「そんじゃあトニーちゃん、あと任せたよ〜」

「はーい!今日もお疲れさん、おばちゃん」

「トニーちゃんも毎日よく頑張るねぇまだ若いのに」

「働かんとやっていけんさかいなぁ〜。あ、暗いから溝とかはまらんように気ぃつけてや!」

「はいはい。それじゃあお先ね」

「お疲れさんです〜」

「あ!そうだったそうだった。忘れる所だったよ〜。はいこれ、うちで浸けたお漬物!」

「うわ〜!!もらってもええん!?こないだももろたのに悪いわ〜」

「いいのいいの!おばちゃんトニーちゃんのファンだから!それじゃあねー」

「おきにおばちゃーん!」


ビニール袋に入ったたくあんの漬物。
おばちゃんこないに沢山くれて良かったんかなぁ…。
せやけど助かるわぁ!今月も厳しかったからこれでしばらくは白米とつけものだけでしのげるなぁ


「さてと。あと片付けして俺も帰ろかなー」


これからバイトも入ってないし…家帰ってゆっくり寝よかなー。


「そんじゃ店長、お先ですー」

「あっ!トニー君トニー君!!」ちょっとちょっと!!」

「な、なに?どないしたんですか!?」

「ほらほら、あそこ。トニー君がいつも仲良さそうに話してる女の子居るよ」

「あ…名前ちゃんや…」

「彼女よく来てくれるもんねぇ〜。君も彼女の事気にかけてるみたいだし。うんうん、若いっていいなぁ」

「ちょっ、照れますやん店長〜!!」

「このこの!!色男!!」

「店長やてレジのおばちゃんにモテてはりますやん〜!!」

「おばちゃんか〜…ハハハ!泣いていい?」


ぐすんと鼻を啜った店長が「それじゃあお疲れ様〜」と言って店内に戻っていった。
ほんまええ人やんなぁ店長も…。
こんなええ場所で働けて幸せやわ〜。

それにしても名前ちゃんこんな時間に買い物なんかなぁ…。
一人みたいやし仕事帰りではなさそうやんなぁ。
ちょっとしばらく影から見てみよかな

ちょっとした好奇心で、商品の並んだ棚の影に隠れて名前ちゃんの背中を見つめた。
あぁ、名前ちゃん…背中もちっちゃあてかわええなぁ…。
ぎゅーってしてチューしたいわぁ〜はぁはぁはぁ…。
籠の中に何入れてるんやろ…。あれは…ビール?
名前ちゃんが自分で飲むためにわざわざ買いに来るはずないし…まっ、まさかギルが無理矢理買いに行かせたんちゃうやろな!?
『おい名前、酒切れたから買ってこいよ』『い、嫌です…』『買ってこいって言ってんだろ!!それともお仕置きされてーのか?』『イヤァア!!』みたいな展開……
あるわけないか〜。プーはヘタレやもんなぁ。


「トニーさん…何してるの…」

「……あ」


バレてしもた…。







「まさか見つかるなんて思わんかったわ」

「怪しい動きしてたから回りのお客さん見てたよ…。ビックリしたなぁ」

「名前ちゃんおるから何買いに来たんやろなー思ってちょっと見つめてみてん」

「見つめないでも声かけてくれればいいのに」


買い物を済ませた名前ちゃんをマンションまで送る事にした。
せやけどこんな時間に一人で買い物なんて…危ないなぁ。


「ギルは?」

「んー?なんか今日ピヨちゃんと遊びすぎて疲れたみたいで今寝てるよ」

「アホやなぁあいつー」

「だよねー。そうだ、トニーさん夕飯食べて行かない?もう出来上がってるから帰ったらすぐに食べられるよ」

「えっ、ええん?いきなりおしかけても…」

「大丈夫大丈夫。トニーさんが居てくれると楽しいし」


そう言って嬉しそうに笑う名前ちゃんの横顔を横目でチラリと覗くと、その可愛さに思わず息が荒くなりそうになった。
ほんまにええ子やんなぁ、名前ちゃん…。
こうやって隣を歩けるだけで、幸せやねん。


「あーもう…マンション着かんかったらええのになぁ…」

「何故に!?寒いし早く帰りたいよ私は!!」

「そんなら親分がぎゅーって抱きしめて暖めたろか〜?」

「うーん、トニーさん暖かそうだけどなぁ」

「あ、でもロヴィーノの方が体温高いねんで!抱きしめたらめっちゃ暖かいから人間カイロになんであいつ」

「マジですか。今度試してみよう」

「そうし…ってあかんあかん!!あいつに抱きついたりしたらあかんよ名前ちゃんんんんん!!!」

「抱きつかないよ!!いや、確かにぎゅって抱きついてあのくるんとした髪を触りたいとは思ってるけど…」


あかんで…ロヴィは、ロヴィはほんまにあかん…。
確かにかわええし生意気やけど根は優しい子やし…
せやけど名前ちゃんは譲れんわ〜。

そうこうしている内に暖房の利いた名前ちゃんの家についた。
ギルはソファーの上でアホ面で寝てた。
ほんまのん気なやつやんなぁ…。
名前ちゃんが体を揺らしてもなかなかギルが起きんから二人だけで夕飯を食べることになった。
俺としては邪魔者がおらんで願ったり叶ったりやんなぁ〜。
名前ちゃんの料理は相変わらず美味しくて暖かくて、こんな料理毎日食べられたらほんまに幸せやなぁと思った。
ギル…お前ほんまに場所変われ。

「また名前ちゃんと一緒に暮らしたいなぁ」なんて冗談交じりに言うと、「屋根が飛ばされなくても何時でも来ていいんだよ」と悪戯っ子のように笑う名前ちゃんにムネがキュンと高鳴った。
ああもう、ほんまに好きやわ名前ちゃん…!!!






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