「はいアイス君。お弁当」

「わざわざ作ってくれなくても…迷惑かけてごめん、名前」

「私が勝手にやってる事なんだから〜。ただの自己満足です。それじゃあいってらっしゃい」

「うん、ありがとう。行ってきます」


お弁当を受け取って制服姿で出かけて行ったアイス君。
しばらくここに居たいって言うからそうさせてあげてるけど…いったい何時まで居るのかなぁ、アイス君。
ご両親が帰ってこればデンさんの監視もなくなるしアイス君も安心して帰れるんだと思うけど…アイス君のご両親も忙しい方たちみたいだからねぇ…。


「それじゃあギル、ついでにギルの分のお弁当も作っておいたからお昼はこれ食べてね」

「おー…」

「えーっと、こっちはアーサーのでこっちは私の分っと…。それじゃあ行ってきまーす」

「いってらっふぁい…」


完全に半分寝ている状態でゆらゆらと手を振るギル。
ったく、能天気なやつだなぁ。


「アーサーおはよー」

「あぁ、おはよう」

「今日アイス君の為にお弁当作ったんだ。一応アーサーの分も用意したんだけど、食べるかな?必要ないならデンさんにでもあげようかと思うんだけど…」

「た、食べるに決まってんだろ!?い、いや、今日はたまたまいつもみたいに外じゃなくて会社で食べたい気分だったし…。別にお前の弁当が食べられるのが嬉しいから言ってるんじゃないんだからな」

「はいはいツンデレツンデレ」


渡したお弁当をぎゅっと胸の前で抱きしめて頬を赤く染めるアーサー。
素直じゃないなぁこの眉毛も。
他人からの好意に慣れていないからついついツンデレになっちゃうもんね、アーサー。

妙にによによと笑って嬉しそうなアーサーと別れていつものように会社に到着し席に着く。


「おーっす名前」

「あ、おはようございますデンさん」

「アイスはどうだっぺ?ちゃんと学校行ったか?」

「はい、今朝早くちゃんと行きましたよ」

「そーけ。ったくあいつ何が嫌で出て行くんだかなぁ…。兄ちゃんは分かんねーだ」

「きっとそのデンさんのデリカシーの無さが原因だと思うんですけどね…」

「ん?なんか言ったか?」

「いーえ。何も」



鈍感上司め…。




―――



「あら、いらっしゃい名前!」

「こんばんはーエリザ!」


いつものように少しアンダンテに寄り道をすれば扉を開くなりエリザの素敵な笑顔が迎え入れてくれた。
きっとここの常連はこれがお目当てで毎日のように通いつめてるんだろうなぁ…。
気持ちは良くわかる。


「名前か」

「ルート君!この間はわざわざ家まで送ってもらってありがとう」

「いや、構わない。俺が勝手にした事だしな」

「今日はフェリ君は一緒じゃないの?」

「今日はって…べ、別にあいつと四六時中一緒に居るわけじゃないぞ!?」

「そうなんだ」


ルート君はフェリ君とずっと一緒のイメージあるんだけどなぁ。
ルート君の隣に座ってコーヒーを飲みながら楽譜を見ていたローデさんに「座ってお話をしなさい」といつものように叱られた。


「そういえば今私の家にアイス君が来ててさ」

「あら、あの子…。どうしてなの?」

「デンさんが嫌になってまた逃げてきたんだって。可愛いよねぇ」

「待て名前!!そいつも男なんだろう!?」

「そうだよ。って言ってもまだ高校生だけど」

「年齢は関係ないだろう…!!男をやすやすと泊めるなんて…!!」

「いや、だって既にギル一緒に住んでるし」

「兄さんは…したくても何もできないからいいんだ。ヘタレだしな」

「ワーオ。今酷い事言ったよこの弟」

「まったくもう、あなたと言う人は何度注意しても危機感と言うものが身に着かないようですね!!」


二人から散々お説教をくらってヘトヘトになってしまった…。うう、なんで私がこんなに叱られなきゃなんないんだよ…!!
だけど家に帰った時、玄関まで迎えに出てくれたアイス君が「お弁当すっごく美味しかった」と言ってくれたのでそんな疲れもすぐにどこかに吹っ飛んでしまった。
ほんと…うちの子になってくれないかなぁアイス君…





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