「うえええ!!聞いてくださいよ名前さ〜ん!!僕忘年会の幹事任されちゃいました〜!!」

「あらまぁ…。予感的中だったねティノ君…」

「そうなんですよぉ…。お店の予約とか今のうちにしておかないといけませんよね…。僕あんまり良いお店とか知らないから困っちゃうなぁ」

「大丈夫、私達も手伝うからさ」

「んだな」

「あ、ありがとうございますぅううお二人とも!!」


涙を浮かべて頭を下げるティノ君の肩をスーさんがポンポンと叩いた。
うんうん、困った時は助け合わないとね。
私なんて何度も二人に助けられてるわけだし…。
それにしてもこの辺りにいいどこかお店あったかなぁ…。
今晩アーサーにでも聞いてみよう。あいつ顔広いしどこかいいお店知ってるかしれないしね。


いつものように仕事を終え、帰りに耀さんのお店にでも寄っていこうかなぁなんて考えながら会社を出ると、正面に見覚えのある車が停まっていた。
あれ…あの車はアーサーの…。


「アーサーさーん。こんなとこで何してんのかな〜」

「うぁあああ!?」

「うああって何ようああって…」


車の窓ガラスをコンコンと叩いて運転席に乗っているアーサーに話かけると心底驚いた顔をされてしまった。
ほんとここで何してんのこの子…。


「え、いや、たまたまなんだからな。たまたま仕事が早く終わって…車出してたしついでにお前を迎えに来てやろうかなぁとか思いつきで来ただけなんだからな!!」

「はいはいお前の為じゃなくて俺の為なんだよねー分かってるよ」

「わ、分かってんだったら早く乗れよバカァ!!」

「うん。ありがとねーアーサー」

「…うん」


頬を真っ赤に染めてハンドルに額を乗せ「ああもう」と呟くアーサーのボサボサと揺れる髪を撫でた。


「な、なぁ…」

「なに?」

「今からちょっと寄り道してもいいか?」

「いいよー。どこに行くの?」

「いや…マフラー、お前に選んでもらいたくってさ…」

「あぁ。そんな事言ってたね」


少し不安そうに私の顔を覗いてくるアーサーを苛めてやりたい気分になったけど、ぐっと堪えて「うん。アーサーに似合うやつ選んであげるね」と笑顔を見せた。

アーサー御用達らしい某有名ブランドのショップに向かい、棚に並んだマフラーを手に取りじっくりと選ぶ事にした。


「うーん、こっちのも可愛いよなぁ…」

「お前の好きなほうでいいよ」

「アーサー、そんな事言ったらドピンクカラーを選ぶよ私」

「頭下げるからそれだけは勘弁してくれ…」

「はいはい。ほら、こっち向いてじっとしてー」

「ん…」


踵を上げて少し背伸びをし、選んだマフラーをアーサーの首に巻きつけた。
アーサーの体が触れた際にビクリと大きく反応していた気がするけど気にしないでおこう。


「うん、これが一番似合うかな」

「よし、それじゃあこれにするよ」

「うん!」


選んだマフラーを店員に渡してレジに向かうアーサー。
うーん、本当に私が選んでも良かったのかな…。
なんだかんだで気にしてるみたいだしなぁ、この間のマフラーの事。


「何見てるんだ?」

「会計終わったの?」

「あぁ。悪いな、待たせて」

「ううん。それじゃ帰ろうか」

「何か見てたんじゃないのか?」

「ううん、ボーっとしてただけ」

「なんだよそれ」


楽しそうに笑うアーサーと再び車に乗り込み帰路に着く。
帰りが遅いってギルに怒られそうだなぁ。


「いいマフラー見つかってよかったね。これで明日からぬくぬくじゃないかアーサー」

「だけど本当ならお前が編んでくれた方使ってたはずなんだよな…。そう思ったらちょっと虚しい…」

「いや、私が編んだものより今買ったものの方が何百倍も良いと思うよ」

「お前が俺の為に作ったんだろ!?俺の為に…」

「いや、連呼されると恥ずかしいんですけど…」

「お前が俺の為に何かしてくれるなんて…素直に嬉しかったんだよバカ」

「デレた…」


そこまで言われるとこっちも照れるじゃないか。
照れ隠しにと言わんばかりにアーサーの髪をわしゃわしゃと撫でると、ぎゅっと腕を掴まれチュッと音を立てて手首にキスを落とされた。

あぁもう、なんか爆発しそう…。


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