「あの…僕こういうの向いてないんだけどなぁ…」

「頑張れー幹事さん」

「名前さん…人事だと思ってー…。えっと、今年も皆さんお疲れ様でした。今年も色々あった一年でしたけど、本当にいい年だったなぁなんて思います」

「なーに硬い事言ってんだっぺ!!」

「もぉお!だったらデンさんが言ってくださいよー!」

「しょうがながっぺ。今年も一年お疲れ!!来年も成績伸ばして会社から給料わんさかぶんどっでやっぺ!!!はい乾杯!!」

「「「かんぱーい!!」」」


まったくデンさんは…もっと上司らしい挨拶できないのかな…。
まぁ今更気にする事でもないか。

お酒好きの多い我が部署の忘年会は毎年とんでもない事になるんだよなぁ…。
去年なんてデンさんに散々お酒を飲まされた挙句、目が覚めたら何故かティノ君の家に運ばれてたし…。
今年は絶対酔わされないぞ。


「あれ、名前さん飲まないんですか?」

「うん。今年は去年みたいな目にあいたくないし…」

「んだな…。あんま飲まね方がええ」

「料理を楽しむとするよ。あ、スーさんお酌するよー。はいどうぞ」

「…わり」

「はいはいティノ君も!」

「ありがとうございます。それにしても今年も色々ありましたねぇ…」

「だよねぇ…。去年はそうでもなかったように思うんだけどなぁ」

「名前さんはギルベルトさんと暮らし始めてから変わりましたよね」

「やっぱりそう思う?まぁ実際かなり生活環境変わったよね。友達も沢山増えたし」

「僕達まで色々と誘ってもらえて嬉しいですよね、スーさん」

「んだ…。感謝しでる」


そっか…特にスーさんは気軽に話せる友達が少なかったから、きっとすごく嬉しいんだよね。
見た目が怖いからってちょっと皆遠ざけちゃうけど…。今はもう色んな人と楽しく会話もできるみたいだし。
私もなんだか嬉しいな。


「うんしょ」

「あれ、ノルさん…。どうしたんですか?」

「あんこがうざいから逃げてきた」

「あぁ…」


ノルさんが元居た場所を確認すると、デンさんが酒を煽って部下に絡んでいる姿があった。
成る程、確かにあれは鬱陶しい。

お猪口にお酒を入れてノルさんに手渡しすると、「おめも飲め」と空いているお猪口を差し出されてしまった。


「いや、あの…ノルさん…。私飲めないし」

「飲めないって?上司の注いだ酒が飲めねってのけ?」

「うあああ!!ノルさんが!!ノルさんが苛めるぅうう!!」

「ははは…ノルさんってスイッチ入るとちょっとSなんですよねー。ファイト名前さん!」

「ファイトじゃないよティノ君!」

「のら、飲め」

「うっ…。じゃあ一杯だけ…」


ノルさんに渡されたお酒をちびちびと飲む。


「女々し。一気に飲め」

「な、んっ…!?」

「最後まで流し込めねっともっと飲ませるっぺ」

「んぐっ、んんんんーー!!」

「うわぁあああノルさん!!名前さんがぁあああ!!」

「なんだっぺーノル。酔ってんのけ?ノルは酔うとおっかねーからなぁ」

「んぐぐぐぐぐぅうううう!!!」

「そーけ、もっと飲みてぇか…んだ」

「ぶはっ!!ちょっ、ノルさん、やめぇええええええ!!!」

「うああああ名前さぁあああああああん!!!」

「いい子だべ」



それからの記憶は、無い。





「って、結局俺が迎えに来るのかよ!!」

「す、すみませんギルベルトさん…。皆お酒飲んでるから車で送って帰れないし…タクシーもなかなか捕まらなくってギルベルトさん呼んだ方が早いかなぁって」

「ったくしょうがねーな…。アーサーのやつもいねーから車出せねーし最悪だぜ…」

「ちゃんと背負って帰ってくださいね。名前さん軽いし大丈夫ですよぅ」

「じゃあお前がやれよ…」

「僕はスーさんを連れて帰らないと!!デンさんとのみ比べなんてしちゃって、真顔で酔っ払ってるから怖いんですからね!!それじゃあモイモイ!」


ったく…結局俺頼みかよ。
もし俺が居なかったらどうするつもりなんだ。

……。

俺がもし居なかったら…酔わされた挙句誰かに持ち帰られるなんて事もありえる…よな…。


「くそ…。これでいいんだか悪いんだか…」


背中で気持ち良さそうにすやすや眠る名前の体をもう一度持ち上げて体勢を立て直す。

あー…星が眩しいぜ…ちくしょう…。


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