「あれ、まだ名前ちゃん帰ってきてへんの?」

「まぁな」

「っていうかお前名前ちゃん駅まで迎えに行かんでええん?」

「アーサーと一緒に帰るから大丈夫なんだとよ」

「なんやねん、またあいつか…」


冷蔵庫の中にあったビールの缶をアントーニョに投げると「おおきになぁ」と缶を受け取った。
名前のやつ今日も帰り遅いな…。
またあの眉毛とどこか寄り道してんのか?
確か朝コーヒーが切れたとか言ってからかもしかするとエリザんとこかもしんねぇよな。


「今度スキー行くやん?その日泊まる旅館温泉あるらしいし俺めっちゃ楽しみにしてんねん〜」

「そうらしいな」

「団体さんやから宿泊代も安くなったし名前ちゃんに加えてロヴィもフェリちゃんもおるなんて楽園みたいやんなぁ…。ほんまめっちゃ楽しみやで」

「そうだよな!!フェリちゃんも一緒とかマジ楽しみすぎるぜ!!」

「温泉ってなんやええ感じやんなぁ〜。お風呂上りで浴衣着てる名前ちゃんとかほんまええと思うわ〜。あかん、想像しただけでたまらんわ!!」

「…お前フランシスに感化されてんじゃねーの?」

「何言ってんねん。俺元々変態やん」

「…そうだなったな」


俺はあいつの風呂上りとか毎日見てるからどうってことねーけどな!!
けど風呂上りに浴衣か…。きっと髪とかまだちょっと濡れてて浴衣もちょっと結び目が緩い感じで…
頬なんかもほんのり赤くなってるに違いないよな。
やべ、なんかこれ良いかもしんねぇ…。


「たっだいまー!遅くなってごめんね〜ギル」

「名前ちゃんお帰り〜!」

「あ、トニーさん!!来てたんだねー。いらっしゃい」

「お疲れさん名前ちゃん。今日俺バイト休みやってん〜」

「そうなの?トニーさん来てるって分かってたらもっと早く帰ってきてたのになぁ」

「名前ちゃん…あかんて、あんまり親分の純情ハート刺激せんといてっ!!」

「あ、トニーさんあのマフラー巻いてくれてるんだね。私すっごく嬉しいよ!」

「ぐふぉあっ!!親分1000のダメージッ!!」

「はいはいターンエンド。今から晩ご飯作るから待っててねー」


ちくしょう…。なんとなく前より仲良くなってるような気がするぜこの二人…。
トニーのやついつも美味しいとこ持って行きやがるからな。


「名前、さっき言ってた話なんだけどな」

「げっ!!眉毛やん!!」

「眉毛って呼ぶなよバカ!!っていうかお前ここで何してんだよ!?山に帰れ山猿」

「あぁん?お前こそママの居るお家に帰れやボンボン。あんま調子に乗ってるともっぺん骨折る事になるで」

「やってみろよ。やれるもんならな」

「俺を挟んで喧嘩してんじゃねーよ!?」


睨み合いをする二人に挟まれて若干寒気がした。
こいつらほんと洒落になんねーほど過去に荒れてたらしいしマジでやべえって。
そんな張り詰めた空気の中、「喧嘩してると二人ともベランダに放り出して一晩一緒に寝てもらう事になるよ」といつもより声のトーンの低い名前の声が響き、何故か俺まで背中に冷たい汗が流れた。

なんかこいつには誰も勝てねえ気がしてきた。





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