「起きろ名前!!でかけるぜ!!」 「何…こんな早くにでかけるのー?まだ眠いんですけど…」 「いいから早く着替えろ!!」 「はいはい…」 朝早くからテンションの高いギルに布団を捲られ叩き起こされる。 ギルの指示通り着替と出かける準備を済ませば「行くぜ!」とギルに腕を引かれ外に出た。 いったいどこに行くって言うんだ…。 「ん…?駅?」 「あぁ。まぁ俺様についてこい」 「はぁ…。あ、切符買わなきゃ」 「いや、用意してあっから。行くぜー!」 「…は?え、ちょっとそんなお金持ってたの!?って話聞けやコルァアア!!!」 スタスタと改札を抜け人の少ない駅を軽やかに歩いていくギル。 切符買っておいたって…。そんなお金持ってたのか。 確かに必要な時はお小遣いあげたりもしてたけど…。 怪しい。怪しすぎる そして電車に揺られ四十分ほどかけてやってきた動物園…。 「って、動物園んんんんん!?」 「すげーだろ!!今日は一日俺様の奢りだぜ!!」 「ちょ、ちょっと待って…頭追いつかない…。なんでここに来たわけ…?それでそんなお金どこから調達したの…」 「あー?本田の手伝いしたからな。報酬だぜ報酬」 「それってこの間からずっと原稿手伝いに行ってたあれ?」 「あぁ。本田も仕事溜まってて色々やばかったらしいしな。なかなかいい自給で雇ってくれたんだぜ?」 「ギルお前…あとで本田さんに謝っておかないとなぁ…」 「ほら行くぜ!!俺様アルパカとか言うやつ見たいんだよな。首なげーやつ」 「はいはい、今日は一日ギルに付き合うよー」 「よっしゃ!」 ギルのやつこの日の為に今まで本田さんの所で頑張ってたんだ。 ちょっと見直しちゃったなぁ。 よし、お言葉に甘えて今日一日はギルにお世話になろうじゃないか。 「ギル、熊!白熊居るよー」 「でけーなオイ!!」 「そういえばマシュー君っていつも白熊のぬいぐるみ持ってるよね」 「あぁ。いつか頭ぐりぐりしてやりたいぜ」 「あの熊たまに動いたり喋ったりしてるような気がするんだけど…気のせいだよね」 「次あっち行こうぜ!」 「はいはーい」 熊にキリンに象にライオン。 そういえば随分前にアーサーとシー君と動物園に来たことあったなぁ。 あの時も色んな動物見て楽しかったよね。 ギルは動物好きだし本当に楽しそうだなぁ。 園内にある”ふれあいパーク”なる、ウサギやヤギなどと間近でふれあう事のできるコーナーに入るとギルの周りに沢山の動物が集まってきた。 おいおい、ここでもギルゴロウさんかお前は。 「俺様動物に好かれすぎるぜ!!」 「普段好かれないから動物も同情してんじゃない?」 「……はははは!!楽しすぎるぜー!!…グスッ」 私も足元に寄ってきたウサギを膝の上に乗せて頭を撫でてみると、目を瞑って気持ち良さそうに丸くなる姿に癒された。 ふふふ、なんかギルに似てるかも。 「見ろよ名前。こいつアーサーと同じ眉毛あるぜ」 「うわっ…ちょっ、なんて可哀想な子…!!」 「お前酷くね?」 ギルが目の上に太い眉毛模様の毛が生えたウサギさんを抱っこして連れてきた。 うわぁ…これは立派な眉毛だ。 アーサーが見たら感動して連れて帰っちゃいそうだなぁ。 「写真撮ってフランシスに送ってやる!」 「あ、私にも送ってー。アーサーに送りつけてやる」 「ま・ゆ・う・さ・ぎっと!送信ー!」 「きっとフランシスさん大爆笑だね」 「だよな!」 うんうん、なんだか和やかで癒されるなぁ。 その他にも色々な場所に行き、動物に餌をやったり肩に乗せたリス猿がギルの髪をいじりはじめたり…それからアルパカとか言う動物。あれには本当にビックリした。 なんかこう、目を合わせるのが怖い…。 ギルとアルパカが30分程ピクリとも動かずにお互いを見詰め合っていたのが本当に怖かったけど、とても楽しい時間を過ごす事ができた。 「楽しかったねー。お土産も買えたし」 「有り金全部パーだぜ…ははは…。ま、お前が楽しめたんなら目的果たせたしべつにいいか」 「うん、ありがとねギル。すっごく楽しかった!それにギルが私の為に何かしてくれるなんて思ってみなかったからさ、ちょっと感動」 「また連れてってやってもいいぜ。次は遊園地とかでジェットコースーター連続で乗ってみたいぜ!!」 「その時は皆で行こうよ。アーサーとか絶叫苦手そうじゃん?どんな叫び声上げてくれるのか楽しみ」 「あぁ?まぁ別にいいけどよ」 「動物園も、また一緒に来ようね。他にももっと色んな場所に行きたいなぁ…。ギルと色んな物を見て感じて、楽しめたらすっごく良い思い出になると思う」 だから、もっとずっと一緒に居られるといいよね。 アーサーも本田さんも、トニーさんもフランシスさんもエリザも他にも沢山の皆と一緒に。 夕焼け色に染まった帰り道、頭一つ分高いギルの影の手が伸びて私の影と繋がった。 今日は本当に、良い一日だったなぁ。 家に帰ると「あのウサギどこで飼われてるんだ?名前は?」とどことなく嬉しそうに料理をしている私の横に立って問いただしてくるアーサに笑いを必死に堪えた。 期待を裏切らないやつだよね、アーサーは。 . ←|→ |