「え、家の修理ですか?」

「えぇ。最近あちこち古くなってきていたのですが…。先日腐った床に足を突っ込んでしまいました」

「うわー…」

「そこで修理する部屋の、荷物の整理をしたいのでギルベルトさんに手伝っていただけないかと思い…」

「いいですよそんな。ねーギル。本田さんには普段お世話になってるんだし」

「まぁな。暇だし手伝ってやるよ」

「ありがとうございます。それではさっそく今日来ていただけますか?」

「うわー。マジで早速ですね」


朝早く、ビール箱を抱えてやってきた本田さん。
相変わらず当たり障りのない優しい笑顔は爽やかな朝にぴったりだ。
そんなこんなで本日本田さんのお家にお手伝いしに行く事になったギルベルト。
ちゃんとできるのかなぁ…


「それじゃあ私はお仕事行って来ます」

「はい、お気をつけて」

「ギルー。ちゃんと働くんだよ?あと本田さんの迷惑にならないようにね」

「わーってる」


本当に分かってんのかこいつ…
まぁ相手は本田さんなんだし大丈夫だよね。



―――



「ただいまー…って、ギルはまだ戻ってないのか…」


仕事が終わっていつものように帰宅。
しかし、いつもはそこにあるギルの姿が見当たらなかった。
うーん、まだ本田さん家だよね?
私も様子を見に行ってこようかな
私の住むマンションから本田さんの家までは徒歩5分程度だ。今時珍しい純和風の大きなお屋敷だから分かりやすい。


「ギルの奴ちゃんと働いてるかなー」


また二人でアニメばっか見て片付けやってないとか…。うん、充分ありえるな。
最近ギルの奴アニメばっか見てるみたいだし…。
まぁ本田さんみたいに「幼女萌えぇええ!!」だなんて言わないだけまだましか。
そんな事になったら私、泣くぞ。


「よぉお嬢さん。落し物ですぜぃ」


ポンポン、と後ろから肩を叩かれた。
やけに江戸っ子口調だなぁ…


「ありがとうございま、ってギョォオオオオ!!!」


ななな、なんだこの人ぉおお!?
なんか仮面被ってるよ!?顔半分仮面かぶっちゃってますよぉお!?
怖っ!!オ●ラ座の怪人んんんん!?


「なんでい急に叫びやがって」

「へっあっ…すみません」

「ほらこれ。お嬢さんのだろぃ?」

「あ…」


ごつごつとした手の平に乗せられた鍵。
本田さんにもらったピカチ●ーのキーホルダーがついたそれは紛れもなく私の家の鍵だった


「あっ…!!そうです!すみません、拾っていただいたのに大声あげちゃって…」

「まぁ気にすんな。俺もこんなの被ってっから驚かせちまったんでい。ほら、これならもう平気だろ?」


仮面の淵に親指を沿え、ぐいっと持ち上げる。
え…うそーん…


「え…」

「どうでい。男前な顔だろい!」

「あ、えっと…はい!?ややや、やだなーご冗談!!」

「お前さんおかしな嬢ちゃんだなぁ。まぁ今度から鍵なんて落すんじゃねーぞ!世の中物騒だからねい。そんじゃあな!」


軽く手を上げて、仮面を下ろした彼は夕焼けをバックに去ってしまった。
え、ちょっと…やばっ…!!
ス ト ラ イ ク ゾ ー ン!!!


「あれ、名前さんどうしたんですかこんな所で」

「なんだよ。今ちょうど帰るとこだったんだぜ」

「おや。顔が赤いですよ名前さん。何かありましたか?」

「え!?あ、あはははー!!何でもないですよー本田さん!!」


さっきの人…大きくて男らしくて優しくて…
大変です、私のストライクゾーンでした…。


「おぉほんとだ。顔赤いぞお前。また熱でもあるんじゃねーか?」

「ギルベルトさん。ここはおでこをごっつんこですよ!!!ごっつんこ!!」

「なっ…!!そそそ、そんなことしねーよ!!」

「またまた。たまにはデレておいてもいいのではないですか?それにしても名前さん、本当に顔が赤いですよ。大丈夫ですか?」

「こ、これは…夕日のせいだぜ、バカヤロー!!!」

「名前さんんんん!?ちょっどうしたんですか本当に!!救急車を、救急車と美人女医を呼んできてくださいギルベルトさぁああん!!!」

「で、電話番号って117か!?」

「ちがいます177ですよ!!あれ?なんか違和感」

「いや、落ち着けって。どこも悪くありませんから!!」

「だって名前さんがそんな名探偵コナ●のような臭い台詞を言うなんてありえない事ですので…」

「も〜!いいから帰りますよ!!本田さんも一緒に晩ご飯食べるでしょ!?ほらほらさっさと帰る!!」

「なんなんだよコイツ」

「そういうお年頃なんでしょう。見守ってあげましょう」

「うるせーぞお前ら!!」


やばい…顔が熱いよー…
さっきの人、本当に私の好みと言うか、タイプの男性だったと言うか…。

…また、会えるといいなぁー


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