「本田先生〜。原稿まだっすか?締め切りとっくに過ぎてますよ」

「少し黙っていただけますか。今集中している所なんです」

「っていうか先生ちょっと遊びすぎなんすよ〜。年末も正月も遊び呆けてたんでしょ?」

「そういう貴方も年末にデ○ズニーランド5回は遊びに行ったとか自慢してたじゃないですか!!」

「ランドは別ですよ何言ってんですか先生!?あそこは別世界っすよ!?ゲートをくぐった瞬間あそこは異世界ですから!!夢のワンダーランド!!」


なんなだろう、この二人は。
アーサーが居ない事をすっかり忘れていてコロッケをいつもより多く作りすぎたから本田さんに食べてもらおうと届けに来たら…。
あれ、なんか前にもコロッケ届けに来たらこの担当の小笠原さん居なかったっけ?
コロッケに縁がある人なの?


「名前さん!絶対に小笠原さんにはコロッケを渡してはいけませんよ!私の原稿が終わるまでそこで大人しく待っていてください!!」

「いや、私早く帰りたいんですけど…ギルも待ってますし」

「名前さん、そのコロッケもらっていいっすか?」

「何を言っているんですかスットコドッコイ!!一度では飽き足らず二度も名前さんのコロッケを奪おうとするだなんて貴方という人は…!!」

「あの…私もう帰っていいですか…ギルも待ってるし」

「あぁ、すみません。アーサーさんもいらっしゃいませんし二人っきりでベタベタしたいんですよね、分かります。年寄りは空気が読めないもので申し訳ございません…」

「何勘違いしてんだろうこの爺」

「やっぱり名前さんのコロッケぶまいっす」

「ってあああああああああ!!私のコロッケェエエエエ!!おのれ小笠原ぁあああ!!」

「先生、炊飯ジャーのご飯ももらっていいっすか?」

「嫌ぁあああ!」

「本田さんそのうちこの家の食料全部食べられちゃうんじゃないですか…?」

「やめてください…本当にそうなりそうで冗談に聞こえません…」


本田さん。ちょっとやつれたな…。
もしゃもしゃとコロッケを食べる小笠原さんと「鉄拳んんんん!」と叫んでいる本田さんに軽く挨拶をし、本田さんの家を後にする。
あーもう、私も晩ご飯まだだっていうのに…。
帰ってゆっくりコロッケ食べよっと。



「あぁ、おかえり名前!!このコロッケすっごく美味しいぞ!」

「…アルフレッド君…いつ来たの…?」

「ついさっきさ!あ、そうだ。今夜泊めてくれないかい?もう運転して帰るの面倒くさくてさ〜!そうそう!明日一緒にでかけようよ!!名前と久しぶりにデートしたいんだぞ!!」

「アルフレッド君…貴方が今食べているコロッケは…」

「あぁ、この皿の上に乗ってたやつだぞ」

「…ギル…私のコロッケは…?」

「あー……多分…この辺り…?」


少しポヨンとしたアルフレッド君のお腹を指差すギル。


「アルフレッド君…私のコロッケ食べたね…」

「え…?て、てっきり余ってたやつだと思ってたぞ…?

「私まだ食べてないのに…」

「え、あ、えっと…」

「私の…私のコロッケぇえええ!!!!」

「うあああ落ち着け!!コロッケぐらいで何ムキになってんだよ!?」

「ああもう!!コロッケ運なさすぎなんだよ私!!」

「コロッケ運って何だよ!?」


ギルの背中でプルプルと震えるアルフレッド君に「ピザ。今すぐに注文しなさい」と命令すると、恐る恐る「夜カロリーの高いもの食べると太るぞ」と返ってきたのでギルを押し退けてアルフレッドくんの柔らかい頬を横におもいっきり伸ばした。

もう当分はコロッケは作らない。





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