「あいやー。そろそろ寒くなってきたから新作メニュー考えるあるよ!!」

「耀さんのとこのメニューってほんとバリエーション豊かですよね」

「客を飽きさせないのも商売を続けていく上の常識ある。またできたら食わせてやるから食べに来るよろし」

「ありがとうございます」

「名前、テイクアウトできた」

「ありがとー香君!今日は仕事で疲れちゃってどうにも料理作る気が起こらなくてさぁ…。ここの料理なら誰も文句言わないしね」


注文した料理を香君から受け取りお礼を言って店の外に出ると、携帯で誰かに電話をしているアーサーの姿があった。
たまたま帰りが同じ時間になったから一緒に帰ろうって事になったんだけど…。
なんか電話の相手会社からみたいだし、大丈夫なのかな…。


「悪い」

「ううん。電話大丈夫?仕事関係じゃなかったの?」

「まぁちょっとな…。それよりお前こそ仕事で疲れてるならそう言えよ。テイクアウトなんてしなくても俺が作ってやるのに…」

「断固拒否する」

「…そんなに不味いか、俺の料理」

「まずいってもんじゃないでしょ、まず食べ物ですらないよ」

「…そうか…」


顔を背けて「グスッ」と鼻をすすったアーサーの肩を叩き「帰ろう」と声をかける。
べつにそんな事で泣かなくてもいいじゃないか…。
ギルに「今日はアーサーと一緒に帰るからお迎えはいいよ」とメールを打つと「むしろあいつと一緒の方が心配だぜ」と返ってきた。


「そういえば昨日アンダンテでアルフレッド君とマシュー君に会ったよ」

「へぇ、あいつら結構あそこに通ってんだな」

「特にアルフレッド君はあそこのコーヒー好きだからね。イヴァンも一緒に居たからビックリしたよ…なんか険悪な雰囲気だし睨み合ってるし」

「あいつか…。なんていうかあいつって独特な雰囲気があるよな。俺も苦手だ」

「そうかなぁ。純粋で子供っぽくて可愛いけど」

「そう思ってるのお前ぐらいだと思うぞ…」


はぁとため息をついたアーサーの息が白くなった。
うーん、最近は本当に寒くなってきたよね。
ギルが探してくれたマフラーを巻きなおして首を埋めると微かながらも温かさを感じた。
そういえばアーサーはいつもコートだけだよね…。寒い時は襟立てたりして。


「アーサーはマフラー巻くの嫌いなの?」

「いや、そういうわけじゃないけど…。なんとなく巻かないだけだな」

「ふーん…」


もし私がマフラー編んだら、アーサーは巻いてくれるかな。
挑戦してみたかったし試しに作ってみようかなぁ…。ギルにも作ってあげよう。巻いてくれなかったらちょっとショックだけど。


家に帰って夕食を食べ終えたあと、クローゼットの奥を探してみると使っていない毛糸と編み棒が出てきた。
そうそう、去年も編もうと思って途中で諦めたんだよね…。
夏にイヴァンに編んであげたこともあったしちょっと頑張れば作れるかもしれない。
ギル達には見つからないようにこっそり編む事にしよう。
編んでるとこ見られてダメだしされると編むのやめちゃいそうで怖いしね。
だけど手編みのマフラーなんて喜んでもらえるんだろうか…。
買ったものの方が綺麗なのは間違いないし、デザインも凝ってるし可愛いし…。
特にアーサーなんかは気に入らなくても気を使って巻いてくれてそうだよね…。
そうなったら申し訳ないよなぁ…。

とりあえず試しに編んでみてからプレゼントするか考えよう。
もしダメだったら…。うん、デンさんにでもあげようかな。
嫌がらせに前にデンさんが不味いと連呼していたゴーヤジュースも一緒にプレゼントしてやろう。

なんて事を考えているとだんだん出来上がりが楽しみになってきた。
よーし、頑張るぞ!



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