―ピンポーン


ん?客か…


「ギル」

「なんだよ」

「レッツゴー」


俺に行ってこいって事かよ…
ったくめんどくせぇ。
言い返してやろうかと名前の方を向くとバックに黒いオーラを背負って微笑んでいたのでフルスピードで玄関へ走った。
もう吊るされるのは嫌なんだ…!


「はいはい誰だ…って」

「あれ、ギル寝起きかいな?寝癖ついてんで」

「相変わらずプー太郎やってるみたいだなぁお前。名前ちゃん居るー?」


アントーニョにフランシス…!?
よりによって面倒くさい奴らが来やがった!!


「お邪魔するでー名前ちゃん」

「うわー女の子の部屋!いい匂いするね〜ハァハァ」

「ちゃうでフランシス!!これ芳香剤やねんで?お前も引っかかったな〜アハハ!」

「…お前なぁ」

「ん?なにー?」

「いや、もういい…」


俺を横切ってズカズカと入ってきた二人組。
ちょっと待てよ…?
今リビングにはアーサーの奴が居るわけで…天敵のトニーが今行ったら…


「なんでお前が名前ちゃん家おるねん!?」

「それはこっちの台詞だ!!フランシスまで性懲りもなく現れやがって…!!また海に沈められてーのかお前ら!!」

「おーこわっ!あんな現役ヤンキーとはあんまり関わらないほうがいいぜトニー」

「そやなぁフランシス。それに名前ちゃん家で喧嘩はあかんしなぁ。無視しよか、無視」

「よーしお兄さんの目にはもう眉毛の太いツンデレ紳士なんて見えない」

「んだとこの変態髭ワイン野郎…!!ちょっと表でろ…フルボッコにしてやるよ」

「よーし受けて立つよー?あ、返事しちゃった」

「あかんてーフランシス」


どんだけマイペースなんだこいつら…!!
やべっ!!名前の奴機嫌悪いから…


「皆さんいい加減に…」

「はい名前ちゃん。お兄さん特製ケーキ持って来たよ〜。味には自信あるからさ」

「…是非ゆっくりしてってくださいねー!!あ、お茶淹れますんで座っててくださいーい!」


食い物で釣られやがったぁぁあああ!!
どんだけ単純なんだよどんだけ甘いもの好きなんだよお前ぇええーー!!


「ちょっ、名前ちゃん顔色悪いやん!どないしたん!?」


トニーの野郎が名前の肩を持って詰め寄っていく。
アーサーが握り拳を構えたのを俺は見逃さねぇ


「またどっか体調悪いん?」

「大丈夫だって。ただの二日酔い」

「なんやービックリした。そやったらゆっくり休んでた方がええんとちがう?」

「そうそう。お茶なんていいから座ってなよ、名前ちゃん」

「フランシスさん…」

「あ。初めて名前呼ばれた。可愛いよー名前ちゃん可愛いよ〜!!」

「それ以上近づいたら下半身使い物にならないようにしますよ」


お決まりのドS発言によりフランシスの動きがピタリと止まった。
って、何頬染めてんだアーサー…!!


