「やっほーエリザ!」

「名前!いらっしゃい」

「いつものコーヒーもらえる?家用のやつ」

「えぇ、しばらく待っててね。そうそう…いい所に来たわ、名前。あそこの二人どうにかしてくれない?」

「あそこの二人って…」


エリザが小さく指を指した先。
店内の奥の窓際の席…。
あそこに居るのはアルフレッド君とマシュー君と…い、イヴァン…?


「たまたま鉢合わせになっちゃったのよ。さっきから黒いオーラ出してるもんだから他のお客さんがビックリしててとんだ営業妨害ね」

「な、なんかごめんエリザ…」

「あら、名前が謝る理由はないでしょ?」

「いや、なんか私アルフレッド君の保護者代理みたいなものだしね…ははは」


エリザに「コーヒーよろしくね」と頼んで店の奥へと進んでいく。
途中に置いてあるピアノで演奏中のローデリヒさんが私を見た後にアルフレッド君達の方を目線で指して「なんとかしなさい」とでも言いたそうな顔で私を見た。


「三人で何やってるのー…?」

「あ、名前さん…!!」

「やぁ名前じゃないか!!」

「久しぶりだねー名前」


私が姿を現すと、真っ先に泣きそうな顔をしたマシュー君が私の元へ駆け寄ってきた。
うんうん、あの二人のどす黒いオーラに挟まれてさぞかし苦しかっただろうね…。
まったくこの二人はどうしてこうも仲が悪いのかな…。


「なに笑顔で睨み合いしてんの二人とも…」

「えー?別に睨み合ってなんかないよ〜」

「そうそう、話をしていただけさっ!!」

「そうは見えなかったけど。まったくなんでこうも仲悪いのかなぁ…」

「どんな事より名前、今度の日曜一緒にケーキのバイキングに行かない?僕招待券持ってるんだー。ここに来れば君に会えると思って来たんだよ」

「HAHAHA!それはダメなんだぞイヴァン!!なんてったって名前は今度の日曜俺と一緒に映画を見に行くんだからな!!」

「いや、そんな話聞いてないよ!?」

「今話したじゃないか!」

「どんだけ横暴なのこの子!!」

「ほんとアルフレッド君って自分勝手だよねー。名前の意見も無視しちゃってさ。そんなだからKYとか言われちゃうじゃない?」

「友達が名前しか居ない君に言われたくないんだぞ!!まぁ君の一方的な思い込みで名前は迷惑してると思うけどな!」

「ふふふふ、君こそいつもいきなりおしかけたりして名前が迷惑してるの分からないの?弟としか思われてないんだからいい加減諦めなよ。見ててかっこ悪いよ、君」

「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!黙れゴリラ!!!!」

「コルコルコルコルコル…。死ねよデブ」

「あああああもう喧嘩すんじゃねえええええ!!!」

「煩いですよ名前!!演奏中はお静かになさい!!」

「え、怒られるの私!?」


即興で怒りのテーマソングを演奏し始めたローデさんからの視線を感じつつも二人をなんとか宥める。


「あ、あのね…悪いけど日曜は先約が入ってるから…」

「えー!?またギルベルトかい?まったく彼って本当にずるいよ!!名前と一緒に暮らしてるってだけでもすっごく羨ましいのにいつも独り占めしてさー」

「とっても不本意だけどその意見には同感だよ、メタボバーガー君」

「こらイヴァン!!もう喧嘩は無し!」

「…ごめんね、名前」

「名前の前じゃやけに素直じゃないか」

「だって名前は僕の親友だもん。ねー名前?」

「うん」

「ふふっ!」

「…むかつく…」

「そ、それで名前さん…。日曜は先約って誰かと約束があるの…?」


ビクビクと震えたマシュー君が場の雰囲気を変えようと必死に作った笑顔で首を傾げる。


「うん、アーサーとね。少し前にアーサーの会社で女性のパートナー動向のパーティーがあってさ、それに付き合ったからお礼にお高いホテルでディナーでもって。すっごく美味しい料理とデザートが食べられるんだよ〜」

「アーサー…?」

「へぇ、アーサー君とかー。ふふふ、アーサー君もやるよなぁーふふふ」

「もぉおおお!!なんでいつもあいつらばっか!!ずるいんだぞぉおおお!!」

「お、落ち着きなよアルフレッド…。あと八つ当たりで足踏むのやめてよ…」


まったくこの人達は…。
結局その後は四人で他愛のない会話をつづけ、時折二人が目が笑っていない笑顔を浮かべて暴言の吐き合いを始めたので私とマシュー君の二人だけで会話を続けた。

笑顔で喧嘩してるとこが本当に怖いよ…。

「もうちょっと仲良くしてくれないかなぁ」なんて小さく呟くと「それは無理なお願いだね」と二人の声が重なった。
意気はぴったりじゃないですか…。



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