「名前、昨日は世話になったない…」

「あ、おはようスーさん……ってスーさんんんんん!?え、ちょっ、風邪は!?」

「治っだ」

「早い!早すぎるよスーさん!昨日あんなに熱が高かったのにそう簡単に直るわけないよ!」


いつものように無表情のスーさんに思いっきり手を伸ばし手の平を額に当ててみる。
うーん…確かに昨日よりは随分ましになってるけどなぁ…。


「大事をとって今日も休んだ方がいいって言ったんですけど…スーさんどうしても出勤するってきかなくって…」

「おめぇら迷惑かけてられねぇかんな…」

「迷惑なんてかからないよー…。本当に大丈夫?」

「さすけね」


いつもと変わらない様子で仕事に取り掛かるスーさん。
まぁ本人が大丈夫って言うなら仕方ないけどなぁ…。
できるだけ無理しないようにサポートしてあげなきゃね。
とりあえずデンさんをスーさんに近づけさせないようにする事が最優先だ。
あの二人話す旅に険悪ムードで喧嘩するからなぁ…。


「名前、ちょっとこっちこ」

「ノルさん?はーい、分かりました」


ノルさんにちょいちょいと手招きされ、誰もいない休憩室へと入る。
何か用かな…


「どうしたんですかーノルさん」

「実はあんこがも熱出してんだべ」

「ええええ!?デンさんまで…いま社内で風邪はやってるのかなぁ…。でも今そこで普通に仕事してますよ!?」

「顔には出ねぇけっども足元フラフラだべ」

「なんですかそれ…。で、私に何をしろと…?」

「さっさと帰って寝るように言ってこい」

「なんでノルさんが言わないんですか」

「おめが言うのが一番だべ」

「えー…」

「これやっから行ってこ」


私の手を掴んで何かを握らせたノルさん。
って、これ…ただの飴…


「ノルさん…私のこと餌で簡単につられるやつだと思ってませんか…」

「んだな」

「……」


早くと背中をぐいぐい押され、デンさんのデスクの前まで連れて行かれる羽目になってしまった。
もー…しょうがないなぁ…。


「デンさーん」

「んー?んだっぺ〜名前。何か用け?」

「デンさん。体調悪いなら早く帰ってください」

「何言ってんだっぺ。俺はどこも悪くね」

「熱があるってノルさんから聞きましたよ。ほら、後の事はもういいですから早く帰って病院行ってください。これいじょう社内に風邪菌充満したらこっちが困るんですからね」


子供のするようなアムスっとした表情で「やだ」と応えるデンさん。
普段よく仕事サボってるくせにこういう時は頑固なんだからなぁ…。


「名前さん、どうかしたんですか?」

「デンさんも風邪だって」

「えええ!?なら早く帰った方が…」

「だーかーらー!俺はどこも悪くっ、」


デンさんの動きを制するようにぺたりと額に手の平を当てる。


「やっぱり熱あるじゃないですか。早く病院行ってきて下さい」

「……手…」

「は?」


鳩が豆鉄砲をくらったみたいな表情をしたデンさんが私の手首を掴む。
え、ちょっ、何ですか…


「おめぇから暴力以外で触れられんの初めてだっぺ」

「え…」

「おめぇがずっと傍で看病してくれるってーなら今から帰ってやってもいいけど…」


少しトロンとした目で私を見つめるデンさんに背筋がゾクリとした。


「う、うわぁあああ!!何してるんですかデンさん!!名前さんの手を話してください!」

「ちょっと黙っとけティノ」

「いやぁああああ!!ノルさん、ノルさぁあああああああん!!!!」


縮まっていくデンさんとの距離に恐怖を覚え、思わずノルさんに助けを求めると様子を見ていたかのように瞬時に助けに来てくれた。
デンさんはそのまま半強制的に家に帰らされる事になってしまった。

まったくもう、とんでもない事になる所だったよ…。




「今さぁ、会社で風邪が流行ってるみたいなんだよね」

「マジかよ。お前は大丈夫…だよな。風邪とかひかねーし」

「まぁね。スーさんは随分良くなったみたいなんだけど、今日はデンさんが熱出しちゃって…。家に返すのに一苦労だったよ…」

「へー」


興味なさ気に晩ご飯である水炊きの白滝をシャクシャクと食べるのに夢中になるギル。
こいつさっきから白滝ばっかり食べてるなぁ…。


「そういえばアーサーから連絡来ないけどいつ帰ってくるんだろう…」

「…早く帰って来て欲しいのかよ」

「いや、そういうわけじゃ…」

「二、三ヶ月戻ってこない方が平和でいいじゃねーか。酒飲んで暴れる事も不味い飯を持ってくる事もねーしな!」

「それもそうだねー」

「あ、その肉俺のだから取るなよ!」

「やーなこったー」

「ああああああ!!」

「んー美味しい!やっぱり冬は鍋だよね〜」

「おまっ、俺のだって言ってんのに…!!」

「自分のだって言うなら名前でも書いておけばいいのに〜。ははは」

「ちくしょぉおおおお!!明日お前が居ない間にお前の枕にナマコ詰め込んでやるからな!!!」

「じゃあ私はギルが寝てる間にそのナマコをベッドに敷き詰めてあげるよ」

「ギャァアアア!!!」



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