「ギル。今晩お客さんが来るから失礼のないようにしてよね」

「はぁ?」

「客って誰だよ」

「イヴァンさんとライヴィス君」

「イヴァン…?」

「ほら、変態髭野郎に追いかけられた時に助けてくれた人!!昨日スーパーでバッタリ再会しちゃってさぁ。お礼に今晩ご馳走するって約束したんだ〜。ライヴィス君はイヴァンの…友達かなぁ」

「へぇ。すげー偶然だな」

「私もビックリした。ともかく余計な事言って私を怒らせないこと。いい?」

「へーへー」

「返事は“はい”でしょ…?」

「は、はい…」


しつこく言っておかないとダメだからな、こいつは。


「さて、何作ろうかな〜。イヴァンってどこの国の人なんだろ…。色白いし体格いいしロシアっぽいイメージはあるけど」

「んじゃボルシチとポトフだろ」

「単純だなオイ。まぁそれでいいか〜。よっしゃぁあああ材料買ってくんぞお〜!!」

「(やけにテンション高いな…)」



―――



「よーし料理は揃った!!あとはイヴァンが来るのを待つだけだねー」

「おぉー珍しく上手そうじゃねーか!!」

「んだとテメェ。さりげなくいつもは不味そうだって言ってんのかコラ」

「そんなわけないじゃないですかー名前さん…。それにしてもそのイヴァンって奴いつ来るんだ?」

「夕方って言ってたけど。ちゃんと時間聞いておくんだったなぁ」


早くしないと料理が冷めちゃうよな〜。
あ。そういえば、イヴァンに再会できたって変態髭…じゃなくていフランシスさんに伝えておいたほうが良かったかな…?
ま、言っても連絡先しらないし、いちいちアーサーなんかに伝えてもらうのも面倒くさいし、いいよね。


ピンポーン


「あ、来た!!はいはーい!!」

「こんばんはー名前!ご馳走になりに来たよ〜」

「お、お邪魔します名前さん」

「いらっしゃーい!!ささ、入って入ってー


「へぇ〜ここが名前の部屋なんだね。ちょっと小さくない?」

「イヴァンがでかいだけだと思うんだけどね。今お皿持ってくるからその辺に座っててー」

「うん」

「ありがとうございます」


テーブルの前に座ったイヴァンは物珍しそうにキョロキョロと部屋を見回した。
そんなに珍しいものなのかなー。
ライヴィス君は必要以上に怯えてるけど…大丈夫か?


「あ、そうだ。プー!どこにいんのー?」

「お前の部屋ー」

「こっち来てこっち」

「もう一人誰か居るんだね」

「うん。先に言っておきますがただの居候です。何ら厭らしい関係は一切ございません。ご了承ください」

「そう言われると疑いたくなっちゃうよね!」

「ちょ…」


イヴァンって無邪気なんだか…うーん


「あ、ども…」

「こんにちはただの居候で何ら厭らしい関係は一切ないプー君。僕はイヴァンだよ。よろしくねー」

「お前俺のことどんな風に説明してんだよ!?」

「そのままだよプー太郎」

「へぇ。君プー太郎なんだね」

「えっと、僕はライヴィスです…」

「ん?ただのガキじゃねーか。小さいな、歳いくつだ?10か12ぐらいだろ」

「あの…15歳です…」

「マジかよ。見えねーな」


ゴメン、私も12あたりかと思ってた…
ってことは中学生か高校あたりになるのかな?若いなぁ〜


「はいどうぞ。口に合うか分からないけど…。よかったらたくさん食べてねー」

「わー!おいしそうだね!名前が全部作ったの?」

「もっちろん!」

「すっごくおいしそうです!」

「ふふふライヴィス君にそう言ってもらえると嬉しくなっちゃう」

「こいつ年下大好きだからな」

「勘違いされるような言い方をするな馬鹿野郎…」

「君達って仲がいいんだね」

「「どこが?」」

「それにどことなく似てるなぁ〜。ふふ。それじゃあ、いただきまーす」

「いただきます!」


それから二人は”おいしい”と何度も褒めてくれながら綺麗に料理をたいらげた。
その後はイヴァンが持ってきていたウォッカで乾杯。
無理矢理ライヴィス君に飲ませているイヴァンを必死に止めたが、「彼の国ではお酒大丈夫なんだよ〜」と可愛らしい笑顔で言われたが、きっと嘘だと思う。


―――


「いばっ、もう飲めないってぇ〜」

「もぅ。そんなに早く酔っちゃったら僕がつまらないでしょ〜?ほらもっと飲んで飲んで」

「う゛ぇぇえ〜」


うー、頭がクラクラする…
こんなに飲んだの久しぶりだからなぁ〜
ウォッカをロックで飲みつづけるのはさすがにきつい…
ギルはさりげなくビールにかえてるし
うぅっ…きもちわる…


「うえっ」

「ちょっ、大丈夫かよお前」

「ギル〜」

「ったくだらしねーな」

「しょうらいでしょぉー。お前は何ビール飲んでんだよ勘違いすんなよばかぁー」

「意味わかんねーよ!!隣の変態みたいな言い方すんな!」


自分でも相当酔ってるって頭では理解できる。
だけど頭はぼーっとするし、体はふらふら揺れる。

熱い…

でもイヴァンもライヴィス君もまだ飲んでるしなぁー
つかどんだけ強いんだこの二人ー


「はい飲んで飲んでー」

「うっ…もうダメ…」

「ギルベルト君もビールじゃなくてウォッカ飲もうよ」

「うげ…俺はいい!」

「もー、ダメだなぁ二人とも。ね、ライヴィス」

「か、顔色ひとつかえないイヴァンさんもすごいです…」

「うぅうーきもぢわるいよギル〜」

「うわっ!!吐くなよ!!俺の近くで吐くな!!」

「コノヤロー飼い主に向かってなんて口ききやがんだー!!」

「ぶわっ!?」

「キャハハハ、伸びるー!ギルちゃんのほっぺやわらかー!」

「ふは!!やへほぉおお!!」

「プッ!!すごい事になってるよ、ギルベルト君」

「ギル〜」

「ふぁ!?ちょっ近っ…!!」

「ふはは。可愛い可愛いウサギさん」

「はぁ!?」

「じゃあ僕は?」

「イヴァンはおっきくて可愛いから熊かな」

「えー、僕も小さくて可愛いのがよかったよー。熊は名前の家で飼えないでしょ?」

「ダメダメ。小動物限定。隣に猫ちゃんも居るし」

「わー。どんな猫だろー、見てみたいなぁ」

「ちょっとお前飲みすぎだろ…。大丈夫か?」

「てやんでい。大丈夫じゃないに決まってんだろ」

「大丈夫じゃねーのかよ…」

「うん。ごめ、ギル膝貸して…」

「へ、って…!!ちょっ、お前何して…、」


ふらふらする頭と、睡魔に勝てなかった私はギルの膝に頭を置いて目を瞑った。
その日の記憶はそこまでで終わり。

次に目が覚めた時、既に明るくなっている空と部屋の散らかり様…それと動けないままずっと固まっているギルの姿を見るのは次の日の事である。









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