「名前ちゃんご飯作るとこだったんやろ?俺が作ったるさかい大人しく座ってテレビでも見ときー」

「え…でもそんな」

「今日休みやさかい気にせんでええんやで。よっしゃーまた親分特製料理を名前ちゃんに食わせたるでー!」

「ありがとうトニーさん!」

「お礼はハグかほっぺにキスでええよー!」

「そっちが目的かテメェ…!!」

「アーサー。お座り」

「俺は犬じゃねえ!!」

「大差ないんじゃないのか〜?キャンキャン喚くし好きな子には従順だし」

「…フランシス。表出ろ。ケリつけてやる」

「いいよーどうせ俺が勝つんだし?」

「アーサー。死なない程度に頑張ってね」

「やっぱりまだ根に持ってるのー!?」


ギャーギャーとうるせぇ奴らだな…
まぁいい。あの二人が居なくなって静かになったし俺はゆっくり一眠りでもするか


「あれ。ギル寝ちゃうの?」

「あぁ。飯できたら起こせよ」

「はいはい。おやしゅみプーちゃーん」

「プーって呼ぶな」


名前はテレビのチャンネルを持つ反対の手で俺の頭を撫でた。
…ガキ扱いしやがって



―――




「お待たせ名前ちゃーん…って、なんやギル寝てもたんか?」

「ご飯が出来たら起こせって言われてたんだけど…気持ち良さそうに寝てるしこのままにしておこっか」


なんや、いっぱい作ったのにしゃあない奴やな。
でも邪魔されんで名前ちゃんと話せるし、まぁええか


「そやね。はい、特製パエリヤやでー!名前ちゃん家の冷蔵庫いっぱい食材入ってたさかい豪華なのができたわー」

「ほわぁあ〜!!美味しそう!!」

「今よそったるさかい待っててやー!」

「ほんとに美味しそうだなー。トニーさんってお料理上手だね」


子供みたいに無邪気に笑う名前ちゃん見てたら心臓がバクバク鳴ってきた。
ほんまこれ、重症やなぁ〜…


「ほんま?じゃあこれからは料理の達人トニーって呼んでくれてええよー」

「アハハ。それ長くて呼びづらい!」

「んじゃ縮めてトニーで」

「そのまんまだし。面白いなぁトニーさんは」


名前ちゃんはなかなか俺のこと呼び捨てで呼んでくれん。
ギルやってあのアーサーやって呼び捨てで呼んでんのになぁ…。
年上に礼儀正しくっちゅーのが彼女の考えらしい。日本人らしくお堅い性格やけど、そこがまたかわええよなぁ〜


「おいしー!!」

「せやろー!もっといっぱい食べてや!」

「うん!でも本当に悪いね、トニーさん。前にもご飯作ってもらっちゃったし。あ、今晩夕食食べていくよね?でもこんなおいしい料理食べさせてもらって、お礼が私の料理なんて割に合わないなぁ〜」

「名前ちゃんの料理食べれるんめっちゃ楽しみにしてたんやから!」

「そんなに美味しくないよー。ギルなんていつも”微妙ー”だの”そこはかとなく美味い”だよ?ったく何様のつもりだっつーのあのプー太郎」


うわ…!!なんやねんギル、贅沢すぎるで!
毎日名前ちゃんの料理食べれるだけで幸せと思えよなあ!!
それにしてもこいつ、ほんまに名前ちゃんの事なんとも思ってないんやろか。
まぁその方がこっちとしては好都合やけど。
そやけどずるいよなぁ〜ギルだけ。
俺やって名前ちゃんともっと近づきたい。


「なぁ名前ちゃん」

「んー?」

「アントーニョって、呼んでみて?」

「…何故に」

「ええからーお願い〜!なっ?」

「んー…アントーニョ?」



…首かしげるんは反則やで…。

あかん、心臓の音煩い…!!
名前呼んでもらっただけでこんなに嬉しくなるなんてなぁ〜。ほんまに、こんなん初めてやわ。

俺本気で好きなんや、名前ちゃんの事


「トニーさん。顔赤いですよー?」

「え!?うわっ、ちょっ…今の俺見んといて!!」

「隠さなくてもいいじゃん、アントーニョ?」

「ああぁああ!!もうあかん!!苛めんといてー名前ちゃん!!」

「ハッハッハ。だって真っ赤になったトニーさんトマトみたいで可愛いんだもん。はぁ〜癒される!」

「トマトみたいって…」


そういや昔そんな事あいつにも言ったよなぁ…
てかそんなに俺顔赤いん!?
はずかしいわー…


「アントーニョ、トニーさん…。うん、やっぱりトニーさんの方が言いやすいわ」

「そうでっかー…」

「それともやっぱりアントーニョって呼んだ方がいい?」

「いや、ええ!!今はまだトニーさんのままで!!」

「今は?」

「今はまだ名前ちゃんが眩しすぎて免疫がついてないねん…!!だからもうちょっとしたら、呼び捨てで呼んでくれる…?」


恥ずかしくて手の甲で顔半分を隠した。
今までこんなに誰かを好きになった事なかったから知らんかったけど、恋って難しくて恥ずかしいもんなんやなぁ


「ぶふっ。何それ」

「そういう事、です」

「まぁそこまで言うなら今はトニーさんのままにしておくね」

「ありがとな、名前ちゃん」

「そのわけ分かんない免疫とやらが出来たら私のことも名前って呼び捨てで読んでね」

「えっと…はい、そうさせていただきます」

「なんで標準語!?」


恋なんてしたことない。
だからゆっくり、自分のペースで少しずつ名前ちゃんに近づけたらええんや
よっしゃー!他の奴には絶対に負けんでー!


「んぁ…?なっ…お前何一人で食ってんだよ!?起こせって言っただろーが!!」

「あ、ギルおはよー。気持ちよさそうに寝てたから起こすのも可哀想かと思いまして」

「何が可哀想だ!!どーせお前一人で俺の分まで食うつもりだったんだろ!?ったくこれだから食い意地のはった女は!!マジでお前デブになんぜ!!デーブデーブデ…」

「…トニーさん」

「んー?何?」

「そこにあるロープ、取ってくんないかな」

「これ?はいどうぞー」

「え?ちょっマジで?やっ止めろ!!ごめんなさい!!謝るからベランダだけは…!!

「ギル…」

「…はい」

「お仕置きターイム」


手足を縛られたギルがロープでベランダに吊るされた。
なんやようわからんけど、ドSな名前ちゃんもたまらんなぁ〜!!!!


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