「俺も一緒に行くぅうううう!!!」

「だからダメだっつってんだろ馬鹿!!お前今日も予定入ってんだろーが!!」

「そんなのどうでもいいよ!!俺だってまたお爺ちゃんとお婆ちゃんに会いたいんだよ!!」

「アルフレッド君。また今度に、ね?ほら。電車の時間も迫ってる事だし…」

「そうですよアルフレッドさん。何もこれが最後のチャンスというわけでもないのですから」

「何も何週間も会えなくなるわけでもないしな。ほんの数日間だ」

「ルッツの言うとおりだぜ。ただこいつの実家で美味いもん食って新年迎えて正月を一緒に過ごすってだけじゃねーか。あとなんだ、餅つきしたり正月遊びしたりか?」

「こら!!ギルベルトさん!!」

「う、うわぁああああん!!」

「ああもうアホギル!!なにアルフレッド君は羨ましがるような事言ってんの馬鹿ぁああ!!」

「何名前の体にしがみ付いてんだよ馬鹿!!離せ!!本当に電車に乗り遅れるだろ!?」

「一緒に連れてってくれないならいっそのこと名前だけ置いて行ってくれよ!!じゃないと離れないんだからなバカァアア!!」

「我侭を言うな!!地からずくでも引き離してやる…!」

「あああ電車が来てしまいましたよ電車がぁああ!!」


なんで私はいま駅の改札の前でアルフレッド君にしがみ付かれているんだろう。
それと言うのも、実家に戻るべく家を出て駅に到着した時の事だった。
ボストンバックを片手に待ち伏せしていたアルフレッド君が爽やかに「俺も一緒に行くよ!」と親指を立てていたんだ。
すぐさまアーサーが「帰れ!」と言ったけどなかなか諦めてくれなくって…
そうこうしているうちに電車は来ちゃうし…あーもう、誰かなんとかして!!


「パーティーがあるんだろ!?お前がいなくてどーすんだよ!」

「何の為の双子だと思ってるんだい!!マシューが居れば一人二役で万事解決じゃないか!」

「できるわけねーだろ馬鹿!!」

「いえいえ、そういった演出は昔からよく漫画の中で出されるドキドキハラハラ感を引き立てる手法ですよ。できないなん事はありません!!」

「そんな事言ってる場合かーっ!!」

「ああもう!!ともかく皆電車に乗りなさぁああい!!!」


その叫ぶ声に全員一斉に電車に乗り込む。
車内に入ると同時に扉が閉まった。
はぁ…なんとか間に合った…。


「って、結局アルフレッドも連れてきてしまった…」

「絶対行くんだぞ。また俺だけ仲間外れなんて嫌だ」


後から私にしがみ付いたままにぷくっと頬を膨らましてアーサーから顔をそらすアルフレッド君。
仕方ないなぁ…。次の駅で降ろすのもなんだか可哀想だし…。


「アーサー。連れて行ってあげようよ。お爺ちゃんとお婆ちゃんも喜ぶだろうし…。特にお爺ちゃんはアルフレッド君の事可愛がってたから来てくれたらすっごく喜ぶと思うんだ」

「名前…!」

「はぁ…ったくしょうがねーな…。親父には自分で言えよ。俺は知らないからな」

「あぁ…!!やったー!!これで名前と一緒に正月が迎えられるんだぞぉおお!」

「まったく…しょうがないやつだ…」

「おいルッツ、ビール持ってきてねーのか?」

「俺が酒を持ち歩くなんてことするわけないだろう」


とりあえず適当に空いている場所に座り、ホッと溜め息をつく。


「初っ端から疲れてしまったな…」

「ルート君…。結構今からの道のり長いけど大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だ。しかし本当に部外者の俺まで一緒に行ってしまって良かったのか…」

「大丈夫だって。ルート君も私の家族みたいなもんだし。お爺ちゃんとお婆ちゃんにも紹介したいしね」

「そ、そうか…」

「私も名前さんのお爺様とお婆様にお会いするのは久しぶりですね…。お元気な顔を拝見させていただけるのがとても楽しみです」

「本田は名前の祖父母に会った事があるのか?」

「えぇ。名前さんが引っ越してきたばかりの時にご挨拶していただき、お婆様とはそれから何度かお話させていただきました」

「うちのお婆ちゃんは本田さんを言い負かすような凄い人なんだよ」

「なんだと…!?」

「あの時は…いやはや、名前さんのお婆様には敵いませんよ…」


今回も色々言い負かされちゃうのかな、本田さん。
ふふふ、すっごく楽しみだ。




「お爺ちゃんお婆ちゃんただいまー!!」

「ケセセ!!帰ったぜー!」

「俺も遊びに来たんだぞぉおお!!」

「玄関先で騒ぐなよバカ」

「ここが名前の実家か…」

「お邪魔します。お世話になります」


寒い中やっとの事で実家に到着した。
やっぱりこっちは寒いなぁ!!雪も積もってるし…。
玄関から入って中に声をかけてみるものの、奥から誰かが出てくる気配がなかった。
おっかしいなぁ。二人ともどこか近所にでもでかけてるのか。


「まぁ適当にくつろいでてよ」

「もうくつろいでるぜ!!」

「お前ちょっとは遠慮しろよな…」

「古風な家だな…」

「改築とかもしてないからねー。あ、でもトイレはリフォームしたからやたら綺麗だよ」

「落ち着きますねぇ」

「お爺ちゃーんお婆ちゃーん!!俺だよ俺!!俺が遊びに来たんだぞー!!」

「俺じゃわかんねーだろうが…」


それぞれ久しぶりの私の実家にその辺りをウロウロと歩き回っていた。
本当にどこに行ったんだろ、二人とも。


「名前!!お婆ちゃん居たよ!」

「あらあら皆もう帰ってたの〜?離れにいたから気付かなかったわ」

「お婆ちゃん」


お婆ちゃんの腕を掴んで小走りで走ってくるアルフレッド君。
離れに居たから気付かなかったのか…。


「お帰りなさい。皆もよく来たね〜!!あらやだプーちゃん、前よりかっこよくなったんじゃない!?」

「俺様のかっこよさは日々輝きを増すぜ!!」

「お久しぶりです。今回もお世話になってすみません」

「あらあらアーサー君も相変わらずかっこいいわねぇ。あとでまたお婆ちゃんとデートしてね」

「お久しぶりですお婆様」

「あら、本田さん!久しぶりねぇ〜。あいかわらずいい年して若い子からかって遊んでるの?」

「お婆様こそ相変わらず面食いですね」

「お互い様じゃないのー。あらま!!そっちのかっこいい体格のいい青年はどちらさん!?」

「俺は「こいつは俺の弟のルートヴィッヒだぜ!!」兄さん…!!」

「あらあら!!貴方がプーちゃんの弟さんなのね〜!やだ、超かっこいい!」

「いい年して頬染めないでよお婆ちゃん…」

「何言ってるの〜。まだまだ少女のような心を持ってるんだよお婆ちゃんは」

「私もまだまだ若者には負けませんよ名前さん!!」

「そろそろ引退しなさい年寄りコンビ」


お婆ちゃんとの再会を果たし、ギルとアルフレッド君とアーサーはお婆ちゃんを囲むようにしてあれよこれよと土産話に花を咲かせていた。
久しぶりに会ったけど元気そうで良かった。
あれ、そういえばお爺ちゃんは…。


「お婆ちゃん、お爺ちゃんは?」

「あぁ、離れの小屋で餅つきの道具を出してたんだけどねぇ。そういえば帰りが遅いわ…。倒れて地面はいつくばってるかもしれないから見てきてくれるかい?」

「ちょっ、何アッサリ恐ろしい事言ってんの!?しょうがないなぁ…」

「俺も一緒に行こう」

「ありがとうルート君」


ルート君と一緒に裏口から庭に出て広い畑の奥に建っている小屋に向かう。
裏口にあったサンダルが小さくて歩きにくそうなルート君が可愛いくてつい笑うと後頭を小突かれた。


「お爺ちゃ〜ん?」

「おぉ、名前。帰ってきとったんかい」

「うん、ただいま」

「明日する餅つきの準備しててなぁ…。って、なんじゃその大男はぁああああ!!」

「あー…初めまして。俺はその…ギルベルトの弟のルートヴィッヒだ」

「ルートイッヒ!?」

「ルート君だよ。かっこいいでしょ」

「まさかお前、ポチからその男に乗り換えたんか!?」

「いや、乗り換えて無いっていうか何の話ですかクソジジイ」

「ポチ…?」

「お爺ちゃんギルの事ポチって呼んでんの」

「……」

「今ちょっと笑ったでしょ」

「少しな」

「ドS」

「この臼運ぶの手伝え、タロウ」

「タロウ!?お、俺の事か!?」

「ほら、お爺ちゃん横文字苦手だから」

「マッスル太郎、早く運ばんかい」

「いや、マッスルって横文字なんじゃないのか?」

「細かい事は気にしちゃいかんぞ!!」

「そうそう。さぁー早く帰ってご飯だ!」

「お前がそんな性格な理由がよく分かった…」

「え、なんで?」


臼を運び終わり、家に戻れば早くも夕飯の支度ができていた。
あらかじめ準備しててくれたんだねお婆ちゃん。
皆でわいわいと夕飯を食べ、恒例であるお爺ちゃんとギルの飲み比べに今回はルート君も加わった。
お酒の飲めないアルフレッド君はちょっと拗ねてお婆ちゃんの横にぴったりとくっつ
きながらアーサーの背中に「六弦眉毛」と書いて遊んだ。

やっぱり実家はホッとするなぁ…。
明日はもう大晦日だし色々やる事もあるよね。
御節の手伝いもしなきゃなぁ。
餅つきはこの力が有り余ってる連中に任せよう。
今年のお正月は賑やかになるね。



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