死にたい。
いっそ消えて灰になってしまえたのならどれだけ幸せだった事か。

寒さで響く頭の痛さに目が覚めて、ぼんやりとした頭で辺りを見回すと、いつもの自分の部屋ではなく名前の家のリビングである事に気づいた。
そうか…確か昨日は名前と二人でディナーに行って…美味しい料理を食べてムードも満天、おまけに名前のとびっきりの笑顔と言う最高の特典付きで酒も進んで…。

昨日の記憶を順番に辿っていけば、みるみると蘇ってくる自分の犯した事の重大さに「今すぐ灰になってしまいたい」と心の底から思った。

だって…よりによって酔った勢いで…酔った勢いであいつに抱きついて告白まがいの事しちまうなんて…!!!英国紳士の名が廃る!!
ああもうなんで俺はいつもこんな目にあうんだよバカァアア!!


「おはよーアーサー…ねむ…」

「うああああああ!!」

「うおおおお!?何、なんなの!?」


すこし大き目のパジャマ姿のまま現れた名前に色々と堪えるものがあった。
ど、どんな反応すればいいんだよ…
昨日の事もあるからなんとなく気まずいよな…。


「あの、えっと…」

「体痛くない?」

「あ…ちょっと痛むな…」

「だろうねー。ギルが床の上にアーサーの体投げ落としたから」


あいつ後でぶっ飛ばす。


「ちょっと早くに目ぇ冷めちゃったなぁ…。今から朝ごはん作るから一緒に食べようか」

「わ、悪いな…。昨日も結局俺酔っ払って…」

「まったく…昨日は大変だったんだからね。どうせいつものように記憶飛んでるだろうけど」

「いや、今回はちゃんと覚えてる…」

「…え」


ピタリと動きを止める名前との間に重い空気が流れた。
しまった…忘れてるふりしとけば良かったんだよな…。
だけどいつものこいつなら俺が何を言おうが何をしようが、軽く流すくらいのやつなのに…


「まぁ…今度からは酔わないようにね。あと料理は美味しかったからまた連れてってほしいです」

「あ、ああ…!!しょうがねーからいつでも連れてってやるよ…べ、べつにお前の為じゃないんだからな!!俺の為なんだからな!!」

「はいはい。早く自分の部屋戻って準備してきなー。今日月曜だよ?」

「そっか…分かった。準備してくる。悪いな、こっちに泊まらせてもらって」

「床の上でもいいならいつでもどうぞー」

「そ、それはちょっと嫌だな…」


いつかはあのプー太郎を追い出して二人で暮らせればいいよな…
大きな家を建ててガーデニングの楽しめる広い庭を作って…


「名前ー…腹減った…」

「あれ、ギル起きるの早いじゃん」

「ねみー…」


フラフラと起き上がってきたギルベルトが名前の背中にのしかかるような形で体を預ける。


「くっついてんじゃねーよバカァアア!!!!」

「ってお前まだ居たのかよ!?さっさと帰れ眉毛。眉毛が暑苦しいんだよ」

「あぁん?殺すぞテメェ」

「アーサー、ヤンが出てるヤンが」


やはりまずこいつを追い出す事から考えねーとな…
ナチュラルにいちゃつきやがって、羨ましいんだよ馬鹿!
けど俺なんてこいつが名前と知り合うずっと前から名前の友達だし、本当はマンションだってもっといい場所に住めるんだけど敢えてここに居るんだからな。
名前が一番便りにしているのはこの俺だって分かってるし。
こんな奴に負ける気なんて更々ねーよ


「名前」

「なにアーサー」

「昨日酔って言った言葉、全部嘘とかじゃないんだからな!!!!」

「……はいいいい!?」

「なんだよ酔って言った言葉って!?」

「ちょっ、アーサー…嘘じゃないって…だとしたらあの変態発言は…」

「なんだよそれ!?説明しやがれ!」

「お前には教えてやんねーよ!」



願わくば、最後にはこいつの隣に居るのは俺である事を





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