「ん…よく寝た〜…。てか頭いたっ!!飲みすぎたなぁ…。ん…?あれ、ギル何やってんの」 「いや…別に」 お酒の匂いと頭痛に起こされて、すっきりしない頭を起こそうとしていると目の前にギルの顔があった。 時計を見れば時刻は午前8時。 そういえば私ギルの膝借りたまま寝ちゃってたんだっけか。 ギルの奴一晩中膝に乗っけたままで居てくれたのかー。普通なら放りなげてそうなのに珍しい。 「悪いねーギル。膝借りたままで。疲れたよね?ゴメン」 「え…いや、別に…」 「さっきからそればっかだなどこのエリカ様だお前。てか何顔背けてんのー、反抗期か」 「ちがっ…!!馬鹿近寄るな!!」 「養ってもらってる相手を馬鹿よばわりかテメェ。ったく…」 そういえばイヴァンとライヴィス君は何時帰っちゃったんだろ…。ずっと寝ちゃってて申し訳なかったなぁ 連絡先、教えてもらえばよかった 「さーてと。この散らかった部屋を掃除しないとねー」 「俺はしばらく寝るぜ」 「はぁ?何言ってんの手伝えっちゅーに」 「一睡もしてねーんだから寝かせろ馬鹿野郎」 そっぽを向いたままそう呟いたギルはソファに横になった。 一睡もしてないってどういう事だ? 寝づらかったのか…。なら私のせいじゃん。しょうがない、ゆっくり寝させてやろう 「あ、ギルー。私のベッド使っていいよ。ここ片付けるから煩くなるし」 「…」 「嫌ならいいけど」 「いや、使う」 「ふーん」 ふらふらとした足取りで私の部屋に入っていくギルを目で追った。 何なんだ、あいつ 「ま、どうでもいいか。さーて掃除掃除ーっと」 ―――ー 「ったくあの馬鹿女…」 酔った勢いとは言え恋人でもない男の膝で熟睡するか?普通 いや、あいつは普通じゃなかったんだよな…。 ちくしょー、顔が熱いぜ…。そういえばこのベッドあいつが毎晩使ってんだよな…。 って、こっこれはそんなんじゃないぜ!? べべべべ、べつにあんなペチャパイ女がくっついて寝てたからってそんな… ぶっブハハハ!!そんなの笑えちゃうぜー!!プップー!!馬鹿馬鹿しくて笑が止まらないぜ!!フハ、フハハハハハ!!ゲホッ… 「…はぁぁ〜〜…」 ――― コンコン 「ギルー。もうお昼飯の時間ですよー?」 …反応ないなぁ。相当熟睡してるんだろうか。部屋に入ったままずっと出てきてないし…。 しょうがない、無理矢理たたき起こすか 「ギールー。ギルベルトさーん!」 「ん〜…」 やっぱり寝てるか。 あらまー気持ち良さそうに寝ちゃって… なんだか起こすのもかわいそうかなぁ。 大きめのダブルベッドに手足を広げて寝ているギル。あ、ヨダレ出てるよヨダレ。 近くに寄って眠っているギルの顔をつついてみると「んー…」と鳴いた。 可愛いなチクショー!! なんと言うか、母性本能みたいなのがくすぐられると言うか…虐めたくなるというか… もう少し虐めてやろうかな 「えい!」 むぎゅー 「んぅ〜…」 見た目より柔らかい頬を抓ると眉を寄せて苦しそうにした。 いい反応だなー 頬に添えていた手を頭に移し、サラサラとした髪を撫でてみた。 やっぱり柔らかくて気持ちいよなぁ、これ。 日本人にはありえないような綺麗な色だし羨ましい。 それにこいつわりと顔は悪くないからどんな服でも似合いそうだな。 今度スーツでも着せてみるか。化粧すれば素敵なレディーに変身するかもしれない。 「ん…名前…?」 「あ、起きた?もうお昼飯できてますよー。よく寝てたねぇギルベルト」 「ん…?あー…」 目を覚ましたギルは、かすれた声で私の名前を読んだ。違和感を感じたのか、右手で頭に乗っている私の手を握る。 「ギルの髪柔らかいから、つい」 「そうか…」 なんだかまだ眠そうだなぁ…。 今日は一日寝かせてあげたほうがいいのかもね。最近おつかいだの料理だのって、色々家事も手伝っててもらってたし今日ぐらいはゆっくりさせてあげよう。 「今日はゆっくり休んでていいよ、ギル」 隅っこに追いやられている布団をめくりギルの体を覆わせて、ポンポンと布団を叩いた。 これじゃあまるでお母さんみたいだなぁ 「それじゃあ、お休みギル」 さて、私は昼ご飯を食べてアーサーのところにでも遊びに行こうかな。 ぐいっ 「…ギルベルトさん…?」 「お前も寝ろよ」 「いや、私はちゃんと寝ましたから。腕掴まないでください。」 「いいから寝ろって」 「よくない。今からご飯食べるんです」 「だから、ここに居ろ…」 だからの意味がわかんないよ!! 寝転んだままの状態で私の腕を掴んでいるギルの目はまだ寝ぼけ眼だ。 しかし、どこか弱弱しい…寂しそうな声でそう言われたものだから、たまったもんじゃない。 これじゃあその手を振り切れないじゃないか。 「はぁ〜…しょうがないなぁ。ギルが寝るまでここに居るから。だから早く寝なさーい」 ベッドに腰掛けて頭をポンポンと叩くと、納得したギルはゆっくり目を閉じた。 ものの数秒後には規則正しい寝息が聞こえてくる。 寝るの早いなぁ…。やっぱりさっきのは寝ぼけてたのに近いのか。 あのギルが、私に傍にいてほしいなんてありえないもんねぇ。 あれ、なんかそれって悲しくね? うーん… 「まぁ、いつかあんたもここから出て行っちゃう日が来るかもしれないんだもんね…」 私としてはずっとここに居て欲しいけど、ギルがそれを望んでいなかったらしょうがないもんね。 今まで家族の事やどこに住んでて、どんな生活をしてたのか聞いたことなかったけど、ギルには本当に帰る場所がないんだろうか… まぁ、本人が言い出すまで聞かないでおこう。 それに、聞いてしまったらギルはここから居なくなってしまうような気がするんだよね… きっと、私が探しても見つからないような、ずっと遠くへ。 いつかそんな日が来たら、私はどうするんだろう。 今はこんなにもギルが居る生活に慣れてしまって… 「まぁ…そんな事悩んだって仕方ないよねぇ…。ギルが幸せな道なら、私はどこに行っても嬉しいよ」 だけど今は、まだこうしてギルと一緒に暮らしていたいです。 「勝手にでてったりしないでよね…ギルベルト」 大きな手をギュっと握り締めると、返事をするかのようにキュっと手を握り返された。 うん。大丈夫、これからもきっと楽しい生活が続くはずだ。 皆で一緒に騒いで、笑って。 だって、それ以上の幸せなんて、無いと思うんです . ←|→ |