「なんで俺はトナカイなんだよ!?」

「さぁ。本田さんがギルにぴったりな衣装を選んだとか言ってたけど」

「本田あんにゃろー!!!そういうお前はちゃんとしたサンタの衣装かよ…」

「うん、いつもながらにスカートの丈ギリギリだよね。むしろ開き直った」

「まぁ悪くねーんじゃねぇ?あ、でもしゃがんだりすんなよ。特に眉毛の前では」

「何だよそれ」


着替えも済んだしプレゼントの用意もできたし…。
そろそろ時間だしアーサーに車出してもらわないとね。


「コートを羽織ってっと…。よし、行こうか!」

「なんだよそのでかい袋…」

「皆のプレゼントが入ってるんだよ。なんだかプレゼント袋持ってる本当のサンタさんみたいで嫌だなぁ…」

「用意できたか…ってなんだよそのでかい袋は!!」

「皆のプレゼント!さて、行きましょうか」


大きな袋をアーサーに持ってもらい車に乗り込む。
アンダンテに向けて車を走らせれば、イブという事もあってか外にはいつもより多くの人が行き交う姿が見えた。



「メリークリスマスエリザ!!」

「キャァアア!!名前可愛い!!すっごく可愛いわこのサンタの衣装!!やっぱり私と菊さんの目は間違っていなかったわね!!」

「エリザはなんとも露出の高い…。トナカイなんだね」

「俺と同じじゃねーか!!ケッセセセ」

「は…?」

「ギル、やめておきなって…。怪我するよ…」

「うっ…」

「他の皆はまだ来てないのかな?」

「フェリちゃんたちはもう来てるわよ。ローデさんのピアノを聞いてるんじゃないかしら?」

「そっか。あ、先にエリザにもクリスマスプレゼント渡しておくね。手作りで申し訳ないんだけど…」


大きな袋の中からプレゼントを取り出しエリザに手渡しすると、目を潤ませて「名前大好きよ!」と抱きしめられた。
む、胸が…あたって苦しいです…。
後に居るギルが煩い。


「お前そんな短いスカートなんだからあんまり暴れるなよな…」

「そうなんだよねー。ねぇアーサー、衣装交換しようか」

「何考えてんだよバカ!」

「だってアーサーのはスタンダードすぎて面白くないしさぁ…」

「ヴぇー!!名前だー!!うっひょー可愛い可愛い!!兄ちゃん見てよ、名前すんごい可愛いよー!!」

「なんだとっ!?」

「メリークリスマス、フェリ君にロヴィーノ君」

「んだよ可愛いじゃねーかちくしょー!!」

「フェリ君とロヴィ君も可愛いねー…。二人で並ぶと尚可愛いなぁ!後で写真撮らせてね」


この二人は何着せても似合いそうだよね…。
あれ、そういえばルート君の姿が見えないけど…一緒じゃないのかな。


「ルッツは来てないのか?」

「来てるよー。ローデリヒさんのピアノの傍でビール飲んでる」

「そっか。あ、二人にもクリスマスプレゼント!!味はギルが保障してくれるみたいなんだけど…期待はしないでね」

「ヴぇー!ありがとう名前〜!!」

「でも俺たちは何も用意してねーぞちくしょー…」

「いいよいいよそんなの。私が勝手にやってる事なんだしね」

「グラーツィエ、名前!」


二人に肩に手を置かれ、両側から挟むようにして頬にキスをされてしまった。
この子達は相変わらず平気で恥ずかしい事を…!!
顔が火照りそうになるのを必死に抑え、また後でねとその場を立ち去る。
あー、心臓に悪い…。


「ん…どうし、」

「やぁルート君…。ほんとあの二人は心臓に悪い…」

「お、お前…その格好は…」

「いや、ルート君も同じでしょうが。サンタさん似合ってるねルート君」

「あぁ…そうだったな。メリークリスマス」

「メリークリスマス。はいこれ、クリスマスプレゼントね」

「俺に、か…」

「大した物じゃないんだけどね…。お菓子とクリスマスカード」

「ありがとう。俺もお前にプレゼントがあるんだが…。他のやつの分は用意できなかったからお前にだけだ」

「マジですか…!!嬉しいなぁ…」


ルート君から綺麗に包装されたプレゼントを受け取った。
その場で開けようとすると、頬を赤くして「帰ってから見てくれ!!」と凄まれてしまった。
そんなに恥ずかしいものなのか…。


「おや、ちゃんと渡せたようですねルートヴィッヒ」

「ローデリヒ…!」

「メリークリスマスです、ローデさん。これ大した物じゃないですけど…」

「あら、ありがとうございます。私からも貴方にクリスマスプレゼントを贈らなくてはいけませんね…」

「え…そんなのいいですよ!!」

「貴方のお好きな曲を弾いてさしあげましょう。何でも仰いなさい」

「いいんですか…?」

「ただしクラシック限定です」

「うわぁ…私が知ってる曲少ない…。それじゃあタイトルは覚えて無いんですけど、こんな感じのメロディーの…」


適当に覚えているメロディーを口ずさむと、「タイトルぐらいちゃんと覚えてなさい」と小さく溜め息をつかれた。
ローデさんがピアノに座って指を鍵盤に乗せると、聞きなれたメロディーが店内に流れ始める。


「相変わらずいい音出してるなぁ…悔しくなっちゃうぐらい」

「フランシスさん。来てたんですか」

「あれ…冷たいなぁ名前ちゃん…」

「ちょっと待ってくださいね…えーっと、これクリスマスプレゼントです。大した物じゃないんですけど…お菓子作ってみました」

「おー。名前ちゃん腕上げたから楽しみ楽しみ。実はお兄さんも名前ちゃんに特別にプレゼントあるんだよなぁ」

「……変なものじゃないですよね」

「何でそんな目で俺を見るの!?」


信用無いんだよなぁ、フランシスさんは…。
少し涙目になったフランシスさんから可愛い紙袋を受け取った。
なんだろう、これ…。


「お兄さん手作りのお菓子。特別な女の子にだけプレゼントしてるんだ」

「わぁ…すっごい嬉しいです!!フランシスさんのお菓子…!」

「すっごく美味しいと思うから味わって食べてね」

「はい!ありがとうございます!」

「こら名前!!私の演奏をちゃんと聞いていたのですか!?」

「ヒィイイ!!ローデさん…あ、はい…聞いてましたとも…!!」

「おいおいローデリヒ。お兄さんと名前ちゃんの仲を裂こうっての?野暮だなぁ〜」

「男黙りなさい。名前、演奏はどうでしたか?」

「えっと、やっぱりすっごく音が綺麗ですよね。ずっと聞いていたいぐらいに…。す、すみません…もっと専門用語とか使って表現できればいいんですけど…」

「まったく…。ですが貴方のそういった所は嫌いではありませんよ…」

「ローデさん」

「単純で分かりやすいですし」

「褒めてます?」

「さぁ」

「……」


ローデさんにはいつも敵わないなぁ…。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -