「ふぁーっ!!風が冷たいけど楽しいなぁロヴィーノ!!」

「寒いぞちくしょー…」

「雪があるんやから当たり前やろ〜。お前ももっと滑ったらどうや?体温まるで」

「名前もいねーしつまんねー」

「そういや名前ちゃんの姿見当たらんなぁ。どこ行ったんやろ」





何故、こんな事になった。
え、いや、ただ普通に滑ってただけだよね?
普通に滑ってたら後からデンさんが迫ってきて避けようと思ったらぶつかって…。


「動かないでくださいよデンさん!!」

「滑んだからしょうがながっぺ!」


二人して地面に尻餅をついてしまい、お互いのスキー板が絡まってしまい上手く身動きがとれない。


「まったく何をやっているのですかあなた達は…」

「ローデさぁあん!助けてくださいよー」

「仕方ないですね…。じっとしていなさい」

「頼むっぺ!」


大きく溜息をついたローデリヒさんに助けてもらいなんとか離れられる事ができた。
良かった…。デンさんと密着してるとか何されるか分かったもんじゃない。


「あれ、そういえばローデリヒさんはスキー板履いてませんけど…。スキーしないんですか?」

「しませんよ。寒い上に屋外は苦手ですので」

「え、じゃあんで来たんですか!?」

「……お察しなさいこのスットコドッコイ!!」


…皆と一緒に来たかったんですね、ローデリヒさん。
また貴族チョップを食らわされた。ちくしょう。


「名前さーん!」

「あれ、ティノ君。まだ滑ってないの?」

「はい。今スーさんがピーター君と一緒にそりに乗ってるんです。だから写真撮っておこうかなって」

「それは微笑ましいねー」


近くを見れば二人一緒に赤いそりに乗っているスーさんとピーター君の姿があった。
ふふふ、スーさんも楽しそう。だけど顔はいつものように凄んでるから周りの人が怯えてるけど。


「名前〜!!」

「楽しそうだねピーター君」

「楽しいのですよ!まぁそりなんて子供の遊びですけどね!パパに付き合ってあげてるのですよ!」

「んだな」

「またパパって呼んでるんだピーター君…」

「名前、一緒に競争するのですよ!!」

「競争?」

「シー君チーム対名前チームでレースです!僕が負けたらお菓子あげますよ!でも名前が負けたらシー君にレンジャーソードの玩具買ってください!!」

「何その差は…。まぁいいか。ピーター君はスーさんと組むんだよね。なら私はティノ君と組もうかな」

「え、僕ですか…?」

「ダメ?」

「ダメじゃないですけど…うーん、まぁいいか」

「それじゃあ先にこの眼鏡のとこに着いたほうが勝ちですよ!」

「眼鏡とは私でしょうか?代名詞で呼ぶんじゃありませんこのお馬鹿!!」


そんなこんなでピーター君とレースをする事になりました。
人の少ない場所を選び、スタートラインに並びそりに乗り込む。


「大の大人がそりに二人乗りなんてねぇ…」

「ははは…。名前さんは前に乗ってください。コントロールも僕がしますから名前さんは僕の体にもたれておいてくださいね!」

「おぉ、ティノ君なんだか頼もしい!」


プラスチック製の赤いそりに乗ると、続いて後からティノ君が私の体を抱きこむようにしてそりに乗り込む。
さぁ、準備は万端だ!


「それじゃあ行きますよ!よーい、スータトォオ!!」

「よーし!」


ピーター君の合図と共に最初の勢いをつけて走り出すそり。
まぁこんなのは子供の遊びだし適当に負けてあげればいいよねー


「…名前さん、しっかり捕まっててください」

「…え…?」


いつもよりトーンの低いティノ君の声に背筋が凍ったような気がした。
え、っていうか何今の声…え…?
後ろを振り向くといつもの可愛いティノ君の笑顔とは打って変わり、目がギラりと輝き口元は少し笑みを浮かべていた。

って、えええええええええ!?


驚いているのもつかの間、少しピーター君達にリードされていたと思いきやティノ君の華麗なるテクニックによりスピードは勢いを増し、ぐんぐんと差をつけてローデリヒさんのすぐ横にぴったりに到着した。
ピーター君たちとすれ違った時、スーさんが思いっきりこっちを見て青ざめていた気がする。


「あら、お早いですね」

「ろ、ろでさっ…あばばばば…!!!」

「ふあー!そりなんて久しぶりに乗ったから楽しかったですねー!」

「てぃ、てぃのくん…」


さ、さっきの黒い顔は…何?



「むきーっ!!負けたのですよぉお!!」

「あああ、ご、ごめんね!つい血が騒いじゃって…」

「ねぇスーさん…」

「…ん」

「血って何…。実はフィンランドの暴走族ですか彼は。そりで雪山を暴走ですか」

「…サンタクロースの…血?」

「今適当に言ったでしょスーさん」

「…悪ぃ」

「去年スキーした時はあんなじゃなかったよね…」

「そりだげ、か」


車の運転をすると性格変わっちゃう人は居るけど…。まさかそりで…。
少しティノ君を見る目が変わった、そんな瞬間でした。


「ヴぇ〜!名前ー今の見てたよ!そっちのも楽しそうだね〜」

「フェリ君。あれ、ルート君とギルは一緒じゃなかったの?」

「んー。なんかね、ギルベルトが調子に乗ってスピード出しすぎてちっちゃい子が作ってた雪だるまに突進しちゃったんだー。それで気を失っちゃったからルートが中に運びに行ったよ」

「ギル…」


こんなとこまで来てなに不憫なことやってんだろうあの子は…。





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