「ティノくーん!いくつか忘年会に使えそうないいお店調べておいたよ」

「うわぁ!ありがとうございます名前さん!」

「アーサーに教えてもらっただけなんだけどね」

「さすがアーサーさんだなぁ…。僕からもお礼を伝えておいてくださいね!」

「うん!」


一応下見とかしておいてお店予約しておかないとね。

お店の名前が書かれた一覧を書いた紙を肩越しに覗いたスーさんに驚いたティノ君が「おひゃぁあああ!!」と悲鳴をあげた。
スーさん、背後からはいけないよ…背後からは…。



―――



「名前、あなたと言う人は!!」

「痛ぁっ!!なっなんですかローデリヒさん、いきなりチョップしてくるなんて酷いですよ!!」

「この浮気者!!そんなふしだらな女性に育てた覚えはありませんよ私はっ!!」

「私もローデさんに育てられた覚えはありませんけどぉおお!?」

「今日アントーニョが貴方の作ったマフラーを巻いてわざわざ自慢しにやってきましたよ!!どういう事ですか!?あれはアーサーにプレゼントすると言っていたじゃありませんか!」


仕事からの帰り道。いつものようにアンダンテに入るなり、どすどすと足音を立てて近づいてきたローデリヒによる貴族チョップが脳天に入った。


「えええ!?トニーさんわざわざローデリヒさんに見せに来たんですか…!?」

「えぇ。近くを通りかかったからと言って。どういう事か説明してもらいましょうか?」

「えーっとですね…これにはちょっとした事情と成り行きで…」

「どういう事情ですか。事によっては許しませんよ!三日間お菓子抜きですからね!!」

「ローデさんはどんだけ私のお母さんになりたいんですか!?」

「お馬鹿!!私は女性ではありませんよ!?」

「そういう問題か!!ええっとですね…」


若干痛む頭を擦りながらプスプスと頭から湯気を立てるローデさんに説明をする。
理解してくれたのか、「そういう事なら仕方ありませんね」と私の頭を撫でてくれたローデさんが本当のお母さんに見えてきた事は言わないでおくことにする。


「しかしまぁ…折角作ったのに残念でしたね」

「しょうがないですよ。アーサーもかなり気にしてたみたいですけど…この間アーサーと二人でアーサーのマフラー選びに行ったんですよ」

「そうでしたか…」

「ローデさんにも手伝ってもらったのになんかすみません…」

「それは構いませんが…あなたがそんなに不器用だったとは思いませんでしたよ」

「うっ…あ、あれはちょっと久しぶりだったんで失敗しただけですよ…」

「貴方はドジなところがありますからね」


まったくもうと溜め息をつくローデリヒさんが店の奥からケーキを持ってきてくれて食べさせてくれた。
本当にこの人はよく私の面倒をみてくれるよなぁ…。
感謝します、ローデリヒさん!





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