「こんばんはギルベルトさん。先日はぽちくんを預かっていただきありがとうございました。遅くなりましたがこれ、お土産です」

「あぉー!ビールじゃねーか!」

「はい。旅先の名物ビールだそうで…。ところで名前さんはどちらに?」

「あぁ、まだ帰ってきてねーぜ」

「へ…?もうこんな時間なのに、ですか?」

「あぁ」


時計を見ればもうとっくに帰ってきてもいい時間。
それというのも今日はティノの一日遅れの誕生日祝いをするとかで帰りが遅くなるらしい。


「そうでしたか。でしたらこれを名前さんに渡していただけますか?」

「あいつにも土産かよ?」

「えぇ。名前さんに似合いそうな衣装があったのでつい…」

「ついなんだよ!?」

「ふふふ。どんな顔して私の所に乗り込んでくるでしょうね…楽しみです」


こいつ…わざと楽しんでやがる…。
本田を中に入れて適当にビールの缶を渡すと、半分ほどまで一気に飲み干して大きく溜め息をついた。


「はぁ…やっと落ち着きました…」

「そんなに大変だったのかよ、取材旅行ってやつ」

「ええまぁ…担当も一緒だったので…」

「あぁ、あいつか」

「あちこち連れまわすわ迷子になるわ腹痛おこすわで大変でしたよ。取材所じゃありませんでしたもん」

「マジかよ…お前も大変だな」

「えぇ…」


―ピンポーン


「この時間に玄関のチャイムが鳴るという事は…」

「居留守使おうぜ、居留守」

「いけませんよギルベルトさん。私が行ってきます」


よっこいしょと声を出して立ち上がった本田が小走りで玄関に向かう。
本田が消えていった方からアーサーの声が聞こえて、名前はどうしただとか本田に詰め寄っている様子が分かった。


「ちくしょー…名前が居ると思ってケーキ買ってきたのに…」

「上がってくんのかよ!!っていうかそのケーキよこせ!腹減った」

「誰がやるかバカ」

「ギルベルトさん夕飯はどうするんです?」

「キッチンになんか作ってあると思うぜ」


この状況を予想してか、一人で食べるには多すぎる量のカレーがキッチンに用意してあった。
適当に暖めて男三人でビール片手にカレーを食う事になったけど…。
…むさ苦しいぜ…。


「せっかくケーキ買ってきたのになぁ…」

「あいつもあっちで食ってるだろうしな」

「アーサーさんはいつも名前さんにそうやってプレゼントをされていますよねぇ…。ふふふ、素敵です」

「べ、別にあいつの喜ぶ顔が見たいからとかそんなんじゃないんだからな!!」

「じゃあこれもらい」

「って、お前が食ってんじゃねーぞコラァアア!!!」


眉毛のキーキー鳴く声を聞きながらカレーとケーキを食べ終わる頃に帰宅した名前。
ベールの背中に乗せられて泥酔状態だった姿から見て、かなり飲まされた事がよく分かったぜ。
多分上司に飲まされたんだろうな…。
ソファーで眠りこける名前の顔をアーサーのやつが幸せそうに眺めていたもんだから、名前をベッドまで運ぶ羽目になっちまった。
ったく、しょうがねーやつだぜ。





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