「え、今日スーさん休みなの!?」

「そうなんですよー…。朝出てくる気配がないので心配になって…管理人さんに頼んで鍵を開けてもらったら高熱が出て倒れてたんです、スーさん」

「そ、それで…大丈夫なの!?」

「僕も心配になって病院に連れて行こうと思ったんですけど…。自分で病院に行くから今日は休むという事を伝えておいてくれって言われちゃって…」


大丈夫かなぁ、スーさんと不安げに窓の外を見上げるティノ君。

スーさん…今まで一度も休んだ事なんてなかったのになぁ…。
まだインフルエンザも流行ってるって言うし、心配だなぁ…。


「僕どうしても今日中に仕上げなきゃいけない仕事があって早く帰れないんですよ〜!!早く帰ってスーさんの看病してあげたいのに…」

「分かった。じゃあ私が帰りにスーさんの様子見に行くよ」

「でも名前さんは家が逆方向ですし…。遅くなると危ないですから」

「ううん。私も心配で気が気じゃ無いしね」

「ありがとうございますぅう!あ、これスーさんの部屋の鍵一応預かってきたので…」

「了解!」


ティノ君からスーさんの部屋の鍵を預かり、ギルにメールでスーさんの事を説明し帰りが遅くなると連絡した。

デンさんに定時より少し早く帰らせてもらえるようにお願いし、いつもより早く仕事を終えていつもの帰りと逆方向の電車に乗り込んだ。
何か食べるものとか買って行った方がいいよね…。
果物とかだったら食べられるかなぁ。

降りた駅の近くのスーパーでリンゴと飲み物と冷却シートを買ってスーさん達の住むハイツに向かった。


「一応呼び鈴鳴らしたほうがいいよね…」


一応鍵は持ってるけど…と思いながらスーさんの部屋のインターフォンを鳴らしてみるものの、中から反応が返ってくる事はなかった。


「しょうがない…」


ティノ君から預かった鍵で恐る恐る中に入る。
やっぱり綺麗にしてあるなぁスーさんの部屋は…。


「スーさーん…」


寝室にある大き目のベッドの上に、頬を赤くし苦しそうなスーさんの姿があった。
すぐさま駆け寄りスーさんの額に手を当ててみると、じわりと熱が掌に伝わってくる。


「これは熱が高そうだな…」


買ってきた冷却シートを取り出し額に貼りつけようと再び手を伸ばすと、薄っすらとスーさんの瞼が開いた。


「スーさん…大丈夫?」

「名前…」


少し擦れた声で私を呼ぶスーさんと視線を合わせる。
まだ少し頭がボーっとしているのか、数秒間見つめあった後に勢い良くベッドから上半身を起こした。


「ど、どして名前がここに…?」

「ごめんね、勝手に上がっちゃって。ティノ君から鍵預かって様子を見に来たんだー」

「…そーけ…わりぃ」

「何言ってるの〜。それより具合はどう?」

「あー…昼間に病院行ったんだけども…薬飲んで安静にしてんのが一番だって言われたない」

「そっか…。もう薬飲んだ?」

「んにゃ、まだ」

「じゃあまず何か食べないと…。キッチン借りていい?」

「それよりおめ、早く帰らねーと夜遅くなっから…」

「大丈夫大丈夫。いざとなったらギルにここまで迎えに来させるし」


いつもしている眼鏡を外しているせいか、心配そうに私を見るスーさんの表情がいつもより幼く見えた。
眼鏡しない方が表情が柔らかく見えるんじゃないかなぁ、なんて小さく笑いながらキッチンの前に立つ。
冷蔵庫の中に入っている食材を拝借し薄味の雑炊を作る作業にとりかかった。

そういえば前にアイス君が風邪引いたときもこうやって看病してあげたっけなぁ…。スーさんも早くよくなるといいけど…。


「できたよスーさん。一人で食べられる?」

「ん…あんがとない」

「どういたしまして。熱いから気をつけてね?」


コクリと頷いたスーさんが私の作った雑炊を口に運ぶ。


「うめぇ。いい嫁になんべ」

「やだなースーさんったら」

「けんどもまだどこにも嫁にはやんね…。俺が許すまでどこも行くでねーぞ」

「なんだかスーさんはお父さんみたいだなぁ。もし恋人が出来たらちゃんと紹介しないと怒られちゃいそうだよ」

「その日がこねーことを願ってんべ」


大事にされてるなぁ、私…。

一人用の土鍋に入っていた雑炊を綺麗に食べ終えたスーさんに風邪薬を渡す。
これを飲んで寝てればよくなるよね…。


「さ、ベッドに横になっててスーさん」

「ん…おめぇもそろそろ帰んねーと…」

「大丈夫。スーさんが寝たらちゃんと帰るから」

「あんがとない…」

「うん」


やはり熱が高いのか、少し苦しそうに目を閉じた。
しばらくすると薬が利いてきたのかすやすやと寝息をたてた。

さてと…私もそろそろ帰ろうかな…。


「スーさん、早く良くなってね」


スーさんのサラサラとした髪をポンポンと撫でる。
スーさんの髪触るの久しぶりかも。
相変わらず綺麗な髪で…



「あ、名前さん!」

「ティノ君!今帰ってきたんだよね?お疲れ様」

「名前さんも今までスーさんの傍に居てくれたんですね…ありがとうございます」

「お礼を言われるような事してないよ〜」

「あ、今帰りなんですよね?駅まで送りますね」

「大丈夫。私よりスーさんの傍に居てあげて」

「ダメですよ。ちゃんと名前さんを送っていかないとスーさんにも悪いですし」

「じゃあお願いします…」


ティノ君に近くの駅まで送ってもらい、電車に乗りこみ岐路に着く。
いつものように駅まで迎えに来てくれたギルが「ベールは大丈夫だったのかよ?」と少し心配そうに様子を伺ってきた。
あとはティノ君に任せれば大丈夫。

随分帰りが遅くなってしまったので今日の夕食は何か適当にお惣菜を買って帰る事になった。
自分で作らなくても美味しいご飯が食べられるっていいよねー…。
スーさん、明日には良くなるといいんだけどなぁ…。
ゆっくり休めばきっと早く仕事に戻ってこられるようになるよね。
それまではスーさんの分の仕事も頑張らなくっちゃ…!


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