「親父に叱られた…ついでに母にも…」

「あらまぁ…」


机に突っ伏してうずくまるアーサーのボサボサとした髪を流れにそって撫でた。
どうやら先日アルフレッド君のお父さんの知り合いのどこかのご令嬢と食事に行ったらしいんだけど、相手の人の気分を害してしまったらしい。


「やっちゃったねぇアーサー…。そんなに嫌なお嬢さんだったの?」

「いや、別にそんなわけじゃないけどさ…」

「まぁしょうがないじゃん。っていうかお母さんにも怒られたって言ったけどさ、お母さんからも結婚推されてんの?」

「あぁ…。そのうちアルフレッドの親父とピーターの親父と三人で組んで何かしてきそうで怖いな…」

「それはちょっと怖いね…」


でもお見合いが破局になったって聞いてなんとなくホッとしたような…。
私達まだ若いんだし結婚なんて早いよねぇ、うんうん。


「お、お前は何歳で結婚したいとか願望あるのか?」

「んー。別に三十過ぎたぐらいでいいんじゃないのかな。まぁいい人を見つける事から始めないといけないけど」

「今居る知り合いにいい相手居ないのかよ…」

「うーん…あんまり考えたことないなぁ…。スーさんはとってもいい旦那さんになると思うよ。スーさんのお嫁さんになる人は幸せだなぁ…。あとデンさんとだけは絶対に結婚したくない。浮気されるからね、絶対に」

「そ、そうか…。お、俺はどうだ?いい夫になると思うか?」

「アーサー?そうだね、嫁さんの言う事聞いて料理さえしなければいい旦那さんになれんじゃない?あと酒は控えめにすればなお良し」

「なるほどな…」

「何メモとってんの」

「いや、別にお前の事リサーチしておこうとかそんなんじゃないんだからな…」

「あぁそうですかー」


まったくこの眉毛は何やってんだか…。
お風呂から上がって私とアーサーの間の少ししか空いていない隙間に入り込んだギルは、「ん」と言ってタオルを私に差し出した。
あぁ、乾かせってことですね。
地べたに座らせてギルの髪を乾かしてやると、頭を私の膝の上に乗せて仰向けになった。


「こら。乾かせないでしょーが」

「んー」

「お前なぁ…髪ぐらい自分で乾かせよ!!」

「あぁ?めんどくせーんだよ。それにこっちの方が気持ち良いし」

「うっ…!!」

「はいはいちゃんと頭上げて。膝濡れて冷たい」

「へーへー」


ふるふると震えるアーサーの隣で髪を乾かし終え、私もお風呂に入るためにバスルームに向かう。
湯船に入った瞬間、リビングから二人の喧嘩する声がこっちにまで届いていたけど…。
まぁ、怪我しない程度なら喧嘩ぐらい良いか。
あの二人の喧嘩なんて子犬が噛みあってるようなものだしねー。
さて、ゆっくり湯船に使って疲れを癒すか。





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