嬉しそうに私を見ている本田さんをおもいっきり殴ってやりたかったが、次の機会にすることにした。 「まぁ上がってください。お茶出しますから」 「いいですよ。まだ原稿残ってるんですよね?」 「はい。ですが…」 「いいからちゃんと仕事してください。本田さんは人がいいんだから、他の人の事ばっか考えてないで自分の事考えたほうがいいよ?ただでさえ独り身でこの先不安だらけだっつーのに…さっさと結婚しろっつーの」 「いいんです。私の嫁は一生綾波レイですから」 遠くを見て儚げに笑う本田さんが痛かった。なんでこんな人と仲がいいんだろう、私。 「おーい本田、これってアニメはねーのか…って、名前来てたのかよ!」 「来てましたよー。100%見てないでさっさと帰るよ。本田さんの邪魔になるでしょーが」 「ただの100%じゃねーよいちご100%だっつーの!!」 「しばくぞ!!ああもうなんなのさっきから苺パンツだ100%だって!!そんなに好きなら明日苺柄のトランクス買ってきてあげるから!!それで我慢しなさい!!」 「なんで俺が履くんだよ!?」 「むしろお二人でお揃いなんていいんじゃないですかね、うふふ」 「本田さんはさっさと仕事をしてください!!!」 ったく、こいつらと喋ってると無駄な体力使うなぁー… さっさと帰って休もう… 「それじゃあ本田さん、さような、」 「よーう本田さんよぉ!修理した場所はもう問題ないかい?」 玄関の方から聞こえてくる、威勢のいい大きな声。 これって… 「あぁ、わざわざすみませんサディクさん。大丈夫でs「仮面さんっ!!!」って、ちょっ失礼ですよ名前さん!!」 「おぉこの間の嬢ちゃんじゃねーか!おめぇさん本田さんの知り合いだったのかい?」 「そうです!!えっと、あなたは…」 「俺は大工やっててここの床の修理をやってたんでい。終わったからどんな具合か様子を見に来たっちゅーわけよ」 「そ、そうなんですか!!大工さん…かっこいいですね!」 「サディクさんはまだ若いのに親方さんをやっていられるんですよ」 「すごーい!!か、かっこいいですね!!」 「あったりめーよぉ。嬢ちゃんとこも直して欲しい場所があればいつでも俺に言ってくれりゃあすぐに飛んでいくぜ!」 あぁ、神様!!ここであの仮面さんと再会できるなんてこれは夢ですかー!? しかも彼大工の親方さんだったなんて…似合いすぎ!!サディクさん…ふふふ 「何騒いでんだよ…って仮面んんんんん!?」 「ちょっとギル!!何失礼なこと言ってんの馬鹿!!!」 「嬢ちゃんも同じこと言ってたけどねい」 「えっと…あ、あはははー」 「誰だよこの怪しい奴」 「誰って、腐った床を直してくれた大工さんで…」 「修理は若い部下の方がやられましたからね。最終チェックに来たサディクさんと会うのは初めてなんですよ、ギルベルトさんは」 「なるほど」 「そーゆーこってい。嬢ちゃん、お前さん名前はなんてんだい?」 「私は名前といいます」 「おう。いい名前じゃねーか!そっちの赤目の兄ちゃんはなんてんだい?」 「…ギルベルト」 「ギルベルトか。覚えとくぜ。それじゃあ何かあればこの大工のサディクを呼んでくんな!またな!」 「あっ、是非その時は…!!」 行っちゃった…。それにしても、やっぱりかっこいい… 男らしくてしかも大工さんって…!! 「おや、また顔が赤いですねぇ名前さん」 「え!?」 「なるほどなるほど。そういうわけでしたか。これはいいネタですね…お陰でペンが進みそうです」 「さっきの男なんなんだよあの仮面!!変質者じゃねーのか!?」 「あの仮面の下にはどんな素顔が隠されているのでしょうか…!!」 「え、本田さんサディクさんの素顔見たこと無いの?」 「もちろんありませんよ。あの方にお会いしたのは今回が初めてですしね」 「そっか…」 あの仮面って何か理由があるんだろうか。 でも素顔を知ってるのは私だけって、ちょっぴり嬉しい。 サディクさん、また会いたいなぁ… 「お、お前ってあーいうタイプが好きなのかよ!?趣味わりー!!」 「今なんつった…あぁ?サディクさんはお前みたいなプー太郎じゃなくて一生懸命大工の仕事やってんだよ。そんな人が好みでどこが悪い!!」 「まぁまぁ名前さん。恋愛漫画に障害はつきものなんですからこれでいいんですよ!おいしいネタをご馳走様です」 何がご馳走様だ…。 固まっているギルの首ねっこを掴んで引き摺りながら帰った。 ゆっくり沈んでいく夕日を見ていると、サディクさんの事を思い出す。 彼の素顔を思い出してまた心臓がドキドキと高鳴ったのは、内緒だ ・ ←|→ |