「さみぃいいい!!」

「うん…ほんとに本格的に冬が来たって感じしてきたよねぇ…」

「ああもう外出たくねーよこんな日は!!部屋でゲームしてるか本田ん家でコタツに入るのが一番だぜ」

「嫌ならわざわざ迎えに来てくれなくていいんですよーだ」

「ケッ。可愛げのねー女だぜ」

「うるさいなぁ」


ポケットに手を突っ込んで首をすぼめるギルに私のマフラーを巻いてやると「ちょっとぬくぬくだぜ」とマフラーで口元を隠した。

こんな寒い日にはおでんでも食べたいなぁ…。
トニーさんのとこで買い物して帰ろっと。


「今晩何にすんだよ」

「おでんにしようかなーって思ってるけど?」

「おでんかよ。俺様はカレーが食いたい気分だぜ」

「そうか。ならギルだけお子様レトルトカレー買ってあげるね」

「なんでお子様なんだよ!?」

「普通のレトルト買うと高いんだよ馬鹿!!文句言わずにおでん食っとけ!!」

「だいたいおでんって見た目が地味なんだよ。全体的に茶色いし」

「おでんに謝れ。あのだしがきいた素朴で深みのある味が分からないのかギルは!!」

「せやせや!!夜屋台なんかにふらふら〜って立ち寄って食べる大根なんかほんまに神の領域やぞ!!お前におでんを語る資格なんかあらへんわ!!」

「って、トニーさんんんん!?いつからそこに…」

「レトルトカレーがどうのこうのってとこからやで〜。いらっしゃい名前ちゃん!」


爽やかな営業スマイルを見せてくれたトニーさん。
ビックリしたぁ…。


「仕事しなくていいのかよ」

「大丈夫大丈夫。そんな事より名前ちゃん、こないだはほんまにマフラーありがとうなぁ!暖かくて寒い夜も快適に過ごせるようになったわ〜」

「ちょっ、トニーさん!?暖房器具は!?暖房器具はないの!?」

「湯たんぽぐらいはあるで!!」

「ああああトニーさぁあああああん!!お願いだから冬の間だけでも私の家に居てぇえええ!!」

「な、なんやてぇえええ!?そんな、一緒に暮らそうなんて名前ちゃん…俺プロポーズされてもたなぁ…」

「いや、いげーだろ。確実に今こいつの頭の中はフランダース的な展開が予想されてるはずだぜ」

「ああっ!!連れて行かないで天使ぃいい!!」

「優しいなぁ名前ちゃんは…」


幸せそうに周りに花が飛んでいるような笑顔を見せるトニーさんに「寒かったら何時でも来てね」と伝えておでんの材料を買い帰宅した。

ちょっと頑張っておでんを作ってみると、「うめぇ…」と感動して大根と卵を食べ続けるギルに「どうだ」と心でニヨニヨと笑いつつ自分もおでんに舌鼓をうった。

やっぱり寒い日の夜はこれだなぁ…。





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テーマ「人外ファンタジー」
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