「なんだい名前ちゃん…こんな所に呼び出しちゃったりして…。今更お兄さんのフェロモンにやられて愛を伝えに来たのかい?それなら俺はいつだって歓迎しちゃうよ…」

「何素敵な勘違いしてるんですか。この間相談に乗ってもらったお礼にお昼ご馳走するって電話で言ったでしょーが!!」

「いや、確かにそう聞いたけどさ…。名前ちゃんの両脇ので俺の事めちゃくちゃ睨んでる二人は何、番犬?」

「いや…フランシスさんに会うって言ったらどうしても自分達も行くってきかないものでして…」

「おい髭テメェ…。こいつに手ぇ出したらどうなるか分かってんだろうな、あぁ?」

「分かった、分かったからテーブル乗り越えて胸倉掴むのやめて!!」

「アーサー、行儀悪いよ」

「う…ごめん…」


素直に謝り再びフランシスさんを鋭い眼差しで睨んだアーサーは大人しく彼の胸倉を離す。
先日相談に乗ってもらったお礼に、とフランシスさんにお昼をご馳走する予定だったんだけどいつの間にかギルとアーサーも後からついてきて…。
トニーさんに告白されたことは誰にも内緒にしてるわけだから二人がいるとやりにくいなぁ…。
この二人には特に知られたくないし。


「まぁお兄さんはいつでも相談に乗るよ〜。可愛い名前ちゃんの為だからね」


フランシスさんも空気を読んでくれたのかトニーさんの事については触れない。
流石はフランシスさん!こういうとこは認めてますよ、私。


「それじゃあお言葉に甘えてご馳走になろうかなーっと」

「なんでも注文しちゃってくださいね!」

「名前、俺オムライスとグラタン」

「そんなに食べられないでしょーが。グラタンは私と半分こにしよう。私はそれから…ビーフシチューにしようかな」

「やれやれ…すっかりお母さんだねー名前ちゃん…それでいいのかギル…」

「なっ、誰が母親だ!!こんなのが母親だったらグレるぞ!?」

「既にグレてるから…」

「食事の場で騒ぐんじゃねーよ。ったくこれだからマナーの悪いやつは…」

「アーサー、それさっき机に乗り出して胸倉掴んでた人の台詞じゃないよ」


フランシスさんに奢るという事で少しいいお店を選んだんだけど、これならファミレスの方が良かった。
アーサーが低い声で凄むから周りのお客さんビックリしてるんだけど。
そろそろチンピラみたいな事しちゃう癖直してくれないかなぁ…。


「ところでフランシスさん、お店は大丈夫なんですか?」

「あぁ、あそこは本当にお兄さんが暇な時に手伝いに行ってるだけだから」

「暇な時って…普段何やってるんですかフランシスさん…」

「ナ・イ・ショ☆」

「今全力でその髭むしりとってやりたくなりました」

「やれ名前、俺が前面的に協力する」

「グラタンうめぇええええ!!!」

「なんでお前らお兄さんに冷たいの…」


溜め息をつくフランシスさんを無視して運ばれてきた料理に舌鼓をうつ。
うん、やっぱり美味しい。
しばらく他愛の無い会話を続け、ついでにデザートも食べて行くことにした私達はダラダラと時間を過ごした。

ふと店内の窓ガラスの外を見つめると、こちらをじっと見つめている女の子が立ってた。
あれは…アイス君と同じ学校の制服だよね。
どうしたのかなぁ…。なんだか私達のほう見てるような気がするけど。


「どこかで見たことがあるような」

「ん?どうしたんだよ」

「いや、ね。あそこに居る可愛い女の子がどこかで見たことがあるような気がして…」

「可愛い女の子!?どこどこ!?…って…」

「あれ、どうしたんですかフランシスさん」

「あらまー…あれうちの娘…」

「「「は…?」」」


やれやれとどこか嬉しそうに笑ったフランシスさんが立ち上がり、見せの外に出るとこちらを見ていた少女の肩を掴んだ。
ぽかんとその光景を眺めていると、少し嫌がるように俯いて歩く少女をつれてフランシスさんが再び店内に戻ってきた。


「紹介するねー。この可愛い子はセーちゃん。お兄さんの可愛い妹なのさっ!」

「はぁああああ!?」

「妹ぉおおお!?」

「フランシスさん……いくら妹萌えの心があるからっていたいけな少女を無理矢理…!!見損ないましたよ!!いや、最初から見損なってますけど!!」

「酷い!!酷いから!!」

「ねぇ、セーちゃん…だっけ?このおじさんに変な事されてない?厭らしい目で見られたり触られたり卑猥な台詞言われたりしてない…?」

「色々セクハラまがいの事言われてますけど…大丈夫ですよ、一応」

「一応って何…。いや、さ。今俺が住んでるとこの近所の子で小さい時からよく知ってる子なんだよ。だから本当の妹みたいでさ」

「そうだったんですか…」

「セーちゃん、こっちの可愛い子が名前ちゃん。そんでそっちの目つきわるいのがプーちゃんで、こっちの眉毛がアーサー」

「俺の説明が眉毛ってどういう事なんだよ、あぁ?」

「アーサー、紳士紳士」


アーサーが凄むからセーちゃんビックリしてるよ…。
その様子に気づいたのか、小さく舌打ちをして紅茶の入ったカップに口をつける。


「へぇー、セーちゃんは一年生なんだ。ね、同じ学年にライヴィス君って子居ない?」

「あ、居ます居ます。同じクラスですから!」

「おおー!偶然!知り合いなんだよーライヴィス君と!」

「マジですかー!偶然ですね!!」

「だよねー」

「いやぁ…いいなぁ女の子同士が話してるのって…華やぐっていうかさ…」

「まぁ、な…」

「おいアーサー、ケーキ要らないなら俺様が食ってやるよ」

「ったく…欲しいなら勝手に食えよバカ」

「んー」

「あれ…なんかお前ら仲良くなった?」

「「全然」」

「あ、全然なんだ…」


ケーキを食べながら男三人を無視し、女同士の会話を楽しむ。
やっぱり女の子はいいよねぇ…。
周りが男ばかりだからやっぱり女の子と喋ると気持ちがホカホカしてくるよ…。
ケーキをご馳走してあげると、セーちゃんはとっても嬉しそうに「ありがとうございますぅうう!」と喜んでくれた。
ふふふ、可愛いなぁ。

セーちゃんにすっかり元気を貰った私は機嫌よくお勘定を済ませフランシスさんとセーちゃんと別れた。
私にもあんな可愛い妹が居たらなぁ…。
なんて呟くと、「弟みたいなのは沢山いるのにな」とアーサーに返された。
弟か…それだけでも本当の兄弟の居ない私にとってはとっても嬉しいことなんだけどね。



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